上海SNH48チームNII完全オリジナル公演『専属派対(僕らだけのパーティー)』全曲を勝手に解説!

SNH48として初の全曲オリジナル公演チームSII『心の旅程(心的旅程)』に続く、2つめの全曲オリジナル公演チームNII『専属派対(僕らだけのパーティー)』が、2016/07/22(金)初日を迎えた。

この記事は筆者の完全な独断と偏見なので、読みたくない方、あるいは読むだけ読んで筆者に罵倒を浴びせたいだけの方は、すぐに別の記事をお読み下さい(笑)。

↓SNH48チームNII初の全曲オリジナル公演『僕らだけのパーティー』2016/07/22(金)初日

最初に書いておくべきことは、SNH48の全曲オリジナルは、『心の旅程』も『僕らだけのパーティー』も、同じ上海で活動している別の某女性アイドルグループの公演曲のような、聞くに堪えないレベルでは決してないということ。

AKB48姉妹グループとして、たとえAKB48運営がSNH48はもう姉妹グループではないと宣言しているとしても、AKB48姉妹グループとして決して恥ずかしくないレベルの公演に仕上がっている。

それを前提に、筆者としては、SNH48にはぜひ本部AKB48を踏み越えて、アジア全体で人気のアイドルグループになってほしいという願いから、以下のような細かい注文をつけさせて頂く。

M01. パンドラのミュージックボックス(潘多拉的音樂盒)

イントロがバロックの仮面舞踏会なのに、ここから先のダンスミュージックが全て米国音楽という、意味不明のイントロ。

ただこの曲単体としてはアイドルの公演曲として十分なクオリティ。

サビのメロディーの短7度のDが気持ちいいアクセントになっている。たぶんサビのコード進行は単純なEm>G/D>Am7>B7ではなくて、Em>G/D>A7/C#>Cmaj7との組合せで、ベースラインの降り方が違うので、気持よく聴こえるのだと思う。

最後のサビ前に、バロック音楽のEDM風リミックスがさらっと入ってくる部分も秀逸。

唯一の問題は、ここから先の曲風とまったく合っていないこと(笑)。最後はオドロオドロしいEm9だし。

たぶん、ヘンなクスリ(假酒)で幻想のパーティーに入っていく導入部分だから、わざと全く違うバロック風にしているのかも。

M02. 僕らだけのパーティー(專屬派對)

最近のSNH48オリジナル曲ではすでに定番になった感のある、イントロにしつこくエレキギターの同型のリフがくり返し出てくるメジャーコード(Eメジャー)の曲。サビ最後のAmがアクセント。

サビの最後のリフレインで伴奏がいったん落ちるのも定番のアレンジ。アウトロも手抜き無しで、一拍ブレイクと見せかけてブレイクじゃなかったり、かなり凝っている。

この曲は典型的なアイドル曲として、『源動力』などとは違って、アウトロまで手抜きなしのよく出来た曲。

M03. Shake it! Shake it!

がらっと雰囲気が変わって、古典的なロックン・ロール。

プロデューサの滕少さんは2016/07/23 01:40のツイートで「古典的なブルース」と言っているけれど、中国におけるロックン・ロールとブルースの定義は日本と違うらしい。

劇場の音響のせいかもしれないけれど、イントロの、わざとS/N比を落としたモノラル音響のスライド・ギターは、個人的にはもっとガツンと大きな音量で入って欲しい。でも、演出としてはよく工夫されていると思う。

ロックン・ロールは完全にリズムやコード進行が決まっているので、目新しい曲を作るのは実は難しいと思うのだが、サビのメロディーや歌詞、それからアウトロ含めて三度もギターソロ付が入る点。

それに最後のリフレインの最後で伴奏がハンドクラップだけになる点なども含めて、全体の構成もよく出来た曲だと思う。

M04. ロックンロール・リズム(搖擺節拍)

もしかするとこの曲『摇摆节拍』をロックンロール・リズムと訳すのは間違いなのかもしれない。どこからどう聴いても、典型的なアイドル曲なので。

しかしイントロのギターリフが間奏とアウトロで三度もくり返されて、最後のリフレイン前でディストーション・ギターのソロが入るというお決まりのパターンの曲が、M02、M04と連続で入ると、さすがにどうかという気がする。

M05. 私たちは天使じゃない(我們不是天使)

ここからユニット曲だが、この曲もイントロのギターリフが間奏とアウトロで三度くり返されて、2コーラス目の後、最後のリフレイン前にディストーション・ギターのソロが入るというお決まりのパターン。

やっぱりM02、M04、M05とこのパターンが連続するのは、手抜きの感が否めない。16人で歌うか3人で歌うかの違いだけ。

M06. 白昼夢(白日夢)

C-POPで言えばジェイ・チョウ(周傑倫)の『牛仔很忙』、AKB48曲で言えば『16人姉妹の歌』と同じく、オールドスクール・カントリー(=今の北米のテイラー・スウィフトを代表例とするカントリー・ミュージックではないという意味)のうち、シンギング・カウボーイに分類されるらしい。

プロデューサの滕少さんが『16人姉妹の歌』がオールドスクール・カントリーだと気づいているかどうか。

それにしては衣装にやや違和感がある。

歌詞を何となく読んでいると、どうやら馬に使うムチが、SMの女王様のムチに近いニュアンスになっているので、まったくカウボーイっぽくなく、SMっぽい衣装になっているんだろう。

サビの歌詞はだいたい以下のような意味。

「才能で観客を征服しちゃう/全部私のムチでコントロールしてあげる/拍手や花束一つひとつが光栄/それも陰でどれだけ汗をかいて苦労したか次第/客席も劇場の外も大騒ぎ/ファンの歓声に取り囲まれて/こんなに人気でこんなにかわいがられても/幕引きにお辞儀は忘れない」

間奏がタップダンスっぽいパーカッションだけになるところと、その振り付けまでが、ジェイ・チョウ(周傑倫)『牛仔很忙』のMVそのまんまなのは、ジェイ・チョウへの「リスペクト」なんだろうか。

ただ、『白昼夢』という設定だから仕方ないのかもしれないが、カントリーのわりにイントロの入りが弱すぎるのが気になる。盛り上がりに欠ける。

M07. あやつり人形(木偶)

『心の旅程』の『月光の下(月光下)』と同じく、この曲もワルツ。ワルツを一曲入れるというのは、SNH48オリジナル公演の定番なのだろうか。

個人的にはワルツを入れるくらいなら、AKB48の『森へ行こう』みたいなヘンな曲を一曲入れて欲しい。

この曲は二期生カチューシャ(李藝彤)が詞を書きなおして、私物のロリータ・ファッションで歌うためのソロ曲だけれど、正直、第二回公演の愛ちゃん(易嘉愛)バージョンの方が断然歌がうまいのは仕方ない。

この曲はAメロとBメロしかないけれど、Aメロは譜割りが細かいので、音程をはずさずに歌うのは相当難しいと思う。

たぶんいままでのソロ曲と同じく、毎回の公演で生歌になると思う。

カチューシャ(李藝彤)が歌うときに、生放送でファンが流す弾幕コメントから「車禍(もとは交通事故の意味だが、主に歌手がライブで音を外すこと)」の文字がいつなくなるか注目したい。

M08. Don’t touch

この曲、プロデューサの滕少さんによればR&Bなのだが、メロディーがあまりR&Bっぽくない。Aメロの最後に一瞬ブルーノートが出てくるだけ。そしてメンバーはブルーノートで歌っていない。

この曲は個人的に、完全にK-POPだと思う。

同じ音型のメロディーを何度もくり返すことで、メロディーよりもリズム主体の楽曲になっている点が、完全にK-POP。

それから、この曲もイントロの入りが弱すぎる。もわもわっとした感じ。

3人のセクシーなユニット曲なので、AKB48 TeamK 5th Stage『逆上がり』公演の『抱きしめられたら』などを意識した曲に違いないのだが、リードの音色でちゃんとイントロにメロディーを付けてほしい気がする。

M09. ブラック・スワン(黑天鹅)

この曲もイントロの入りが弱すぎる。初日の公演を観ていたときは、さすがにイライラしてきた。

アイドルグループの公演なんだから、基本、テンポの速い曲は気持よくバシッ!と始まって欲しい。

初日を観た時イライラした理由は、もう一つある。

ここまでサビで転調する曲が一曲もないことだ。この公演、音楽的に「スカッ!」と気持ちいい瞬間が少なすぎる。

それからこの曲はチームSIIの全曲オリジナル公演『心の旅程』で言う『新世界』の位置づけの楽曲だが、SNの制作陣は、ユニット曲の後半には、どうしてもこの種のスカスカの16ビートを入れたいらしい。

それに、セクシー系の曲が2曲連続するのはどうかと思う。公演全体の曲構成にやや問題あり。

M10. Funky Night

ユニット曲が終わって、やっとまともに楽しめる曲が出てくる。

ファンキーなディスコ曲。歌詞に「80年代のパワフルな曲を聴いていると独特」と出てくるので、ファンクではなくファンキーなディスコ。

ただ、ディスコということは、この曲も転調がないわけで、もちろんディスコとしてはノリノリで気持ちいいんだけれど、間奏のアドリブはまたもディストーション・ギターのソロ。

たぶん今のところ、SNH48おかかえのミュージシャンで、スタジオでアドリブ録音できるのがギタリストしかいないんだろうと思う。

例えば『Don’t Touch』のイントロと2コーラス目の間奏に入っているサックスのアドリブは、決して上手いとは言えない。

M11. まるバツまるバツ(圈叉圈叉)

ここまで来てやっとイントロからAメロへ転調する曲が出てくる。CマイナーからCメジャー。ただし曲が始まると最後まで転調なし。

典型的なアイドル曲。間奏のアレンジは、ディストーション・ギター以外はよく考えられていると思う。

ディストーション・ギターは聴き飽きた。上手いギタリストがいるということはもう分かりました、という感じ。

アウトロはちゃんと作られていて良心的。こういう点は編曲面で着実に進歩していると思う。

M12. スーパーフォーカス(超級焦点)

この曲もテンポが早いくせに、イントロがEDM風のフェードインでスッキリしない。

この『専属派対(僕らだけのパーティー)』公演は本当にこの種のイントロがもわもわっとした曲が多くて欲求不満になる。

また、この曲もM10.と同じくディスコ。

ファンキーなギターのリズムは間奏に少し入るだけで、EDM寄りだし、途中のアレンジでディスコをわざと外している部分はあるけれど、ディスコには違いない。

1曲だけはさんで連続でディスコ曲というのは、やっぱり公演全体の曲構成に問題あり。

そしてディスコなので、転調がないということになる。

そしてメロディーよりもリズム先行。このあたりにもJ-POPからK-POPへのシフトがはっきり現れている。AKB48の楽曲がメロディー重視なのは、ご存じのように秋元康が作詞家としてメロディー重視だから。

ほとんど起伏のないメロディーをずっと聴かされていると、公演全体としてやや退屈になるのは必然的な結果だと思う。

M13. 青春は終わらない(青春不散)

そのせいで、アンコール前のこういう典型的なバラード曲が、公演全体の流れとして、取ってつけたように不自然になってしまう。

そしてテンポの遅い曲は、歌い手の歌唱力を考えると転調する絶好のチャンス。やっとこの曲で転調する。ブリッジのDメロ部分で、GメジャーからBフラットメジャーへの典型的な三度転調。

もしかしてSNH48の制作陣が、チームSIIメンバーとチームNIIメンバーの歌唱力の差を考慮して、わざとチームNII公演に転調曲を入れなかったんだろうか。その可能性はありそう。

EN1. ダメなお手本(不良示範)

この曲も典型的なアイドル曲。ファンも初日なのにきっちりMIXを入れてくるのが素晴らしすぎる。

ただしやはり転調なし。テンポの速い曲は転調は入れられません、ということがはっきりしている。そして同じギターのメロディーがイントロ、間奏、アウトロに登場するというのもお決まりのパターン。

逆に言えば、この種の典型的なアイドル曲なら、いくらでも量産できますよ、ということなのだろう。それがプラス評価できることかどうかは別として。

EN2. 次の夜明け(下一個黎明)

この曲は典型的な「燃える」系アイドル曲。『AKB参上』や『転がる石になれ』の位置づけの楽曲。歌詞にも「SNH48」が入ってくる。

「次の夜明けも僕をリードして(SNH!)/ここでは誰が正しいとか間違ってるとかはない(48!)/力いっぱい暗闇を走り抜ければ/全く新しい私が開花する(Never be afraid!)」

ただ、その結果、この曲も同じディストーション・ギターのメロディーが、イントロ、間奏、アウトロに登場するというお決まりのアレンジ。

アレンジはほとんど何も考えずに自動的に出来上がりそう。2コーラス目の後、最後のリフレイン前の間奏をどうするかだけ考えればいいので。そしてマイナーコードのロックということで、転調ナシ。

EN3. 星に願いを(星願)

この曲も典型的なアイドル曲。同じギターのメロディーが、イントロ、間奏、アウトロに登場するという、こうしてパソコンに入力するのも飽きてくるほどお決まりのアレンジ。

テンポの速い曲で転調するのは、公演を通じてこの一曲だけ。

BメジャーからDメジャーで、お決まりの三度転調。Cメロで三度転調するので、間奏の同じパターンのギターのメロディーも三度転調したままになっている。

2コーラス目もサビの三度転調でそのままアウトロまでDメジャー。Bメジャーに戻さないのね。


以上、相当好き勝手書かせていただいたけれど、チームSIIの全曲オリジナル公演『心の旅程』に比べると、これがチームNIIのカラーなのかもしれないけれど、公演全体の構成もシンプル、楽曲もメロディーよりリズム重視の曲が目立つ。

典型的なアイドル曲は、どれも判で押したようにディストーション・ギターのリフまたはメロディーが、イントロ、間奏、アウトロで反復され、最後のリフレイン前の間奏だけ少しアレンジを変えてくるという同じパターン。

転調はバラード1曲、テンポの早い曲1曲のみ。

イントロがEDM風でもわもわっとフェードインしてくる曲が目立つ。

チームSII『心の旅程』公演の『心の旅程』のように、ブレイクが入る曲は1曲もない。つまり4小節ごとに楽譜が整然と区切られている。

あと、YouTubeで再生リストを眺めて確認できたのは、短い曲が多いこと。4分を超える曲が『Shake It! Shake It!』『青春は終わらない』『ダメなお手本』の3曲しかない。『白昼夢』にいたっては3分未満。

その分、チームNIIのMCをじっくり楽しめるので、チームNIIファンとしてはハッピーかもしれない。

ただ、4分を超える曲がほとんどないということは、編曲のクオリティが低いことの一つの指標ではある。

楽曲全体の水準は確実に『心の旅程』の方が高い。

SNH48チームNIIファンの皆さんには申し訳ないけど、今日(2016/07/23)2日目の公演を観た時点で、この『専属派対(僕らだけのパーティー)』はすでに飽きてきた。

たぶんチームNIIファンの皆さんにとっては、やっぱりMCの方が断然楽しめるんだと思う。

さて、チームXの全曲オリジナル公演『ドリーム・フラッグX』はどうなりますか。

『心の旅程』から『専属派対(僕らだけのパーティー)』の流れを見て、かなり不安になって来ました(汗)。