AKB48 Team TPのネーミングが「一つの中国」の安心を与えた可能性

「AKB48 Team SH」「AKB48 Team TP」、このネーミングで中国のAKB48ファンは安心したかもしれない。日本のAKB48運営会社が台北を中国の一部と認めたと思われても仕方ないからだ。

AKB48運営会社であるAKSに全くその意図はなくても、中国大陸の文脈で「AKB48 Team TP」は「政治的に正確」だと受け取られてしまう。中国で「政治的に正確」とは中国政府の主張どおりということを示す。

例えば中国5ちゃんねる掲示板のこちらのスレッドの「zz正確了?」というタイトルは「政治的に正確になった?」という意味だ。

AKSは意図せず両岸問題に足を踏み込んでしまった。

こちらのニュース『AKB48運営会社が「TPE48」の契約解消 「AKB48 Team TP」発足へ』(オリコンニュース 2018/07/30 13:00)にあるように、AKB48運営会社のAKSは資金繰りに窮した旧TPE48運営会社とライセンス契約を解約、新たに現地法人「阿克斯娛樂有限公司」を設立し「AKB48 Team TP」と改称して再出発する。「阿克斯(A Ke Si)」は「AKS」からとった社名だろう。

AKB48の海外姉妹グループのうち、「JKT48」「BNK48」など都市名を示す英字3文字と「48」の命名規則から外れたのは、2018/07/24に一期生メンバーがお披露目された中国上海の「AKB48 Team SH」と、今回の台北「AKB48 Team TP」だけである。

今後中国の各都市へ展開される姉妹グループも「AKB48 Team XX」という名前になるため、中華圏の海外姉妹グループだけがAKB48直下のチーム制で「AKB48 Team XX」と命名されることになる。

その結果、AKSは意図せずして中国のAKB48ファンに台北が中国の一部だと主張する口実を与えてしまった。

このことは上海の「AKB48 Team SH」を応援する中国のAKB48ファンが、AKSと2016年に決裂した上海SNH48に対して「契約上の正当性」、つまりSNH48はすでにAKSとの契約を解除しており「AKB48 Team SH」こそが正式な姉妹グループだという正当性だけでなく、「政治的な正当性」、つまり「AKB48 Team SH」は「一つの中国」を日本のAKSが追認した証拠であり、SNH48よりも中国政府の主張を強く支持していると主張する口実を与えてしまった。

ただでさえ中国の一部のAKB48ファンは上海「AKB48 Team SH」の成立に勢いづいて過激化し、「SNH48」をより強く罵倒するようになったのに、「AKB48 Team TP」というネーミングでさらに一部の中国のAKB48ファンとSNH48ファンの対立は激化するだろう。

この無神経さこそがAKSの中華圏ビジネスが順調ではない理由の一つだが、「AKB48 Team TP」のネーミングを見るとまだその点が理解されていないようだ。

なお台湾のエンタメ市場はすでに縮小傾向で、台湾の有名タレントは軒並み中国大陸で稼がざるをえなくなっている。林心如、徐新娣、蔡康永などを見れば分かる。

おそらく「AKB48 Team TP」も台湾内の主要メディアを掌握したとしても、台湾市場だけで採算はとれず、早晩中国大陸に進出せざるを得なくなる。

そうすると「一つの中国」をビジネスで実践する結果になり、さらに政治的な問題のぬかるみにはまるだろう。