SNH48チームXII公演『コードXII』進化版の新曲『人間規則』の歌詞が実はかなりエグい件

上海SNH48五期生中心のチームXII全曲オリジナル公演『コードXII(代号XII)』がバージョンアップして、『人間規則』という3人のユニット曲が新曲として加わった。

センターは安定のパパ(洪珮雲)だが、ユーサン(宋雨珊)が素晴らしくキレのあるダンスを見せてくれているこの曲、現地ファンはむしろ歌詞の内容が気になるらしい。

その歌詞は、現地ファンの間で「SNH48の秋元康」と半分冗談で呼ばれている甘世佳さんの作詞。

甘世佳さんは、SNH48最初のオリジナル公演『心の旅程』の最終曲『私の舞台(我的舞台)』の作詞で、現地ファンの評価を獲得した。

その『人間規則』の歌詞を説明的に日本語試訳して、注釈をいちいちつけてみる。歌詞の原文はこの記事の最後に貼っておく。

中国語の「人間」は「実社会、世間」の意味。

『コードXII』公演全体のテーマが、ロボットの少女が人間の世界をだんだんと理解していく、であることに注意。

この歌詞を読むと、秋元康の書く歌詞なんてまだキレイ事と思えるほど、エグい。

正直になれと言われたけど
私が本当のことを口にしたとき
突然みんな冷たくなった

あのルールを
必ず守れと言われた 絶対に破るなと
でも破った人が より多くを得ている

(訳注:このルールは恋愛禁止ルールと読める。実際にチームXIIで起こった、メンバーがファンと私的に連絡を取った事件で、退団したメンバーと活動を続けているメンバーの対比が暗示されている)

さんざん頭をつかって
仮想の玉座を奪いに行って
あんなに無邪気だったのに
策略が過ぎると言われてしまった

(訳注:この玉座は総選挙の順位のことだろう。「虚拟(バーチャルな)」王座という形容詞がついていて、そもそも実質的な意味のない王座なのに、それを真面目に努力して奪いに行っても、陰で策略家であるかのように非難される。ここまでの歌詞はすべて、中国2ちゃんねる(百度貼吧)の某掲示板で、事あるごとにメンバーが徹底的にディスられる現実を指しているように読める。)

あらかじめ決めたプログラムは手薄過ぎて
人の心を読むほうが はるかに難しかった
まして 黒を白にすることなんて出来ない

(訳注:単純なプログラムで動いているロボットの少女、つまり天真爛漫すぎるメンバーたちは、ファンが深読みしてあらぬウワサを立てるところまで予測できず、ウワサがいちど真実と誤解されてしまうと、それをひっくり返すことはもはやできない)

もう少しアイラインを描かせてくれる?
鋭い光沢をごまかすために

もう少し口紅をひかせてくれる?
はっきりした輪郭をぼかすために

(訳注:素顔では、鋭い切味をもつ残酷ではっきりした現実を隠しとおすことはできない)

私に教えてくれない?
言わなくても分かるという
規則の下に隠れた規則を

(訳注:中国語でいういわゆる「潜規則」、暗黙のルール。じつは世間は建前のルールとは違うルールで動いている。恋愛禁止といいながらそうではない可能性がある。その暗黙のルールをたずねている)

もっと速く計算しても
無数のどっちつかずの事は 計算できない

(訳注:ロボットを動かすプログラムの計算量では、どちらに転ぶか分からないファンの心や考えを、先読みすることはできない)

まず沈黙することをじっくり学び
言いたいことも言わず 顔色で察する
人の弱さをじっくりとさがす

(訳注:そういった世間を渡り、ファンやメンバーとの関係をうまくやっていくには、正直に物を言うより、沈黙したまま、それぞれの人の弱さがどこにあるかを、顔色から見つけ出すのが得策)

じっくり彼らのことを理解する
彼らがわけもなく 日の出と日の入りを見つめているのは
ただ美しさがこんなに薄っぺらだからというだけ

(訳注:「彼ら」はファンのこと、日の出と日の入りは、各メンバーの人気の上下と読める。ファンがメンバーそれぞれの人気の上下に注目するのは、実は大した理由はなくて、メンバーの外見の美しさという薄っぺらな理由にすぎない)

あなたたち人類の王国は
一人また一人と落下する
何人の国王が新しい服をたなびかせて去って行く

(訳注:「あなたたち」はファンの本心への呼びかけ。「人類の王国」はファンが自分の王国のように思っているアイドルグループのこと。「国王」は人気メンバーのこと。一人また一人と人気メンバーがスキャンダルを起こして、ファンの間に鋭い風の音のような(=呼啸)騒動を起こして退団していく)

でもだからこそ
いちばんしなやかな片隅に
詩をつかって花を描写できる

(訳注:ここは作詞者の甘世佳さん自身のことだろう。そういうアイドルグループの残酷な世界だからこそ、歌詞の力を使って、そういう世界にかろうじて残された、片隅にあるまだやわらかい部分に、花のように美しいものを描きだすことができる)

雨が過ぎて空が晴れるのも一種の色
言いたいけれど言うのをやめにして あの憶測を楽しむ
コーヒーは明らかに苦いのに いくつもの香りがある
苦味の中に世間の本当の姿がはっきり現れる

(訳注:ロボットの少女はすでに人のあらぬウワサを苦味や、現実の姿として、じっくり味わうことを覚え始めている)

一冊小説を読ませてくれる?
虹の色を描写するために

明日を描かせてくれる?
見知らぬ不安を感じとるために

ひとこと願いを私のためにしてくれる?
永遠がどれほど遠いかわからないから

計算は必要ない
世渡りするというしなやかさが好きになり始めたから

(訳注:もはや計算などしてもムダだと理解して、うまく現実と折り合いをつけること自体に楽しみを感じている。以前信じていた永遠といったものも、もはや手が届かないと分かったいま、自分で願いをかけるのではなく、ムダと分かった上で誰かに願いをかけてもらう。この部分「能不能対我説」の「対」を危うく見逃しそうな歌詞)

一冊小説を読ませてくれる?
虹の色を描写するために

明日を描かせてくれる?
見知らぬ不安を感じとるために

ひとこと願いを言わせてくれる?
永遠がどれほど遠いか知らないから

計算は必要ない
人になる資格をもう手に入れたから

(訳注:そうやってロボットの少女は、はじめて人間になる資格を得ることができるということ)

この歌詞に現地ファンがざわつくのは、なるほどという感じ。

SNH48楽曲の作詞家に、ここまで暗示たっぷりの歌詞を書かれると、当事者のファンとしてはぐうの音もでなくなるだろう。

やっぱりこの甘世佳という作詞家はただ者ではない。

以下、歌詞の原文。