中国政府の広電局がこの夏休み期間、バラエティー番組を規制するらしい。単なるネタかと思ったら本当にお達しが出ていた。
この通達のポイントは後半のニの部分。
ズバリ「偶像養成類節目(アイドル育成類の番組)」と出てくるので、SNH48の総選挙が危ない!とびっくりしてしまうが、この部分は、中国ネット最大手テンセント(騰訊)が韓国Mnetから正式に版権購入して、先日放送が終わったばかりの中国版『Produce101』第一シーズンを指していると考えるのが妥当だ。
メンバーのさまざまなスキャンダルに加えて、応援会がクラウドファンディングサイトを利用して大量の投票資金を集めたことがネットで話題になった。
広電局の通達に「アイドル育成」という単語が登場したくらいなので、『Produce101』のおかげで中国社会に「育成系アイドル」の考え方がかなり浸透したことは間違いない。
しかし同時に育成系アイドルの背景に、大量の資金集めで競争するといった「拝金主義的な楽しみ」や番組制作者側の「目先の利益を急ぐ」姿勢があることも広まってしまった。
幸いSNH48は総選挙のプロセスを番組にしているわけでもないし、中国版『Produce101』の話題性に比べれば良くも悪くもまだまだマイナーな「地下アイドル」色が強い。
また中国政府はかつて李宇春などの国民的人気歌手を生み出したオーディション番組『超級女声』が放送されたときなど、社会への影響が強くなりすぎるとメディア規制をかけるのが定番なので、今回も中国版『Produce101』で過熱した世論がおさまるまでの一時的な規制と思われる。
ただこういった中国の表現規制の中で、SNH48運営会社はつねに、一方でベンチャー企業として投資家の利益のために事業拡大をつづけると同時に、他方で政府に対しては愛国ポーズをしつつあまり目立たないように活動しなければならない。非常に微妙なかじ取りを強いられているのだ。
SNH48が会社の規模を拡大するにつれてこのかじ取りは難しくなるが、おそらくAKB48運営会社にはできなかっただろう。SNH48は中国の国情に対応するため、遅かれ早かれAKB48運営から独立せざるを得なかったと言える。
AKB48運営会社はAKB48 TeamSHによる中国再上陸で、企業としての利益追求と政府への愛国ポーズの微妙なかじ取りをする準備ができているのかは分からないが。