国の「お達し」で2016年は中国各地の衛星テレビからAKB48や少女時代のパクリグループ続出?

中国のエンタメ業界で、年末2015/12/31にこんなニュースがあったのね、というお話。

『燃えろ少年!』選手の舞台裏の秘密 若くておいしそうな男の子は何をたよりに視聴者に愛されるのか? (国営新華社 安徽省エンタメニュース 2015/12/31 16:31)

あえて元記事よりもコンパクトな引用記事のリンクをご紹介した。

この記事で大事なのは最後から2つ目のパラグラフ。以下、日本語試訳する。


「今年の国家新聞出版広電総局の”限真令”の下達にしたがって、一連の”素人スター”番組のなかでもアイドル養成をメインとする番組がマーケットの受けがよくなっている。

浙江衛星テレビ、天娯メディア、テンセント(騰訊)動画が共同制作した『燃えろ少年!』の後、来年(2016年)には湖南衛星テレビも『夏のスイーツ(夏日甜心)』、『元気美少年』、上海東方衛星テレビも『スイートな青春』、浙江衛星テレビも『みつばち少女隊』など、アイドル養成系番組の大波がテレビ画面に押しよせる。

以前非常に高い人気を得た、個人の才能を発掘するタイプの番組『快楽男声』、『超級女声』に比べて、アイドルグループのメンバーを発掘するのは、どういうところに難しさがあるだろうか?

舞台に上がる16人の少年のうち、14人は純粋なテレビ初出演の新人で、その中のさらに80パーセントは歌やダンスの専門的な基礎さえない。厳しいレッスンを経て、彼らはどうやってパーフェクトな変身をとげるだろうか?」


↓浙江衛星テレビ『みつばち少女隊』中国ツイッター(新浪微博)より。
「脚フェチ」が多い中国男性向けの宣伝画像(爆)。

この記事で重要なキーワードが、中華人民共和国国家新聞出版広電総局の「お達し」である「限真令」だ。

原文はこちらにある (広電局 2015/07/22)

「限真令」は「リアリティーショー(中国語で「真人秀」)管理強化に関する通知」の略。

リアリティーショーとは、素人さんやタレントが出演して、じっさいにいろんな体験をする様子をドキュメンタリー風に撮影して制作する番組。

日本で視聴率がとれるリアリティーショーと言えば、「ドッキリ」系か「はじめてのおつかい」系くらいしかなく、その他はしっかり作りこまれたトークショーやお笑い番組が多い。

中国では過去数年、たとえば『パパはどこに行った?(爸爸去哪儿)』を代表格として、有名芸能人が出演して、大人版の「はじめてのおつかい」とでも言うのか、例えば中国の山奥の田舎村で、はじめての生活体験をするとか、そういった番組が高い視聴率を得ていたようだ。

ただ、例によって一つの番組フォーマットの視聴率が高くなると、中国国内のテレビ局がいっせいに同じような番組を作って、内容がどんどん「低俗化」していくことになる。

これは、さらに数年前のお見合い番組『非誠勿擾(冷やかしお断り)』に、拝金主義的な出演者が出るようになって、スキャンダルな人気を得て「低俗化」したのと同じ流れ。

そうすると、これも例によって、国家新聞出版広電総局が「お達し」を出すというパターンになる。

今回のリアリティーショーについての「お達し」は以下のとおり。

・各衛星テレビ局、つまり中国で全国放送を許可されているテレビ局は、1クールにリアリティーショーを1つしか制作してはいけない

・かつ、2クール連続で同じリアリティーショーを制作してはいけない。

・1つのリアリティーショーを昼間再放送するのは2回まで。

・有名タレントに頼るのではなく、できるだけ一般市民を出演者とすること。

・かつ、事実を大げさに脚色したり、ウソを本当のように放送してはいけない。

ほとんど大きなお世話みたいな内容だが、実はこの「お達し」の結果、素人の少年少女をタレントに育成するという「アイドル育成型」の番組が、リアリティーショーの一種として2016年は有力視される結果になったようなのだ。

たしかに素人の少年少女が主役なら、拝金主義や性的な方向に「低俗化」するおそれがあまりない。

それに、少年少女が自分の夢をかなえていく過程は、政府の「中国の夢」というスローガンにもぴったり。

なので今年2016年は、中国各地の衛星放送局が、アイドル育成型のリアリティショーを次々企画したとしてもおかしくない。

たとえば最初にご紹介した記事にある、湖南衛星テレビ(中国でバラエティー番組で圧倒的な人気の局)の『夏のスイーツ』は、どうやら新バージョンの『超級女性』として制作されるらしい。そのニュース記事がこちら。

新『超級女性』の新しい対戦ルール:トーナメント制ではなく、”百人の女性グループ”の選抜へ (2015/12/29 09:30)

はい来ました。「百人の女声グループを選抜する」、モロにAKB48やSNH48のパクリです。

そしてこの記事を読むと、湖南衛星テレビは以前のように、天娯メディアなどのタレントマネジメント会社と提携するのではなく、自局のスタッフだけで、自社制作するという。

また、以前大人気を博した『超級女声』が、専門家の審査員が選手の勝ち負けを決めるのではなく、今回のニューバージョンの『超級女声』では、テレビやネットを通じて、一般視聴者の人気投票でメンバーを選抜するとのこと。

はい来ました。モロにAKB48やSNH48の選抜総選挙のパクリです。

ただ、この『華声在線』の記事は意外に冷静にこの新番組を分析している。

つまり、果たしてテレビ局が自社の制作チームだけで、本当に一般視聴者の人気投票で、100人規模のアイドルグループのメンバーを選抜するといった、膨大な手間のかかる番組を制作できるのか、「視聴者や業界内部に巨大な疑問符を残している」と、しめくくっている。

それはそのとおり。

100人規模のアイドルグループのメンバーを選抜し、「健全に」発展させるのがいかに大変かは、AKB48から正式に権利を受けているSNH48の運営会社は、身にしみて分かっているはず。

そして同じような番組が、今年2016年は、他の衛星テレビ局、なんとSNH48の地元である上海東方衛星テレビでも制作されるというのだ。

上海東方衛星テレビはSNH48とコラボする『国民美少女』の1クール放送が終わったら、別のアイドル育成型リアリティーショーの放送を開始するということだろうか?

でも広電局の「お達し」で、2クール連続で『国民美少女』を放送できないから、仕方ないと言えば仕方ない。

そういうわけで、2016年は中国各地の衛星テレビ局から、SNH48のパクリっぽい女性アイドルグループがいくつか出てくるかもしれない、というお話でした。

(だからSNH48四期生フェイフェイ(馮曉菲)のように、あくまで劇場公演にこだわるメンバーは、AKB48の正式な姉妹グループであるSNH48にとって、とても重要なのだ)