『PRODUCE48に見る、日韓アイドル市場の今』、二股をかけられた?日本

例によって田中秀臣氏のコラムに反論(?)してみたい。

『PRODUCE48に見る、日韓アイドル市場の今 田中秀臣が特徴を解説』(2017/12/30 リアルサウンド)

「2017 MAMA in Japan」でのAKB48と韓国のコラボは、筆者は中国のAKB48ファン経由で知った。韓国アイドルが完成品、日本アイドルが半製品の育成系というのは田中氏の書かれているとおりで、中国人の韓国・日本アイドルファンもよく知っている。

中国では完成品型の韓国アイドルが圧倒的にメジャーで、育成系アイドルはSNH48を含めて韓国アイドルより低く見られている。

ところで、PRODUCE101について知っておく必要があるのは、中国のネット最大手テンセント(騰訊)が2017/11/08の戦略発表会で正式にPRODUCE101の版権を購入、2018年第2四半期アイドルグループ結成の計画を発表していることだ。中国語では「創造101」。

これは、AKB48がPRODUCE48を発表する前である。

記者発表会の模様はこちらの「ビリビリ動画」で見られる

つまりPRODUCE101は、日本と中国に「二股」をかけていることになる。

中国で最近韓国エンタメ規制が緩和されつつあるのを見て、PRODUCE101はテンセントに正式に版権を販売し、一方、日本ではAKB48と提携することで、両国の足がかりを強化する狙いだ。

ただ、上のテンセント記者発表会動画に、中国の韓国・日本アイドルファンから大量に非難、罵倒のコメントが付いている。「またパクリか!」「吐き気がする!」「金儲け主義!」など、中国人にいちばん手厳しいのは、実は中国人なのだ。

さて、韓国からみたとき、すでに過当競争状態の育成系アイドルで日本市場に新規参入するメリットが小さいのは明らかだ。TWICEのように、従来どおり完成品アイドルのビジネスを続けるのが合理的である。

おそらくPRODUCE101の意図は最初から、日本の育成系アイドルコンテンツを吸収し、中国市場に「転売」して儲けることにある。

PRODUCE48は、AKB48側の「片思い」の可能性が高い。

田中氏はコラムの後半で、「韓国のTHAAD配備をうけた中国の韓国エンタメ規制」という紋切り型の議論を引用しているが、韓国から中国へのコンテンツの輸出という構図そのものが変わっている点が、より重要だ。

上記、PRODUCE101の「二股」や、SNH48のK-POPスタイルの派生チーム「7SENSES」が2017/11/15の「2017 Asia Artist Awards」で韓国アイドルと同じ舞台に立ったこと。(ついでに韓国女性アイドルグループの中国人メンバーが、楽屋で7SENSESに会って大喜びだったこと(笑))

そして、中国で今トップの人気を誇る男性タレント、鹿晗、張藝興がいずれも元EXOメンバーであることなど。

これらは韓国側が主導権をもって中国へコンテンツを輸出する構図が、中国主導に変わりつつあることを示している。

中国の韓国エンタメ規制を、単なる規制強化ととらえるのは中国側の「頭の良さ」を分かっていない。中国側がやりたいことは、規制を強めたりゆるめたりすることでビジネスの「主導権」を韓国側から奪うことだ。

それによって韓国コンテンツを中国企業の利益にするフリーハンドを得るのが、最終的な中国側の狙いである。

SNH48はまさにこれを体現している。

SNH48は劇場公演やテレビ出演、企業のイメージキャラクターの仕事など、公式には日本語禁止だが、劇場以外でファンと交流するとき、たとえば中国版ツイッターでのツイートや、AKB48の「Showroom」にあたるネット生放送では、日本語規制はない。

SNH48メンバーのネット生放送を見ていると、メンバーがBGMにJ-POPや日本のアニソンを延々と流していたりする。

中国側は自国企業が「主導権」を得られさえすれば、韓国コンテンツも日本コンテンツも歓迎する。そして韓国PRODUCE101はそれを理解した上で、AKB48コンテンツを「転売」する狙いで日韓に「二股」をかけている可能性がある。

PRODUCE101は、中国側からは主導権を奪えないが、日本側からは主導権を奪えると考えているかもしれない。そうしてAKB48コンテンツをPRODUCE48経由、テンセントとの提携経由で、日本の「代理」で輸出し、自分たちの利益にする狙いがあると思われる。

SNH48と競争することになるが、中国の若年層人口は日本の10倍以上あり、日本市場と違って育成系アイドル市場にまだ参入する余地があると考えているのだろう。

日本のAKB48やそのファンは、中国・韓国のこのしたたかさを理解しているだろうか?

AKB48がSNH48に「裏切られた」のは、、中国側のしたたかさを理解せず、ナイーブにAKB48コンテンツの中国展開のチャンスだと考えたからではなかったのか。

AKB48がコンテンツとして魅力があることは言うまでもない。しかしAKB48側が「企業」として、提携相手に美味しいところだけを持っていかれないように、したたかなビジネスができるのか。

つまり、AKB48がSNH48の失敗から本当に学習したのかどうか、PRODUCE48やAKB48の中国再上陸の結果を見てみたい。