今回AKB48運営が韓国Produce101と提携してProduce48を立ち上げるとのこと。政治リスクと事業リスクが十分考慮されていないおそれがある。
政治リスクは言うまでもなく反日感情、事業リスクはアイドルビジネスの過当競争だ。
まず政治リスク。一般の製造業・サービス業と違って芸能活動は「表現の自由」と密接に関係するビジネスだ。
AKB48が中国再進出で新姉妹グループの中国人メンバーを現地世論の危険にさらすリスクは先日書いたとおり。
主に(1)国慶節・「南京大虐殺」・「九一八事変(満州事変)」などの「記念日」対応、(2)台湾独立問題、(3)日本AKB48ファンの反感の3点だ。
中国人メンバーは(1)国慶節や抗日戦争にかかわる記念日に中国ツイッター(新浪微博)で政府擁護のツイートをしなければ、一般の中国人に非難される。
また(2)少しでも台湾が独立国とのニュアンスの発言をすると中国の芸能界から追放される。日本で活動を終えた後のビビアン・スーが中国芸能界から事実上追放されたこと、最近では韓国TWICEの台湾人メンバー周子瑜が台湾独立派とみなされ激しい非難にさらされたことがある。
5年前SNH48を結成した時と違ってTPE48が活動開始してしまっている。いま中国再進出するとTPE48はどこの国のグループかという問題が前面に出る。TPE48の台湾人メンバーが「台湾は中国の一部です」と話さない限りは…。
さらに(3)AKB48姉妹グループ中国人メンバーの愛国的対応に日本のAKB48ファンが強い反感を持つおそれがある。
以上の結果としてAKB48姉妹グループの中国人メンバーは現地の一般市民と日本のAKB48ファンの板ばさみにあう。
SNH48運営会社がAKB48と手を切った理由の一つは、政治リスクを避けて中国で自由に事業展開するためだ。AKB運営がこれに気づいているかどうか不明。
そして今回のAKB48韓国進出も政治リスクが十分考慮されていないおそれがある。そもそも韓国人世論は「反日」がベースである。
峨山(アサン)政策研究院の、韓国人の米国、中国、日本、北朝鮮への好感度調査を見てみよう。
Changing Tides: THAAD and Shifting Korean Public Opinion toward the United States and China (The Asan Institute for Policy Studies 2017/03/20)
2017/03調査のグラフではっきり分かる。
多くの日本人は、従軍慰安婦問題などは政府レベルの問題で、一般の韓国人は日本に反感を持っていないという「大きな誤解」をしている。
しかしグラフで分かるように韓国人の好感度は、上から米国、中国、日本、北朝鮮。日本は一貫して中国より低い。
今年2017/03に初めて中国より日本の好感度が高くなったことがニュースになるほど、韓国人のベースは以前から「反日」だ。
この政治リスクをおかしてまで、韓国進出する事業面のメリットはあるか?それは若年層人口を見ればわかる。
元データはこちら。 2017 Revision of World Population Prospects – Interactive Data (United Nations DESA/Population Division)
国連統計で2015年の10歳~34歳人口を見ると、日本は3,215万、中国は4億9,278万で、中国は日本の15.3倍。
中国進出は上記(1)~(3)のリスクに対応すれば、若年層人口が15.3倍もあり事業として一定の合理性がある。(じっさいには台湾問題のリスクが大きすぎるが)
しかし韓国の10歳~34歳の人口は1,631万で、日本の半分。反日感情のない若者はさらにその少数派だ。
政治リスクを負ってまで韓国進出することが事業として合理的か、熟慮の必要がある。
韓国企業が日本、中国、台湾メンバーを入れてアイドルグループを結成することは、今までは中国市場進出を期待できたため合理性があった。しかし今後、中国進出は難しいだろう。
AKB48運営のような日本企業が今韓国でアイドルグループを結成しても、市場は日本、韓国、台湾などに限られるだろう。
この小さな市場で、日本では本家AKB48グループ・坂道系、韓国では地元アイドルグループ、台湾ではその両方と小さなパイを奪い合う過当競争になる可能性がある。
このタイミングであえて韓国でアイドルグループを結成してどういう結果になるのか、今後の動向に注目したい。