北京BEJ48チームB全曲オリジナル公演『B A FIGHTER』に好き勝手コメント

北京BEJ48チームBとして初の全曲オリジナル公演『B A FIGHTER』が2018/01/19(金)初演一日目を迎えた。例によって独断と偏見でツッコミを入れてみたい。

公演のPR映像完全版はこちら。

先週2018/01/12初日を迎えた広州GNZ48チームZ全曲オリジナル公演『三角関数』の14分間におよぶPR映像に対抗したのかどうか分からないが、この予告編も14分弱のショートムービー。

初演一日目、劇場で初めて後半が公開されたが、客席が爆笑だったのが笑えた。内容があまりに中二病すぎるからだ。広州GNZ48のPR映像は初めからコメディーだが、BEJ48のこちらは運営がどこまでマジメに制作したのかは不明。でもツッコミが入ることは当然想定していただろう。

北京BEJ48の全曲オリジナル公演は上海SNH48六期生からの移籍組で結成されたチームEの『奇幻加冕礼(ティアラ・ファンタジー)』が初めて。

この公演は公開当初、異常に評判がよく、その後のSNH48グループの全曲オリジナル公演の基準になっている。

評判が良かった理由は公演全体にテーマ性があることと、ほぼ全曲がkoshin(胡臻)さん作曲で、典型的なJ-POPスタイルのアイドルポップスとして非常にクオリティが高かったこと。

その後、北京BEJ48の楽曲制作に携わっていた現地ミュージシャンが、運営会社とkoshinさんの関係が悪化したという情報をリークしていたので、筆者はもうkoshinさんはBEJ48に楽曲提供しないとがっかりしていた。

ところが今回、さっそく無償公開された音源のクレジットを調べてみると、16人で踊る曲11曲のうち6曲の編曲にkoshinさんが参加している。

で、調べてみるとkoshinさんは「上海音泰文化伝媒有限公司」という音楽制作請負会社のCEOになっていた。

上海音泰文化公式サイトはこちら
上海音泰文化の中国ツイッターはこちら

同社ミュージシャンがSNH48グループに楽曲提供していて、例えば第四回総選挙第33位~48位『記憶中的你我(記憶の中のあなたと私)』も同社所属のRNGさんの作曲。

舞台装置で特徴的なのは半透明の幕。ここの映像や照明を投影している。全体を通して現地ファンのコメントに多かったのは、振付けが単純すぎて、せっかくのチームBの実力が発揮できていないこと。

ただBEJ48の衣装のレベルは広州GNZ48のレベルまで一気に上がっている。16人全員で踊る曲の衣装は、どれも3パターンある。

以下、曲名と作詞/作曲/編曲。

01. Be a Fighter 張艾,BEJ48-段藝璇/Piggy/Piggy,Koshin

PR映像の前半の最後の部分、チームBキャプテンDDD(段藝璇)が銃で打たれて倒れる場面とつながっている。イントロが長く公演全体の前奏になっているのは『奇幻加冕礼』を踏襲。

メロディーラインがやや平板だが、曲構成や編曲は一定の水準に達していると思う。間奏のディストーションギターも上海SNH48の『Beautiful World』『第48区』と違って、耳ざわりでない適度な歪み具合。このあたりはkoshinさんのセンスだと思う。

02. 先鋒号角 黃楓宜/Piggy/Piggy,Koshin

ディスコやユーロビートも最近のSNH48グループ全曲オリジナル公演では定番。とにかく盛り上がる。サビの最後のリフレインの前のブレイクが良い。ユーロビートはこういう同じパターンのメロディーのリピートで正解。

DDD(段藝璇)が公式アプリ「Pocket48」の生放送で話していたそうだが、この曲の振付けは日本の坂道系(乃木坂46、欅坂46)のコレオグラファーとのこと。日本の坂道系ファンの知らないところで実はつながっている。

曲の最後は、そのまま衣装替えの間奏で3曲目につながる。なぜ3曲目でいきなりカーレースになるのかは不明(笑)。

03. 速 張艾/Piggy/Piggy,Koshin

16ビートのロックに転換。途中、生中継を見ているファンにしかわからないマンガ風のオーバーレイが、やや面白い。

04. 飛行国度 黃楓宜/唐紹崴/唐紹崴

イントロからしてコテコテの48系のアイドルポップ。サビの最後のリフレイン前のブレイクは、何度もやられると少し単調になるかも。

ここからはユニット曲。

05. 紳士風度 左放/Ken Chong/Ken Chong

最初の音響効果は必要ない気がする。マジックがテーマ。ユニット曲全般に言えるが「B A FIGHTER」という公演タイトルと全く関係なくなっている。

いきなり4ビートでビッグバンド風ジャズだが、上海SNH48チームSII全曲オリジナル公演『心の旅程』の『ニューヨークの夢』でレビューダンスの前例があり、あまり違和感がない。演出や楽曲スタイルの多様性が良い。

作曲者Ken Chong(張順康)のFacebookはこちら。はシンガポール生まれ、シンガポール在住で、ステファニー・スン(孫燕姿)2016年8月リリースのEP『彩虹金剛』のタイトル曲を書いている。Ken ChongがCEOの音楽制作会社の公式サイト(シンガポール)はこちら。純粋な職業作曲家の一面もあるということらしい。

マジックといえば広州GNZ48『三角関数』公演の洗脳曲『結伴』のユニット曲バージョンも、ルイツ(龍亦瑞)が姿を消すマジックが途中にある。

06. 子弾日記 張艾/Piggy/Piggy

フィドルが特徴的な米国の昔の意味でのカントリー。AKB48で言えば『16人姉妹の歌』だが、中国ポップスでいうとタイトルが「子弹日記(弾丸日記)」ということもあり、ジェイ・チョウ(周傑倫)『牛仔很忙(カーボーイは忙しい)』を思い出す現地ファンが多いはず。

この曲もこの公演の楽曲の多様性を代表している。カントリーは最近のSNH48グループの全曲オリジナル公演になかったので。

07. SHOW 左放,BEJ48-段藝璇/Melodesign/Melodesign

これはセクシーさで過去のSNH48グループのオリジナル曲の限界を突破した感のある曲。衣装がややダサいが、半透明のカーテンと照明の効果、典型的な韓国女性アイドルグループのK-POPスタイルで飛び抜けている。この曲も作詞にチームBキャプテンDDD(段藝璇)がクレジットされている。

調べてみるとやはり韓国のMelodesign、本名Kim Doo Hyun作曲。過去にBEJ48『元気覚醒』や上海SNH48の2016年水着EP『ドリームランド』のSNH48チームHII曲『夏日悸動(夏のドキドキ)』も作曲している。激しく納得。

サビの最後のリフレイン前で、ソファーに寝そべっている猫耳のDDD(段藝璇)に、ゆーわん(青鈺雯)がおおいかぶさる振付けがあるが、当局の審査を通らなかったのはこれ?と思うくらい過激。

SKE48『手をつなぎながら』公演を上海SNH48チームHIIがお下がり公演したとき、ツーコーラス目のAメロの冒頭で、三期生チームHIIモンスター(劉炅然)が、床にひざまずきながら股を開いて閉じる、という過激な振付けをオリジナルで始めた。現地ファンの用語で「滑跪(滑りながらひざまずく)」と言う。

最初はこれがエロすぎるというので観客にウケていたが、今では広州GNZ48『双面偶像』の洗脳曲、サビの「ピポポピポピ」が頭についてはなれない『合理失控』で、16人全員がこの「滑跪」をするので、最近ではあまり驚かない。

この『SHOW』ではDDDが途中この「滑跪」をやっている。セクシー系の曲では定番の振付けになった。

08. 一天天一点点 夏寧/7key Once/7key Once

この「一点点」は中国語ではよく使うフレーズなので仕方ないのかもしれないが、やはり広州GNZ48『三角関数』公演のユニット曲『就差一点点』とカブっている。

現地ファン的にはミルクティーのチェーン店「一点点」を思い出すらしく、『三角関数』の方でも「一点点のCMソングか!」というツッコミが入って笑えた。

この日デビューした三期生シューシュー(周潔藝)が早速参加している。ビートは強くないし、ミドルテンポなのでJ-POPだが、サビの後の「一天一天每一天 沉甸甸太遥远 一点一点多一点 朦胧胧的界限」あたりのフックはK-POPっぽい。ちょうど中間のスタイルといったところ。

ワンコーラス目とツーコーラス目でガラッと変わる編曲が凝っている。伴奏のストリングスも良い。

09. SPY 夏寧/Piggy/Piggy,Koshin

これが現地ファンのスラングで「gay里gay気」曲。一人が男役のデュエット曲。副キャプテン・ミルク(劉姝賢)が男役でカッコいい。女性がMIMI(陳美君)という人選はパーフェクト。大道具の背もたれの高い椅子も様になっている。

これは他の姉妹グループでも特別公演でメンバーが踊りたくなる定番曲になりそう。ちょっと残念なのは、やはり上海SNH48チームSII『第48区』の『愛未央』や、広州GNZ48チームG『双面偶像』の『9 to 9』に比べると、振付けがイマイチな点。

「SPY」って誰がSPYなのかと思ったら、最後にまさかの展開。この演出は素晴らしい。MIMIのガーターベルトをうっかり見過ごしていた。

10. 星夢奇遇記 李相辰/Arisa Sato/Arisa Sato

コテコテの48系アイドルポップ。観客はコールしやすいと思う。Dメロくらいはあっても良かったかも。

11. 華夏-紫禁城 夏寧/7Key Once/7Key Once

これこそ北京!という感じ。完全に意表を突かれたけれど、こういう曲がなきゃ中国女性アイドルグループじゃない。サビ始まり。

最後に衣装がLEDで光って、全体としてインパクトが強烈なので、サビのあとにフックで洗脳フレーズを入れれば良かったのに、その意味ではかなりもったいない。

衣装の上半身が合わせで漢服風になっているのが、広州GNZ48チームNIII『第一人称』公演の『BA BA BA』の衣装に似ているという現地ファンのコメントがあった。たしかにスカートのラインも似ている。中華風を狙うとこういう衣装になるのかもしれない。

12. If You 夏寧/7Key Once/7Key Once

突然衣装が真っ白なワンピースのロングドレスになるのも、飽きない演出で良いと思った。スケールの大きな編曲の16人曲。

サビのバックコーラスが分厚いので、現地ファンのコメントに「オリンピックのイメージソングか!」というツッコミがあって笑えた。たしかにDメロで半音上がる転調があるし、オリンピックのイメージソングっぽく聴こえる。

あと、ミドルテンポの曲のわりに、最後の感想で一人ずつ名前を言うペースが速すぎる。現地ファンのコメントは、名前を言うのはこの後の『笨』の方が良かったという意見だった。

13. 笨 甘世佳/Andrew Shin/Andrew Shin

「笨」は中国語の発音記号ピンインで「Ben」で頭文字がBなので、チームBメンバーが「自分たちはバカだけれど」と自虐ネタでよく使い、チームBファンも愛情をこめて「笨队(チームバカ)」と呼ぶ。

これが今回の公演でチームBのチーム曲と言うべきメイン曲。作詞はSNH48グループにとっての秋元康的な位置づけの新進気鋭の作詞家・甘世佳。過去に『私の舞台』『Gravity』など現地ファン絶賛の歌詞を提供している。

曲は定番のバラードだが、メロディーが美しくて素晴らしい。

歌詞を日本語試訳しておく。C-POPの歌詞は一番と二番がまったく同じだったり、サビが全部同じ歌詞だったりするが、くり返しが一つもない手抜きなしの詞。

倏忽间 我竟然已走过小半生
用当时 一腔天真 换来几页红尘
交出了 我的青春 我的自由身
和留白 那部恋爱课本

ふと気づけば もう人生の半分
あの頃 胸いっぱい無邪気だったのに
俗世間を何ページかめくってきた
私の青春と 私の自由な身体と
あの恋の教科書の余白を差し出した

说好要 一起携手走过的人
在微凉某清晨 一转身
只剩下手心残留的余温

ともに手を携えて歩もうと 約束した人は
冷んやりとした明け方 振り向いて立ち去った
手のひらに温もりだけを残して

所谓人生 就像远征 终点是叹息声
离开的人 倒下的神 被辜负的永恒
我的人生 无限可能 像无尽夜幕深深
或许此生 只为看看能不能

いわゆる人生は 遠征のようなもの 終点はため息だけれど
別れた人は 落ちぶれた神 裏切られた永遠
私の人生は 無限の可能性 深く尽きない夜のとばりのよう
この人生は やってみるしかないのかもしれない

别担心 我既然已走过小半生
当然懂 有时破碎 也是一种完整
抬头望 天上星辰 也聚散离分
有些灿烂 因为短暂而永恒

心配はいらない もう人生の半分を歩んだから
もちろん知ってる 粉々に砕けることも 時には一種の完璧さだと
顔を上げれば 天の星々も 集まっては離れる
その輝きは 短いからこそ永遠

凭谁问 那漂泊无常的缘分
却让每一个你 变我们
谁不是在层层阵痛中出生

誰もが言う あの漂う無常もまた縁だと
あなた一人ひとりが 私たちを変える
誰もが幾重もの陣痛から生まれる

所谓人生 就像远征 又美丽又残忍
就算遗憾 也要勇敢 你不能逆时针
可是人生 无限可能 才有无数未完成
用尽此生 我想看看能不能

いわゆる人生は 遠征のようなもの 美しくて残酷
悔やんでも 勇気を持とう 時計は戻せない
でも人生は 無限の可能性 だからこそ無数の未完成
この人生を全力で やってみたいと思う

当初差点重重关上心里 这道门
未曾发现 门外还有更广阔的门
朝阳的门

最初重く心を閉ざしそうだった この門
まだ気づかなかった 門の外にさらに大きな門があると
朝日の門

我的人生 我的远征 我枕上的泪痕
期待和你 能笑着说起 当初也苦得很
我的人生 无限可能 无尽的人海浮沉
但愿此生 无悔遇见这些人
但愿此生 无悔留在这座城

私の人生は 私の遠征 枕に流した涙の跡
きっとあなたと 笑って話せる あの頃は苦しかったねと
私の人生は 無限の可能性 尽きない社会の浮き沈み
この人生で この人たちに会えたことを悔やまぬように
この人生で この街にとどまることを悔やまぬように

なお、もともとこのバラードは昨年末にチームBを退団した牛聰聰がソロで歌う予定だったらしい。今回の初演一日目の後、彼女がソロで歌った音源を中国ツイッター(新浪微博)の個人アカウントでアップしていた。

↓彼女の写真付きでアップしておいた。

14. 虹色警戒 左放/Piggy/Piggy,Koshin

ここからの制服衣装で北京BEJ48衣装部のバージョンアップがよく分かる。 楽曲としてはマイナーコードで、典型的なJ-POPスタイルのアイドルポップ。

最近のSNH48グループのオリジナル曲は広州GNZ48も含めて、ツーコーラス目終わりの間奏がワブルベースのEDMになるパターンが多い。Dメロがないシンプルな構成。やや物足りないか。

15. 前行吧!彼異界号 夏寧/Piggy/Piggy,Koshin

これもサビ始まりで典型的な48系アイドルポップ。F#メジャーからサビでAメジャーに3度転調するのもお決まりのパターン。この曲もDメロなし。

16. 愛与前方 黃楓宜/Piggy/Piggy,Koshin

公演PR映像に登場する曲。これもサビ始まりでBメロが「パーンパパン」」典型的な48系アイドルポップ。ワンコーラス目のAメロ前にキャプテンDDD(段藝璇)の語りが入るのはちょっと意外な構成。この曲もDメロなし。

全般的に現地ファンを失望させないだけの一定の水準に達していることは確か。

ユニット曲部分にいろいろなスタイルの曲が詰まっているのは面白い。アンコール前の3曲『華夏』『If You』『笨』の構成もメリハリが効いていて素晴らしい。『華夏』はやっと北京らしさ全開でスッキリした。

最後の3曲はあまりに48系過ぎて、ちょっとどうなんだろう…。

同じ北京BEJ48チームE『奇幻加冕礼』はほとどがkoshinさん作曲で、今回はkoshinさんは編曲ということで、やや差が出てしまった感じがする。

ユニット曲の作詞・作曲者は音源が公開されたら追記する。