AKB48中国再上陸のAKB48 Team SH、すでにアクセル踏みすぎ

中国のベンチャー企業は投資をつなぎとめるために、一定規模になるまではとにかくスピード勝負だ。

AKB48運営会社が中国再上陸で結成したAKB48 Team SHも、社長の沈志君こそNTTドコモ、電通、上海東方メディアグループの現地合弁会社から送り込まれているが、運営会社自体は中国の投資家から資金を受けている。このあたりの資本関係は別記事にまとめてあるとおり。

SNH48グループはAKB48と決裂して以降、つまり、姉妹グループの北京BEJ48、広州GNZ48を結成して以降、猛スピードで成長し、いまやユニコーン(企業評価額10億ドル以上のベンチャー企業)に成長している。

一方、設立されたばかりのAKB48 Team SH運営会社は中小企業だ。

中小企業であっても投資家から資金を受けている限り、日本のアイドルグループのように物販売上などの収入で、自己資金だけでほそぼそやることは許されない。

すでにSNH48とその姉妹グループの寡占状態にある中国の日本系アイドルグループ市場で、また中国版『Produce101(創造101)』がSNH48グループとテレビ、ドラマ、映画出演のチャンスをすでに奪い合っている厳しい市場で、AKB48 Team SHはとにかく猛スピードで成長して投資家からの投資を増やす必要がある。

前置きが長くなったが、AKB48 Team SHはまだ初公演に向けたレッスン中で、劇場公演をふくめ全く活動を始めていないが、中国ツイッター(新浪微博)で各メンバーがさっそく「カップリング」ツイートを始めている。

メンバーAがメンバーBとの仲の良さを、メンバーBもメンバーAとの仲の良さをツイートすることで、ファンに「百合要素」を提供するという、女性アイドルグループでは定番のマーケティング手法だ。

「カップリング」マーケティング自体は間違っていないが、メンバーがまだファンの前でパフォーマンスする姿も見せていないのに、ファン主導ではなく、運営会社主導でカップリングしてしまうところに、AKB48 Team SH運営会社の「あせり」が見える。

当然だが、カップリングはファンが決めるものだ。ふだんの劇場公演やSNSから、「あのメンバーとあのメンバーは気が合ってて仲良さそう」というファンの声が自然に集まって決まるのがカップリングだ。

AKB48 Team SH運営がこんな基本的な間違いをわざとかうっかりか、やらかしてしまうのは、上記の理由だ。とにかく投資家に投資回収の実現性を見せつつ、スピーディーに企業規模を拡大しないと、中国に無数にある日本系アイドルグループのように永遠の中小企業になってしまう。

そしてAKB48 Team SH運営会社は猛烈な勢いで、各メンバーのいわゆる「キョンシーファン」を購入している。

ダミーアカウントのフォロワーをお金で買いまくって、ほとんどのメンバーのフォロワーがすでに3万に達しつつある。これはSNH48グループもやっていることだが増加スピードが露骨すぎる。

育成系アイドルは文字どおりファンがアイドルを育成するから育成系なのであって、運営会社主導でカップリングもキョンシーファンも含めてメンバーを急激に「育成」するアイドルは育成系と言えない。

SNH48を「野生のニワトリ集団」とディスるAKB48 Team SHのファンは、SNH48グループのファンよりもさらに48系の原理原則に忠実なファンだ。

まだ結成したばかりの予熱でAKB48 Team SHファンはしばらくは運営会社に素直についていくし、SNH48への敵対心から運営会社を批判しづらい立場にある。

このことはアイドルグループ運営経験のないAKB48 Team SH運営会社が、ファンの声を聞かずに暴走するリスクを高める。というか、すでに高めている。

SNH48運営会社は投資家からのプレッシャーと、ファンからの猛烈な批判の間でうまく経営を微調整することで、ようやくユニコーンになるまでこぎつけた。AKB48運営会社から独立してフリーハンドを得たからこそ、中国特有の環境に合わせることができたからだ。

以上、AKB48 Team SHがすでに悪い意味で「中国らしい」動きを見せているのが、短期的にどういう結果につながるか、引き続き要注目。