ハーグ仲裁裁判所南シナ海裁定に関するSNH48メンバーの「愛国的」ツイートの知的な楽しみ方(笑)

政府レベルでちょっとしたイベントがあると、SNH48運営はメンバーの中国ツイッター(新浪微博)アカウントを一時的に乗っ取って、政府バンザイ!的なツイートをする必要があるので、運営もなかなか大変(汗)。

今日2016/07/12(火)はオランダ・ハーグの仲裁裁判所が、フィリピンの申し立てた仲裁手続きについて、南シナ海で中国が主張する国境に国際法上の根拠がないという裁定を公表した。

この裁定は領有権について判断するものではないので、中国の領有権を否定したものではなく、単に「九段線」という中国の主張に国際法上の根拠がないという認定をしただけ。

なので、中国政府も実はそんなに大騒ぎすることもない。

しかし中国政府は中国政府で、こういうネタが出てきた時には、国内のナショナリズムをあおって国をまとめる材料になるので、ネットでも人民日報のアカウントで「あおり」ツイートをする。

そうなるとSNH48運営も、ただでさえ日本系アイドルグループで、最近では国営中国中央テレビへの出演も増え、当局から目をつけられやすい弱みがあるので、メンバーのアカウントを使って愛国的なツイートをせざるを得なくなる。

こういうときは、六期生、五期生など、後輩メンバーのアカウントをまず大量に動員するというのも、SNH48運営のいつものパターン。もちろんその理由は、ファンが少ないメンバーの方が、ビジネス上の影響も小さいから。

メンバー自身がツイートしたのではないということは、コメント欄を見ればわかる。

運営がツイートしたことをにおわせるような、ネタバレっぽいコメントをしちゃってるメンバーもいるし、わざと茶化すようなコメントを入れているメンバーもいる。

例えば、SNH48運営が愛国的なツイートを代理で書き込んだ、ある六期生のツイートに対して、四期生が「あっ、憤青だ!(過激な愛国主義の若者を批判的に呼ぶときの呼び方)」とツッコミを入れる。

すると、その六期生本人が「そうじゃなくて中二病だよ」という返しをするという遊びを、コメント欄でやっている。

あと、やはり運営がある二期生のアカウントで人民日報をリツイートして、それに対して現地ファンが「海の一滴たりともフィリピンに渡さないぞ!」とマジコメントをする。

するとその二期生自身が「一滴どころか水蒸気も渡さない →_→」と顔文字つきでツッコミを入れたり。

またある五期生は、「いままでずっとレッスンしてて何も知らないんだけど、WeChatでお母さんからのメッセージを見てエッ?ってなって、その後自分の微博を開いてまたエッ?ってなった」とコメントして、SNH48運営が自分のいない間に愛国的なツイートしていたことを、ほぼネタバレ。

またその運営の愛国ツイートも、「もうフィリピンのドライマンゴーの代理購入はたのまない。怒った」という、半分冗談みたいな内容。

それに対して同じ五期生が「あなたもドライマンゴー好きだったんだ。私も好きだよ」と、ぜんぜん関係ないコメントを返し、さらにそれに本人が「超おいしいよね!!違う!(フィリピン産は)おいしくない!自分で植えたのがおいしいの」とレスしたり。

今のところいちばん笑えたのはこれ。メンバーが現地で下手な攻撃をうけないように、メンバー名は隠しておく。

このツイートに貼られているのは、「この商品は二度と出荷しません。たとえ店主は飢えようとも、中国を支持します!我ら中国を犯す者は、通しといえども必ず討つ!!!ここへ来たのも何かの縁、どうぞ当店を監督するためにお気に入りに入れて、愛国人士のみなさんどうか店主を監督するためにお越しください!!」という、中国最大のネットショップ、タオバオのとある商品のページ。

その商品とは「フィリピンから輸入したおやつ、香港の優良品 ドライマンゴー」(笑)。

つまりこの店主は「もううちのフィリピン輸入のドライマンゴーは売りません!」と表面上は書いているけれど、じっさいには「このページをお気に入りに追加して、これからもお越しください」と商品を売り込んでいる。

さらにその商品ページの画面キャプチャーを添付して、このSNH48メンバーは「この店主を飢えさせないために、私注文することに決めた!我が中華を愛するなら、自分から始めないと」と、完全にドライマンゴーを食べたいだけのツイートになっている(爆)。

SNH48メンバーのような高校生・大学生くらいの年齢の女子でも、政府があおろうとする愛国心に、これだけ冷淡な反応ができてしまうのが、逆に、中国人のしたたかさ。

以上のことを理解せずに「SNH48メンバーが愛国的なツイートをしているぞ!」と、SNH48メンバーをたたく日本人がいるとすれば、思考回路が単純すぎ。