上海SNH48九期生パオパオ総選挙演説:アイドルとは墜落してもファンと再び飛び立つ存在

上海SNH48九期生は最初から新チームFt(futureの意味)としてデビューし、運営会社の寵愛をうけているのは明白だが、その一人、パオパオ(李星羽)の第五回総選挙演説の原稿を本人が中国ツイッター(新浪微博)でツイートしていた。

現地ファンのコメントによれば「この作文は99点」など、かなり評判が良いので日本語試訳する。

個人的に印象的なのは彼女がアイドルの意義を、欠点のない理想的な存在としてではなく、挫折をファンといっしょに乗り越える存在ととらえている点。

彼女はデビュー初日の自己紹介MCからいきなり延々としゃべり続けて、中国語でいう「話嘮」、つまり超おしゃべりな饒舌キャラを確立している。この演説もじっさいにどれくらいの早口だったのか、映像も合わせてお楽しみください(汗)。意外にウケてないけれど(汗)。

みなさんこんにちは、私は李星羽です。

前にスタッフが私に言ってたのは、毎回公演で私がしゃべり始めるとすごく心配になるって。私の話が止まらなくて、スタッフ全員残業で、会社が残業代を出さないといけないから。

でも、もうすぐ上場する会社だから、残業代くらい平気でしょ?!

もちろん、私がSNH48に来たのは、決して王社長(訳注:SNH48グループ社長の王子傑)と星座占いが合わない公式ライバルになりたかったからじゃない。すべては2016年のあの春にさかのぼります。それまでより春が少し遅かったあの年、涙なしには観られず、涙のあまり声にもならないほどの、とある名声高いバラエティー番組が人気を博して、多くの人が腎臓を売って投票し、土を食べるような暮らしを始めるきっかけになった。そう、その番組は――『国民美少女』。

当時私はせいぜい忠実な視聴者程度で、経験豊富なファンのみんなと比べて、まだまだ進歩の余地があった。「套路」とか全く知らないし、「一波暴晒」なんかはもっと分からなかった。でも学業のプレッシャーがますます重くなり、だんだんとここに関心を持たなくなった。

でも人生の巡り合わせはまるで王溪源の部屋に入るようなもので、彼女のベッドに寝そべっているのが周詩雨か李星羽か永遠に分からない。高二の夏休み、ハルピン通りの「天何々藍」という写真館に証明写真を撮りに行ったとき、意外にも見慣れた星夢劇院を目にした。(訳注:「天何々藍」は上海SNH48劇場近くにあった「天真藍」という写真館)

あまりに驚いた私はその場で思わずこう言った。「何これ、この劇場ボロ過ぎない?でもあの制服を着てる劇場支配人の見た目は結構いい」

でも評価は評価として、当時私の心の中にあったアイドルに対するあの憧れが、まるで私の二重あごのように突然活性化された。テレビの前でじっとあの番組を見ていた時のこと、泣いたことも笑ったこともすべて美しい想い出だと歌う『支え』、何度傷ついても恐れたことはないと歌う『虫のバラード』、あの歌詞、「We Are the SNH、何も恐れたことがない」、そのすべてを思い出した。

突然アイドルの意義が分かった気がした。たぶん平凡な生活の中で思い出さなかったけれど、心にしまわれていて、ある時飛び出して来る絆のようなもので、その絆が私に言った。hey! 実は君とずっといっしょだったんだよ、って。

私もそんな絆を他人に与えたい。だからここへ来ました。その後、私を星夢劇院に導いてくれたあの天某藍に行きたいと思ったら、もう閉店してることに気づいた。もし店主がたまたま私たちの公演を観ていてくれたら、心から言いたいことがあるの。「次に写真を撮る前には、ちゃんとお客さんに二重あごをしまうように言ってね」

初回選考のときは家族にウソをついて応募した。あのとき思ったのは、美人は五万といて、私は歌もダンスも基礎がゼロの高校生だから、ただ情熱だけで自分の夢に近づきたいと思っただけ。たった一枚の応募用紙でも、自分が努力した証拠だった。

でもまさか書類選考、二次選考、最終選考に通ると思わなかった。あの年のオーディションの応募者は私一人しかいなかったんじゃないかと疑ったこともある。ごめんなさい叶さん。私はあのときまだ子供で、ここがもうすぐ上場する会社なんて知らなかったんです。(訳注:叶氏はタレントマネジメント責任者でSNH48グループの経営陣の一人)

でもお父さんは私が入団するのに同意せず、一か月も私と口を聞かなかった。今でも忘れないのは去年の11月4日、私が生活センター(宿舎)に引っ越したとき、当時お父さんが激しい口調で言った。「ほんとにお前を殴って3日間気絶させて、通知に気づかせないようにしたいよ」。でもお父さんはそれでもここまで送ってくれた。いまお父さんは私の成長に満足して、よく褒めてくれる。「あの王溪源っていう子はすごい美人だな!」って。

入団後の生活は思っていたのと違う気がした。基礎がゼロのダンス音痴、音楽音痴として、ダンスの先生が私たちに1レッスン1曲覚えろと要求したとき、本当に泣いて先生に訴えたかった。「女性が女性に意地悪しなくてもいいじゃない」。でもここにとどまるために、私は歯を食いしばって、毎晩夜中の三時、四時まで追加練習して何とか付いていった。李パオパオは、ここへ来たのは一時の衝動だけど、絶対に三分間で熱が冷めるなんてことはないと証明したかった。

ここで、特に感謝したいのは、あのときぐっとこらえて私を殴って李エ~ンエ~ンにしないでくれた全ての先生。宅配便を呼んで私を発送しないでいてくれた某さんと某さんと某さんにも感謝しています。

(訳注:「宅急便を呼んで」は「叫顺丰快递」で「顺丰」は中国最大手の宅配便会社。運営会社がメンバーをお払い箱にすることを現地スラングで「顺丰到付(宅配便で着払いにする)」と言う。クビにする上にその費用も自分で払ってもらうという意味。タレントマネジメント契約の違約金のことを指している。ここではクビにしないでくれて感謝してますの意味。もちろん冗談)

当時、調味料の袋のないインスタントラーメンを買ったり、投票券のないEPを買ったりして、裏でみなさんを呪ったかもしれないけれど、私を成長させて下さって今は本当に感謝しています。

もちろん楊令儀と王溪源にもとくに感謝しないと。あのとき毎日私といっしょにボーカルとダンスの練習をして、私を見捨てないでくれてありがとう。でも私は認める。あのとき私が毎日頭の中で考えていたのが、あなたたち二人のカップリングの応援会が「一楊千溪」っていう名前になったら、死ぬほど文句を言われるだろうなぁ」ってハハハ

(訳注:「一楊千溪(イーヤンチェンシー)」は楊令儀の「楊」、王溪源の「溪」をとって、「一日千秋」「一攫千金」「一望千里」など「一~千~」パターンの四字熟語にしたものだが、もし応援会にそんな名前を付けたら、中国で国民的人気の少年アイドルユニットTFBOYSメンバー易烊千璽(イーヤンチェンシー)と同じ発音になって、そのファンに死ぬほどディスられる、という意味)

実は、私だけじゃなくて、チームFTはみんな入団したとき、外で言われてるように決してスカウトされて舞台に上がったじゃない。基礎からレッスンした子の方が多い。すごく努力しても、デビュー前のセレクションで、やっぱり厳しい評価をうけた。セレクションが終わると、みんなレッスン室に残って訓練した。誰か泣き出すと、他の子も泣いて、みんなで泣き始めたりした。でもやっぱり歯を食いしばって練習を続けた。

初演の前になって、チーム名にあるfutureの意味のFTが、もしかするとFailureの書き間違いじゃないかってみんな思ってた。未来はもう来ない、私たちは失敗する運命だと思った。でも、初演の後、観客のみなさんの応援のおかげで、みなさんに認めてもらって、好きになってもらえたから、おびえていた自分もだんだん落ち着いてきた。そしてアイドルについて新しいことを学んだ。「ファンにパワーを与える前に、まずみんなが、少しずつのパワーを集めて、私のファイトと勇気になってくれる」ということ。

私は誰にも期待されない李パオパオ、早口の他には何もできない女子高生から、みんなが応援するアイドルになった。この一瞬の変化は、私にとってサプライズだけれど、怖い感じもする。あまり考えずにおしゃべりする話し方で、身近な人を傷つけるんじゃないか、劇場が満席にならないんじゃないか、いつかみんなが私のぺちゃくちゃのおしゃべりに飽きるんじゃないかって。

もしかすると、今私はこの劇場の真ん中のライトの下に立っているSNH48メンバーだけれど、半年以上前は、まだ宿題に苦しんでいた普通の高校三年生だった。私は、本当にアイドルになったんだろうか?

もう一度自分自身に問いかけてみる。アイドルって何?私はいま何となくわかった気がする。

アイドルは決して最高の舞台に立つ必要はないかもしれないし、刀や槍でも傷つかないとか、万丈の光に輝いている必要もないかもしれない。みんなはアイドルが失敗したり、悲しんだり、落ちぶれたり、落胆したりするのを許してくれるかもしれない。

でも、失敗したり悲しんだ後には、もう一度目標へ突き進む度量の大きさと勇気がなきゃいけない。落ちぶれた後には、いちばんの笑顔を奮い立たせて振り返って、気づかってくれるみんなの視線に向き合わなきゃいけない。

彼らが何を言っても関係ない。もう一度いっしょに突き進まなきゃいけない。アイドルは最初から天高く飛び上がれるものじゃなくて、墜落するたびに、みんなといっしょに跳ね返ってさらに高く跳び上がるものだ。

アイドルとは、私の心の中では、一声出せば大勢のファンがコールを返してくれるような、星のようにキラキラ輝くグループ内の先輩たち。アイドルとは、あの中央電視台の楽屋で、休むことなく、一つひとつの振り付けを丹念に、筋肉がつるまで復習しているチームFTのチームメイト。アイドルとは、今ここでみんなに向かって目標を叫んでいる李星羽。

私は良いアイドルになりたいと思います。この夏、私と一緒にこの目標を追い求めてくれますか?