2015/06/28(日)SNH48チームNIIが韓国の男性歌手、ザ・ワン(チョン・スンウォン)の広州市中山記念堂でのコンサートに出演したのだが、どうやら一騒動あったようだ。
このコンサートは2013年設立の中国広州の化粧品メーカー・広州尚寇信息科技有限公司がスポンサーで、もちろんメインはわざわざ韓国から招聘したザ・ワン。SNH48はスポンサーの厚意でゲスト出演。
コンサートの途中、SNH48が会場のSNH48ファンと交流するコーナーがあったらしいのだが、そのコーナーが始まるやいなや客席から「退票!」、日本語でいえば「金返せ!」という叫び声が上がり、中には舞台に向かってゴミを投げ出す観客が出たとのこと。
「退票!」の声があまりに大きくなったので、ステージ上の司会者とSNH48メンバーはかなり気まずい雰囲気になったらしい。
ところが主催者(チケット販売業者)の広州九頭鳥文化娯楽圏が、中国ツイッター(新浪微博)で次のようにツイートしたことで、SNH48の一部のファンを怒らせてしまった。
もちろんこれは広州九頭鳥文化娯楽圏の誤解。SNH48に向かってSNH48ファンが「金返せ!」と叫ぶはずがない。
大勢のSNH48ファンからの抗議を受けて、同社はこのツイートを削除。次のようにSNH48ファンに謝罪するツイートをした。
では「金返せ!」と叫んだのはザ・ワン(チョン・スンウォン)のファンかと言うと、そうとも言えないようだ。
というのは、この日のコンサートで最も不評だったのは、SNH48がたった4曲しか歌わせてもらえなかったことでもなく、ザ・ワンを観に来たファンがSNH48などという訳のわからないアイドルグループを見せられたことでもなかった。
スポンサーの広州尚寇信息科技がコンサート中に大量の宣伝を入れ込んだことだったらしい。
上にリンクを張ったが、会社案内のページを読んでみると、次のようなことが書いてある。
この発見により、全世界の細胞と生物体の理解が変化した。ここから、アジアの韓国医学美容界で、細胞微整形技術が大いに発展し、整形美容とアンチエイジングの領域で効果を明らかにした。
今や、細胞のアンチエイジングと美容研究のCVRのこの技術を中国に力を尽くして導入し、それを基礎に細胞微整形技術から開発された微整形スキンケア製品が…(以下略)」
どのあたりが怪しいか、だいたい分かってきたよね…。
2015/06/30追記:この記事を書いた翌日、同社の紹介ページの社名が一日にして「広州善瑩堂生物科技」有限公司に変わり、会社紹介文の冒頭に「CVRは広州善瑩堂生物科技有限公司旗下の主な商品で」という文が追加されていた。そして前日は別ページにあった同社の慈善事業の写真が、こちらの会社紹介のページに移動されていた。仕事が速いというか…。
この点、コンサートを観に行ったSNH48ファンが、中国の検索ポータル「百度」の掲示板サービス「貼吧」のSNH48掲示板にレポートを上げ始め、筆者がこの記事を書いている途中から、やっと事実がわかってきた。そのスレッドはこちら。
コンサートの舞台上方には、下図のような横断幕。
要するにスポンサーの販売代理店関係者が招待されているということだ。マルチレベルマーケティングを販売手法としている会社らしい。
コンサートが開演すると20分間、舞台上のスクリーンにはスポンサーのCMが延々とくり返し放映。
やっと司会者が登場すると、さらに10分間、スポンサーの設立からの経緯の説明。
その後、SNH48のパフォーマンスが始まり、2曲歌い終わった後、自己紹介コーナー。時間制限があり、ななし(馮薪朵)とナナちゃん(萬麗娜)2人だけが自己紹介すると、司会者が登場。
観客との交流イベント開始。
抽選で観客を舞台に上げ、SNH48が教えるダンスをいちばん上手く踊れた人にプレゼントを贈呈というもの。
ところが、抽選で選ばれた観客は全員、スポンサーのTシャツを着た代理店の販売員。つまり当選者が最初から決まっていたことが見え見え。
ここに来て一部の観客が「金返せ!」と叫び始め、その声がどんどん大きくなったとのこと。
司会者もSNH48メンバーも気まずい表情ながら、販売代理店の4名を舞台に上げ、テテちゃん(黃婷婷)がダンスをその場で教え始めた。
その間も「金返せ!」コールがどんどん大きくなったので、ななし(馮薪朵)が客席に向かって静かにして下さいと呼びかけたところ、逆に「金返せ!」コールがさらに大きくなり、会場は完全にコントロール不能。
そこでルーリー(曾艷芬)が出て来て、SNH48メンバーみんなで4人の観客に、ダンスを教えようと言い出した。ルーリー(曾艷芬)はこの交流コーナーを早く終わらせて、騒動を収束させようとしたわけだ
それでも騒動はおさまらず、舞台の近くに座っていた観客の何人かが、現場で配布されていたスポンサーのチラシを丸めて、舞台に向かって投げ始めた。
それが当たりそうになったななし(馮薪朵)は少し驚きながらも、うまくよけて、ダンスを教え続けていたとのこと。
そして司会者が早めにそのコーナーを終わらせ、SNH48チームNIIは残りの2曲を歌い、SNH48部分は終了。
以上がSNH48部分の現場の様子だったらしい。
おそらくこういうことだろう。
スポンサーである広州尚寇信息科技のマルチレベルマーケティングの販売代理店大会、兼、慰安コンサートの一部のチケットが一般にも販売された。
それをザ・ワンのファンと、SNH48のファンがそうとは知らずに購入した。(SNH48運営も事前に詳細を知らされていなかったと思いたい)
いざコンサートが始まってみれば、30分間も宣伝を聞かされ、当然、何だこれはと思うだろう。
そして観客から抽選でプレゼントというコーナーが始まってみれば、当選者は全員スポンサーのTシャツを着た観客。
そりゃ、ザ・ワンのファンでも、SNH48のファンでも、「金返せ!」と叫びたくなる。
チケット販売業者の広州九頭鳥は手数料で利益が出ているし、スポンサーは代理店の販売員の接待という目的を果たせた。
結局、損したのは、ザ・ワンとSNH48が本当に観たくて会場にやって来た、それぞれのファンたちだけ。
というわけで、それでも大人の対応でその場をしのいだSNH48チームNIIのメンバーのみなさん、お疲れさまでした(汗)。