上海SNH48運営会社、テテちゃんを「合格アイドル」にする挽回策

上海SNH48二期生カチューシャ(李藝彤)がいわゆる「アンチ」にSNH48公式アプリ生放送で「死ね」と発言、その後謝罪した件、SNH48運営会社が頭のいい挽回策に出た。テテちゃん(黃婷婷)を「合格アイドル」にすることだ。

2017年SNH48グループ第四回総選挙で、第1位は先日卒業しソロ活動を開始した「四千年に一人の美少女」ことキクちゃん(鞠婧禕)、2位はカチューシャ、3位がテテちゃんだ。

今回の件は、来年2月のSNH48グループ第四回リクエストアワーで、カチューシャとテテちゃんにデュエット曲を無理やり歌わせようと、カチューシャ嫌いが投票資金集めをしたことがきっかけだった。

以前2人は現地ファンが「百合カップリング」していたが、その後カップリングの応援会は解散、2人はお互い中国ツイッター(新浪微博)をアンフォローし、冷戦状態だった。

↓まだ2人がカップリングされていたときの名作MV『おしべとめしべと夜の蝶々』

今回の発言で運営会社はカチューシャを処分しなかったが、公式声明で彼女を「アイドル失格」と書いた。

その後、カチューシャ本人が謝罪ツイートをしたが、予想どおり「アンチ」には絶対謝罪しないと、事実上「死ね」発言を正当化したことで、運営会社は対外的にも彼女を「アイドル失格」キャラにした。(カチューシャがこの落とし穴にわざとハマったのかは不明)

そしてその日の夜、音楽賞授賞式でテテちゃんが、長年ファンだった中華圏大物アーティスト、ジェイ・チョウ(周傑倫)と同じ舞台に立てて喜んでいることを、ポジティブなイメージとして打ち出した。

受賞スピーチで、テテちゃんは次のように話している。

「活躍したグループ賞」を頂きましたが、活躍したとは言えないでしょう。SNH48はデビューからすでに5年、二期生もデビュー4年たっていますから。

ただ、今日私にとってうれしいことが一つありました。デビュー4年でついに一つの願いがかなったんです。私の「アイドル」周傑倫先生と同じ舞台に立てました。

この願いはデビューして以来ずっと思ってきて、4年間努力してきたことです。今年ついにMIGU MUSIC AWARDの舞台で実現しました。この機会を与えてくださったMIGU MUSICさんに感謝します。

活躍したとは言えませんが、やはりこの賞を下さったみなさんに感謝します。SNH48はこれからもより高い目標、より大きな舞台を目指して努力します。みなさんありがとうございました。

大先輩のジェイ・チョウの顔を立て、主催者のMIGU MUSIC(咪咕音楽)の顔も立て、同時にSNH48代表として謙虚さを示す完璧なスピーチ。

ほとんどの日本人はジェイ・チョウを知らないが、中華圏では誰もがリスペクトするアーティストで、そのジェイ・チョウの大ファンというキャラ設定に、反感を持つ中国人はいない。

そしてその後、テテちゃんは下図のようにツイートしている。

今日は超うれしかった!MIGU MUSIC AWARDでSNH48が賞を頂いたことに感謝します。今後もより高い目標、より大きい舞台を目指して努力し、前に向かって走り続けます!

以上がSNH48メンバーとしての発言で、ここから先は私個人の時間です!

今日!
ついに!
周傑倫先生と同じ舞台に立ちました!
しかも!
ツーショットだよ!!!

このツイートがよく出来ているのは、「アイドル」はプライベートな面も好感を持てると言っていることだ。運営会社がカチューシャの個人的な失言を取り上げて「アイドル失格」設定にしたことと見事な対比になっている。

そして運営会社は、中国ツイッター(新浪微博)でフォロワーが100万を超える人気ブロガーに、「周杰倫黃婷婷同框(周傑倫と黃婷婷が同じフレームに)」というキーワードで、広告料を払って記事を書かせる。

↓たとえばこちらの「橘子娯楽(オレンジ・エンタ)」というアカウントはフォロワー577万。

テテちゃんのツイートをそのまま引用して、好意的に伝えている。

他の人気ブロガーも同じキーワードでツイートした結果、このタグは中国ツイッター全体のホットワードで20位以内に入った。すぐにランク外になると思うが、これは快挙だ。

以上でSNH48運営がどういう成果を得たかというと…

(1)運営会社に「アイドル失格」とレッテルを貼られたことで、カチューシャのファンがさらに結束して来年の総選挙で彼女を第1位にすべく投票する。(運営会社の収益が増える)

(2)カチューシャと対立していたテテちゃんのファンは、「アイドル失格」のカチューシャに負けてテテちゃんのメンツをつぶすことは絶対にできないので、総選挙第1位を目指して投票する。(運営会社の収益が増える)

(3)SNH48現地ファン内部でカチューシャ嫌いがテテちゃんに好感を持つことで、SNH48全体の対外的なイメージダウンによる収益減を緩和できる。

(4)過去さまざまな件で混乱を招いたルーリー(曾艷芬)はこのままフェードアウトさせる。今回の件でルーリーのファンはアンチ・カチューシャだったので、多くはテテちゃんに好感を持ってSNH48ファンに引き止められる。

(5)カチューシャのファンはこれ以上増えないが、孤立すればするほど彼女のファンは熱狂的になるので、収益源として当面は安定する。

(6)テテちゃんはネットドラマや映画撮影でほぼ劇場公演に出ない。カチューシャは今回の件で営業の仕事が減っても劇場公演には出る。なので2人が同じ仕事になることは防げる。

(7)テテちゃんはチームNII副キャプテンなので、建前上もメディア対応にカチューシャを出す必要がなくなる。(昨日の音楽賞授賞式ですでにそうなっている)

…などなど、運営会社はカチューシャを処分するまでもなく、彼女を「アイドル失格」、テテちゃんを「合格アイドル」にして挽回をはかったことが分かる。

頭いい、というか、ある意味、残酷。

P.S.
しかしアイキャッチ画像のジェイ・チョウが、その辺にいるお兄さんにしか見えない(笑)。筆者は個人的に彼はC-POPの限界を突破した最大の貢献者だと思う。彼の作品で最近すごいと思ったのは『以父之名』。