SNH48チームX初の全曲オリジナル公演『ドリーム・フラッグ(夢想的旗幟)』が2016/10/28初日を迎えた。SNH48グループとしては3つめの全曲オリジナル公演。
(追記:この記事を中国語訳して下さった現地ファンがいた。こちらを参照)
1つめはSNH48チームSII『心的旅程(心の旅程)』
すでに北京BEJ48チームB、広州GNZ48チームGがお下がり公演として上演中。
2つめはSNH48チームNII『専属派対(僕らだけのパーティー)』
北京BEJ48チームJ、広州GNZ48チームZが上演予定。
そして3つめが今回のSNH48四期生中心のチームXの『夢想的旗幟(ドリーム・フラッグ)』
ひとことで言うと、『心の旅程』よりも楽曲のクオリティが上がっている、ものすごい公演。
初日の2016/10/28(金)はオンライン生放送に曲名も歌詞もまったく字幕がなかった(2日目の今日2016/10/29(土)はちゃんと曲名も字幕も付いていた)。
その代わりに天井の広角レンズのカメラが、舞台前方に新たに設置されて、ダンスのフォーメーションがよく分かるようになった。
上海SNH48星夢劇院の生中継の音質が、北京BEJ48星夢劇院に比べて悪すぎ、せっかくの公演が台無しなのは相変わらず。そろそろ設備の更新が必要かも。
細かいことはどうでもいいとして、例によって楽曲に好き勝手ツッコミを入れたい。
読みたくない方はこの記事全体を飛ばして下さい。
ところで、ダンスのことはまったく分からないけれど、公演後にフェイフェイ(馮曉菲)がInstagramで「腕が痛い。やっぱりこの公演は運動量が多い ᕕ(ᐛ)ᕗ 明日の生誕祭は実は準備はまだ十分じゃなくて緊張してるし怖い。明日はやっぱり来ないで (▭-▭)✧ すごく怖いよ 腕痛い 脚も痛い 筋肉が痛いって言ってる ⸜( ⌓̈ )⸝ あ~怖い怖い」とつぶやいていたように、やっぱり相当体力をつかう公演らしい。
M01. 結伴同行(Go Together!)
イントロたっぷりで観客がいわゆるMIXを打てるし、Aメロ、Bメロ、Cメロの構成が典型的なC#メジャーのJ-POP風アイドル曲。Dメロは無い。
ただ、Aメロは4小節ごとの単純な反復ではなく、Bメロの移行部分に4小節余分に挿入されてアクセントになっている。Bメロの8小節にも単純な反復はない。
サビのCメロは16小節でCメロ冒頭にもどって8小節分くり返すので、16小節単位の反復かと思っていると、2回めは8小節だけのくり返しで、別メロディーの5小節で間奏に入るという、かなりぜいたくで凝ったメロディーに驚かされる。
M02. 北極光(オーロラ)
サビで始まるDメジャーコードの曲。サビで始まるというのもアイドル曲お決まりのパターン。
イントロやBメロでちょこちょこFメジャーに三度転調する。Aメロは8小節単位の反復。Bメロはお決まりの「パーン、パパン」リズムの8小節。ただしサビのCメロ前に1小節余計にはさまっているのがポイント。
イントロやBメロの転調が前ぶれになって、ブリッジで完全にDマイナー(Fメジャーの平行調)に三度転調し、間奏をはさんでサビでまたDメジャーに戻る。
サビ直前の間奏に、『檄!帝國華撃団』のイントロと同じ全音音階と、一つひとつの音に別の和音をつけるというテクニックが使われている。こういう細かいアレンジが、楽曲全体の質を高めている。
M03. 寻路者(パスファインダー)
Cメジャーの典型的なJ-POP風アイドル曲。Bメロのリズムが「パーン、パパン」になる。
メジャー曲だけれど、AメロのベースラインがC⇒B⇒Bb⇒Aと半音ずつ下がるコード進行になっている点がAメロのキャッチ。
Bメロは転調こそないが、単純な4小節単位の反復ではなく、4小節⇒2小節⇒2小節⇒2小節⇒2小節⇒ブレイクの1小節という構成になっている。こういうさり気ない不規則性が、J-POP風楽曲の気持ちよさを作り出している。
Cメロも転調なしだが、8小節を2回反復した後(コード進行は異なる)、最後のアクセントに4小節の新しい盛り上がるメロディーが追加されて、ワンコーラス終わり。
さらにぜいたくなことに、たっぷりの長さのDメロが入る。しかも1小節のブレイクの後。
そしてこのDメロは、4小節⇒2小節⇒4小節⇒ブレイクの1小節⇒ブレイクの2拍という、ものすごく凝った構成。Dメロ部分だけでここまで凝らなくても(笑)。
そしてサビのCメロの最後のリフレインの末尾に、さらにメロディーを足して構成を変えている。ものすごくよく考えて構成された曲。
M04. Shiny Boys Shiny Girls
Eメジャーの、これも典型的なJ-POP風アイドル曲。王道のアイドル曲が4曲連続するが、どれも良く出来ているので、あまり飽きずに聴ける。
Bメロのリズムはお決まりの「パーン、パパン」で4小節単位の反復だが、2度めのC#m7がC#sus4になっていて手抜きがない。
しかもDメロのブリッジでは、Gメジャーへ三度転調。平行調のEマイナーのドミナントコードであるB経由で、再びEメジャーにもどって、サビの最後のリフレイン。
最初の4曲はさらっと聞き流すと、同じような典型的なJ-POP風アイドル曲だけれど、きっちり密度が高く作り込まれていて素晴らしい。
ここからはユニット曲。
M05. 夢
ランラン(宋昕冉)。ダートウ(陳琳)、ダーミー(李晶)
まさかタンゴが来るとは思わなかった。意表を突く展開。イントロだけだが。
反復メロディーなしの大人っぽくてセクシーなAメロから、そのままサビのBメロへ。
ポイントはサビのBメロでいったん長調のメロディーに変わり、その後、Aメロ前半が再び現れ、終止感がないまま間奏に入るという斬新な構成。とてもカッコイイ。
そしてツーコーラスめは、Bメロが終わり、Aメロをはさまずにすぐ間奏に入る構成で、また予想が裏切られる。
最後のBメロのリフレインは、再びAメロの前半だけが続いて現れ、終止感がアウトロで解決され、スッと曲が終わる。
カッコよすぎる。『専属派対』の楽曲のクオリティとの大きな格差はいったい何なのだろう。
M06. 水手服(セーラー服)
まるこ(楊韞玉)、ソクちゃん(汪束)、6期生ムームー(張嘉予)、7期生SKY(祁靜)
がらっと変わってカワイイ系の楽曲。Bbメジャー。Aメロの1人目、3人目の歌い出しがシンコペーションという、なにげに歌いづらい曲。Bメロの後半にもシンコペーションがある。
サビのCメロの冒頭にもシンコペーションがあったり、力を抜いて歌わなければいけないのに、リズムを正確に歌うのがかなり難しい曲。サビの最後のリフレインの伴奏では、シンセブラスが裏打ちするので、余計に歌うのが難しそう。
コンパクトにまとまったカワイイ曲に聴こえるけれど、メロディーの譜割りに手抜きがない。
M07. 無可替代
CoCo(邵雪聰)、スイスイ(楊冰怡)、フェイフェイ(馮曉菲)
Ebメジャー。Aメロは普通のEbメジャーのメロディー。
Bメロでブルース・スケールがはっきりして来て、サビのCメロではさらにブルーノートが前面に出て来て、Cm7とマイナー・コードで終わる。
にもかかわらず、シンセサイザーの伴奏でメジャーコードのオンコードが効果的に使われているので、まったくブルース・スケールの泥臭さがないという、とても高度なアレンジのEDM。
間奏はスポットライトで、一人ひとりのソロダンスを見せる演出も良い。
その後、ツーコーラスめのAメロに入る前に、シンセサイザーがいきなりシンコペーションで入ってくる。この部分、リズムが高度すぎて一瞬とまどうが、よく聴くと1小節余計に挿入されている。
そしてこのツーコーラスめのBメロからCメロへのつなぎのコードが、ワンコーラスめはCm7だったのに、Csus4に変わっているという芸の細かさ。これでサビのメジャー感がさらに引き立つ。
そして2小節引き伸ばされたサビと、すぐに続くブリッジのDメロ。
間奏をはさんでサビのリフレインの最後の音が、いままでのサビの終止音だったCではなく、あえてGの音で終止感を引き伸ばすというカッコよさ。
『専属派対』と比較して、SNH48オリジナル公演曲のEDMの進歩がなぜここまで一気に進化したのか、やっぱり不可解。
M08. Monster
ニュース(孫歆文)、チョウチョウ(汪佳翎)、天草(王曉佳)、ペンペン(謝天依)の長身4人組。
ここまでの凝りに凝ったコード進行と構成とメロディーメイキングだった曲から、180度変わって、中東風のこの曲はEとFの2コードだけというものすごい曲。
Eの構成音のG#はツーコーラスが終わった間奏にやっと登場して、中東っぽさが濃厚になる。
その間奏部分の千手観音ダンスで、2拍ブレイクが入ったように聴こえるが、実は1小節の最初の2拍の伴奏がなくなっただけで、ブレイクではないという懲りよう。
この曲も思わずうなってしまう凝りに凝った曲。
続きはまた明日。
追記:
楽屋裏で中東風じゃなくてインドだろとツッコミを入れている人間がいるが、フェイスヴェールはベリーダンスの衣装で、ベリーダンスは中東のダンススタイルの西洋での呼称。インドのダンスでなぜ顔を隠す必要があるのか。顔を隠すのは明らかにイスラム圏。YouTubeでBelly dance face veilを検索しよう。インドだと思うならshiv tandav girl danceを検索してシヴァ神を崇める女性のダンスを見てみよう。近代西洋に入ってきたオリエンタルでセクシーな女性のダンスといったらベリーダンスに決っている。西洋経由で誤解されて上海のSNH48まで入ってきているんだから笑うしかないけれど。なお音階でG#の音が現れて中東っぽさが出ると書いたが、どうやらこれは中東、インド、ジプシー音楽などに共通のジプシー・スケールと呼ぶらしい(ウィキペディアより)。この曲はEがトニックなので E F G# A B C D# となる。とくに下りがそれっぽく聴こえるスケール(笑)。