上海SNH48が新設した「予備生」待遇の実態

上海SNH48が先日開催された第四回リクエストアワー「大組閣」で発表した「予備生」制度で、運営会社の利益追求の姿勢がより明確になった。

アイドルグループ運営事業で利益を追求しすぎることの弊害は、オーディションの応募者が減ることと、ファンが投票に金を使わなくなることだ。運営会社はある意味、自分で自分の首をしめ始めている。

「大組閣」の大きな目的の一つは、やはり人気のないメンバーを「予備生」に降格して「干す」ことだったらしい。退団もさせないし、活躍のチャンスも与えないということ。

「大組閣」でSNH48の「予備生」に降格された、二期生いちご(溫晶婕)、六期生チュエチュエ(成玨)、七期生チュンチュン(姚禕純:アイキャッチ画像のメンバー)が、公式アプリ「Pocket48」でファンに「予備生」の待遇を明かしていた。

なお最初に予備生制度を作った広州GNZ48の「予備生」は、上海SNH48でいうと「予備生」ではなく新設された「チームFt」(future)にあたると考えていい。

上海SNH48「予備生」の正規メンバーとの待遇の格差は以下のとおり。

・会社の宿舎は3人以上部屋。ご承知のとおりトップメンバーは1人部屋、正規メンバーは2人部屋、新チームFtも正規メンバーなので2人部屋。

・ベッドの長さは約170cmで最安値の製品。長身のメンバーは就寝中にベッドから落ちてしまうが、ベッドごとひっくり返るような品質のもので、ゆっくり眠れない。

・お給料は月2,000元(約3万4000円)に減額。食・住は提供されるが、大都市上海ではかなり苦しい。

・在学中のメンバーは従来どおり、仕事を休むと給料を引かれる。

・通学のために実家と往復する交通費は従来どおり自腹。

・チュエチュエは運営会社が提携している上海音楽学院附属安師実験中学・アイドルクラスに通っている。

上海音楽学院附属中学(日本で言う高校)そのものは上海音楽学院の管理下にあり、就職率100%で、そのまま上海音楽学院への進学率も高い良質な学校だが、「アイドルクラス(偶像班)」だけはSNH48運営会社との提携で、実質、別の学校。

上海SNH48だけでなく広州GNZ48もメンバーが通学できるように学校と提携しており、学費の一部を負担している。

少なくとも上海SNH48はこの「アイドルクラス」に通学しているチュエチュエのようなメンバーは、退団すると会社負担分を数万元を自腹で返金する必要がある。

チュエチュエは会社の言う「決心」を問われ、アイドル業に専念するために自分の行きたい高校ではなく、会社が提携した同校への進学を決めたが、結果がこれ。

違約金の支払いを求められる件も含めて、退団しようにも退団できず、4人部屋、月2,000元、仕事なしの状態で在籍し続けるしかない。

・チュエチュエはSNH48オリジナルミュージカルに出演しているが、予備生になったことで降ろされる。

ルオルオ(徐子軒)、みらい(蔣芸)も降ろされ、彼女の予備生降格とは無関係だが、彼女は自分のせいで降ろされたのではないかと、申し訳なく思っている。

このオリジナルミュージカルは姉妹グループの劇場への巡回公演が予定されており、ファン投票で彼女は参加が決まっていたが参加できなくなり、ファンがその投票に使ったお金は完全にムダになった。

このミュージカル『The Sunny Star』は2018/02/08(木)上演分に、わざわざ北京BEJ48チームEから李想(リー・シャン)を参加させたように、上海SNH48はかなり力を入れているようだ。

・上海SNH48チームSIIの補欠は新チームFtから選ばれ、「予備生」からは選ばれないとのこと。

・正規メンバーへ復帰の条件は総選挙で17~32位に入ること。公演にも出られず、営業の仕事もない「予備生」が総選挙でこの順位に入るのは事実上不可能。つまり完全に「干された」状態。

・公式アプリ「Pocket48」生放送で、ファンからプレゼントされた仮想アイテムの現金化換金率が、正規メンバーより悪くなっていることは先日ここでご紹介したが、これだけは正規メンバーと同じに戻されたとのこと。

これは「Pocket48」運営スタッフ(女性が多い)の意見が通ったからという推測がある。

ある「予備生」メンバーは公式アプリの「メンバーの部屋」にこう書いている。

これからは自分のチームの代役に行きたくでも、たぶんチャンスはない。本当にすごく辛い。入団して一年余りになるけれど、こんな待遇を受けるとは思わなかった。

これからもどうなるか分からない。

みんなも両親が大事に育てた宝。私は今回のことは両親に話していない。話したら両親がどうなるか分からないから。

もう辞めるかどうかについては、今は会社がもう自分のことを人として見ていない感じがする。

待遇の差が大きすぎるでしょ。退団勧告ならはっきり言って欲しい。少しだけ希望をもたせておきながら、冷水を浴びせるようなもの。

予備生に降格される心の準備はしていた。(学業のために)ずっと公演に出ていなかったから。でも予備生になるとここまでの待遇になるとは思ってなかった。

上海SNH48「予備生」の待遇については以上のとおり。

「予備生」の待遇をここまで低下させる弊害の一つは、冒頭にも書いたが、オーディション応募者が減ること。

SNH48グループのオーディションに応募しようと思う人は、必ずこれら中国2ちゃんねる(百度貼吧)の掲示板を読む。ただでさえ入団に反対する両親が多いのに、さらに多くなるのは確実。

また、比較的人気の低いメンバーのファンが、さまざまな投票イベントに徐々にお金を使わなくなる。

300人余りのメンバーを抱える一つの利点は、下位メンバーにもブレイクのチャンスが有るという期待に基づいたロングテール効果だが、これが徐々になくなるのも確実。最終的にはトップメンバーしか残らず、本来の48系とかなり質の違うアイドルグループになる。

せっかく二期生キクちゃん(鞠婧禕)がソロ活動を始め、SNH48グループ全メンバーの希望の星になったところなのに、ここまで露骨な区別をして、しかもそれが外部に露呈したのでは、元も子もない。