広州GNZ48舞台劇『双面偶像:又又』メンバーの迫真の演技に予想外の号泣

昨日2018/07/20(金)広州GNZ48チームGがいつもの全曲オリジナル公演『双面偶像』を舞台劇特別公演『双面偶像:又又』として上演したが、ちょっと言葉を失っている。

「又又」は「双面偶像」の「双」からとっているが「又」は日本語と同じ「また」の意味。ただ最近のネットスラングでは「またかよ」とあきれる感情をこめて使う。広州GNZ48がまたやってくれた。

上海SNH48も2017/12/08から2か月ほど『向陽的星光』というミュージカルを上演していた。こちら上田康太さんの日本語字幕付き録画がある

今回の広州GNZ48の舞台劇もこのレベルだろうと思って観たら全然違った。

↓筆者が作ってみたハイライトはこちら。アイドルが適当にやってる演劇ではない。

中国語で半分ほど聴き取れた限りのストーリーはこんな感じ(ネタバレあり)。

↓フルバージョンはこちら。

人気女性俳優・夢婕(モンチエ)は仕事に向かう途中自動車事故で死んでしまうが、悔いの残る自分の人生をやり直す時間を最後に与えられる。

子供のころボーイフレンドの沈冰(シェンビン)や仲間とバンドを組んでコンテストに出演、決勝まで進むが、主催者はシェンビンにバンドに残って全員敗退するか、バンドを去って一人だけデビューするかの選択をせまる。シェンビンはモンチエと仲間を裏切って一人だけデビューする方を選んだ。

モンチエは思いを寄せていたシェンビンに裏切られ、女優になった今もマネージャさえ信じられず孤独な心を抱えている。

そんなとき幼いころ自分の幸せを選んで娘を捨ててアメリカに行った母親から三年ぶりに電話がかかってくる。アメリカで恋人の事業が破産して800万ドルを貸してほしいという。モンチエは金を工面するためにマネージャと投資家を探すが無駄に終わる。

一方、仲間を捨ててデビューしたシェンビンはバンドメンバーとの不仲から脱退。その後独力でインターネット企業を立ち上げるが金だけの人間関係に虚しさを抱いている。そのときモンチエが芸能界デビューしていると知る。

彼女が金を工面するため投資家を探し回っていることを知り、子供のころのガールフレンドとそっくりでファンになったと、彼女とマネージャの前でウソをついて800万ドルを渡す。

彼女を裏切った過去を許してもらうためだったが、モンチエは800万ドルを受け取り、利子付きで返すと約束する。しかしシェンビンのことは許さない。

母親を突き放し、シェンビンを突き放し、孤独を選んで女性俳優として名をなした彼女は、実はシェンビンと同じように愛を失った孤独な人生を歩んでいるが、決してシェンビンを許さない。

愛想を尽かしたシェンビンは逆にモンチエに怒りをぶつけ立ち去ろうとする。モンチエはシェンビンに向かって言う。

「私たち、まだあの頃に戻れる?」

(ここから始まる走馬灯の舞台演出が素晴らしすぎるので必見)

しかしシェンビンは彼女のもとを去っていく。

二人の話を立ち聞きしていたモンチエのマネージャーは、彼女を愛するがゆえに彼女の活躍に全力を尽くしていた。

しかし彼女が本当に愛しているのはシェンビンで、自分自身が彼女のデビュー以来十年間ただの「スペア」だったと知る。マネージャーもモンチエを見捨てて立ち去ろうとするが、十年前芸能活動を始めたころを思いモンチエはマネージャーに尋ねる。

「私たち、まだあの頃に戻れる?」

しかし無言で彼女のもとを去る。

一人取り残されたモンチエは自分が周囲の人々だけでなく、結果的に自分自身も傷つけていると知り、絶望の淵に沈む。

(ここでモンチエが自分のもとから去っていく人々に「イヤ!」と叫ぶ場面があるが、その声が大人のモンチエを演じるハナちゃん(謝蕾蕾)の声ではなく、舞台の冒頭で子供時代のモンチエを演じるあおい(陳俊宏)の叫び声に差し替えられている)

すべてを失った彼女のもとを800万ドルを返しに母親が訪ねてくる。キューバに出発する前に最後に娘に会いに来きたという。夫の会社がキューバの企業に買収されて損失を免れたのだ。

その金で家を買って幸せに暮らそうと話すが、モンチエは拒絶する。母親は自分を捨てて家を出たときのように、また自分だけの幸せを考えていると。

自分が母親を必要としているとき、いつもそばにいなかった。私も愛が欲しかった。私は孤独が怖かった。でもいま全世界には私一人しかいない。

お母さんも帰って!みんな帰って!自分の幸せだけ追い求めればいいでしょ!あなたたちなんて要らない!

しかし母親はモンチエに心から謝罪し、ようやくモンチエは心を開いて母親を許す。

「お母さん、まだあの頃に戻れる?」

「戻れるわよ。きっと戻れる。お母さんが戻れると言えばきっと戻れる。私のモンチエ、お母さんがそばにいてあげるわ」

「お母さん!」

ようやく母親と和解できた後、モンチエは仕事に向かう自動車事故で死んでしまうが、死の淵から突然、自分が「あの頃」に戻っているのに気づく。

子供の頃の自分が、ギタリストだったシェンビンと言い争いをしている。その子供の頃の自分にモンチエは歩み寄り、誰もあなたを愛してないわけじゃない。お母さんもあなたが要らなくなったわけじゃないと優しく話しかける。

「怖がらないで、シェンビンに言うの。『ごめんなさい!私、あなたの考えを尊重しなかった。私、わがまますぎた。他の友だちと仲良くしてもいいから』」

その言葉どおりに十年前のモンチエがシェンビンに語りかける。「私はあなたを失いたくない。だから私のことを許して」。

シェンビンは彼女に答える。「僕もあやまらなきゃいけない。僕は短気だからいつも口げんかしてしまう。これからはこの性格を直すよ。僕らずっと親友だよね!」

バンド仲間のもとに戻っていく。あのコンテストの日だ。

そして主催者がシェンビンをデビューさせるために一人だけ連れて行こうとするが、シェンビンはハッキリと断る。

「僕には自分のバンドがあるんだ!」

以上、ざっくりとストーリーをご紹介した。このあとエンディングで広州GNZ48オリジナル曲『I Know』をキャスト全員で歌うが、主役モンチエを演じたハナちゃん(謝蕾蕾)が本当に涙を流している。

全体のプロットは説明するまでもなく『夏への扉』から『時をかける少女』まで、よくあるタイムスリップものだ。

SFのルールとして主人公は過去を変えてはいけないが、この脚本では不幸な平行世界のモンチエはすでに死んだ後、過去に戻って不幸になる前の自分の未来を変える。

その結果未来のモンチエは自動車事故で死なずにすむはずで、過去を変えたモンチエ自身はその幸福な人生を生きることはできない。

大人のモンチエが変えたのは自分自身の人生ではなく、ある意味、自分を犠牲にして自分と似た誰かの人生を幸福にしたことになる。そう考えるととても悲しい物語だ。

メンバーの演技、とくにハナちゃん(謝蕾蕾)と大人のシェンビン役のライオン(曾艾佳)の演技が出色。

舞台演出も上記の走馬灯の場面は照明も含めてトリハダもの。途中に『双面偶像』公演の楽曲がストーリーに合うように挿入されているのも素晴らしい。

ちょっとした特別公演だろうと油断して観始めたところ、不意をつかれて号泣してしまいました(汗)。