SNH48一期生の太地町イルカ追い込み漁へのコメントについて

SNH48一期生の陳思(チェン・スー)が、2013/01/21 21:55のこちらのツイートで、日本の和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を批判的に描いた映画『The Cove』を擁護するツイートに、賛同のコメントをしている件。
張馨方(チャン・シンファン)も2013/01/21 22:05のツイートで、同じツイートに対して後追いでコメントしている。
日本国内では誤解を生みそうなので、あえて補足のコメントをしておく。
単純に読むと、日本のイルカ追い込み漁を非難するツイートに、陳思と張馨方の2人が賛同しているとしか見えないが、いくつかの点を知っておく必要がある。
まず、とくに芸能人にとって政治的発言がタブーの中国で、環境問題や動物保護は芸能人が「安心して」発言できる社会問題であること。
例えば、中国出身でチベット族のalanが、日本でエイベックスに所属して活動していたときも、NHKの環境保護番組にはたびたび出演していた。四川省のパンダ保護や、揚子江のカワイルカ保護の取材をしていたが、日本でその他の政治的発言は一切していない。
いったん政治的に解釈できる発言をするとどうなるかは、ビビアン・スー(徐若瑄)が東京国際映画祭の記者会見で涙を流したことが、台湾独立支持と誤解されて、しばらく中国大陸で「干されて」いたことからも、よく分かる。
次に、陳思と張馨方の2人がコメントしている記事を最後まで読むと、日本のイルカ追い込み漁だけでなく、中国で以前から問題になっているクマの胆汁の採取や、犬は見つけ次第撲殺という「打狗隊」、毛皮の貿易、野獣・野鳥の乱獲も”五十歩百歩”だと非難されている。
これらは以前からよく中国ツイッター上で非難されている中国国内の問題で、やはり中央政府による検閲なく「安心して」言及できる社会問題だ。
とはいえ、日本のイルカ追い込み漁が最大の問題として取り上げられている点には、それなりの意味がある。
SNH48は日本で企画されたアイドルグループのフォーマットを利用しているため、中国国内向けに意識的にバランスをとる必用があるのだ。
「親日」傾向が行き過ぎると中国国内で非難されるため、たまに反日の「ジャブ」を打たなければいけない。この日本のイルカ追い込み漁批判記事へのコメントは、そういう「反日ジャブ」の一つと考えればよい。
運営が書かせたのか、陳思が自分の意思で書いたのかは分からないが、少なくとも運営が削除しなかったということは、SNH48の活動の支障にならないと判断していることになる。
やはり日本のフォーマットを利用しているSNH48のようなグループは、中国国内で活動する時に様々な方面で神経質になる必要があることがわかる。
ただしこう書くと、宮澤佐江や鈴木まりやなど、日本人メンバーの身の安全を本気で心配する日本人ファンがいるだろうが、それは間違いだ。
日本の有名人が上海で反日青年から暴力をうけるなどの事件が起これば、中国政府は日本政府に借りをつくり、外交上不利な立場になる。そんなつまらない失敗を中国の公安がやらかすはずがない。
また、もともと上海には日本人居住者が多いので、日本人が反日感情に起因する事件に巻き込まれるとすれば、まず一般の日本人が被害にあうと考えるのが自然だ。
以上、コメントが長くなりすぎたが、とにかく日本人の方が日中関係について神経質になり過ぎ、政府レベルの関係と民間レベルの交流を混同する傾向がある。
現に、張馨方のツイートに対するコメントの中には、日本のファンが気分を害するから、あまりこういう記事をリツイートしない方がいい、とか、芸能人はあまり政治的なことに言及すべきでない、という、現地の中国人のコメントがいくつか見つかる。
政治家や官僚は別として、一般の中国人は中華人民共和国の国民である前に、一人の凡人である。冷静に状況全体を見るようにした方がよい。