上海SNH48第五回総選挙TOP32曲『終無艶』が1970年代の香港を回想する歌詞だった件

上海SNH48グループ第五回総選挙TOP32曲『終無艶』が意外に名曲な件、じつは1970年代の香港を描いている歌詞も異常に良いらしい。中国5ちゃんねる某掲示板のこちらのスレッド参照

この曲のコーラスワークが1970年代のAORっぽく聴こえるのは偶然ではなかったようだ。歌詞の内容は日本人の思い描く香港に似ていて共感できると思う。

2018/10/22追記:この『終無艶』は香港人歌手ケイ・ツェ(謝安琪)が歌った同じ発音の題名の曲『鐘無艶』へのオマージュとのこと。しかも鐘無艶は中国古代の四大醜女の一人の伝説にまでさかのぼり、そこから始まってはるか遠く現代になってテレビドラマで現代風に翻案されたり、長い長い歴史を持つ引用とのこと。中国ツイッターでコメントをくれた現地ファンに感謝。勉強になりました。

以下、このスレッドを要約してご紹介。各メンバー担当部分の歌詞と、その背景にある香港の記憶。

・・・が、その前に現地の香港ポップスファンの勘違いをさらしておく。この歌詞はジェイ・チョウ(周傑倫)に詞を提供している黃俊郎によるものだ。

ところがSNH48の名曲に多くの歌詞を書いている甘世佳のものと勘違いし、「今度は香港ポップスのパクリか!」とディスったらしい。

下図の中国ツイッター(新浪微博)にある「妮妮的星星棒」「港樂翻唱記」「霍尔乐德」「一只天使蓝」「404-查无此狗」「代价高仍爱你_」などのアカウントが、よく調べもせず甘世佳を「厚顔無恥!」とディスっている。勘違いもはなはだしい。

ジェイ・チョウ(周傑倫)ファンの皆さん、黄俊郎が侮辱されたも同然なのでいっしょに怒りましょう(汗)。

本題にもどって、SNH48第五回総選挙TOP32楽曲『終無艶』の歌詞の解説。

SNH48二期生スリー(孫芮)「码头的钟楼也已拆迁 山坡大楼取代蝴蝶翩翩」

「港の時計台は壊されてしまい 蝶の舞う美しい山の斜面は高層マンションに取って代わった」

この歌詞にある鐘楼(钟楼)はエディンバラ広場に1958年に建てられたが、2006年に歌詞にあるように取り壊されたらしい。

また「山坡」(山の斜面)とある「山」はヴィクトリア・ピークのこと。今は超高級マンションの高層ビルで埋め尽くされている山の斜面も、昔は自然の残る山だったということ。

広州GNZ48 Kimmy(鄭丹妮)上海SNH48ランラン(宋昕冉)「回忆像走进旺角里的旧戏院 早无播放却想起了每部影片】」

「思い出はまるでモンコックの古びた映画館に入っていくよう とっくに上映されなくなったが まだ映画の一本一本を思い出せる」

香港随一の繁華街モンコックの古い映画館は、次々と現代的なショッピングモールに変わってしまった。日本人でもブルース・リー(李小龍)時代の古びた映画館という風情は想像できる。

↓上半分が昔の古びた映画館の様子。下半分が同じ場所の今。

MV予告編の中で鄭丹妮が持っている「Sunbeam Theater(新光劇院)」という映画館のチケット。

上海SNH48炭酸(張丹三)広州GNZ48ミッフィー(劉力菲)「地铁人群里报纸换成了手机 餐厅不再有铁锅翻炒的声音」

「地下鉄の人の群れは新聞をスマホに持ち替え、食堂ではもう鉄鍋で炒める音は聴こえない」

↓こういう食堂の奥で鉄鍋をふるって炒め物をするような風情は、少しずつ香港から消えている。

上海SNH48ルオルオ(徐子軒)、スイスイ(楊冰怡)「电车优雅地前行 茶楼不再墙红瓦绿 老城区的石板路仍旧如此风情」

「トラムは優雅に走り 茶楼にはもう赤壁と緑瓦はないが 古い街区の石畳は昔のままの風情」

昔の茶楼は壁が赤く、その上の瓦が緑という様式。今でも石畳の通りは残っている。

瀋陽SHY48ルールー(韓家樂)上海SNH48愛ちゃん(易嘉愛)「老士多渐渐移到了城市边缘 小弄堂流动的雪糕车在渔村岸边生锈了多年」

「古い商店は街はずれに押しやられ アイスクリームの移動販売車は漁村の岸辺で何年も錆びついている」

「士多」は英語の「store」の音訳で下図のような小さな商店のことらしい。

アイスクリームの移動販売車は独特の音楽を流しながらやって来て、それが聴こえると母親にねだってアイスを買ってもらう。そんな風景があったとのこと。日本人でも似たような記憶があるのでは?

上海SNH48ナナちゃん(萬麗娜)チャーチャー(張雨鑫)「回忆像卡在机子里的旧胶卷 那就让它永远停留在那一天」
上海SNH48シャンシャン(姜杉)北京BEJ48ふーこちゃん(馮思佳)「狭街的气味少了好几种点心 窄巷过去的吆喝也变得寂静」

「思い出はまるでカメラにはさまった古いフイルムのよう なら永遠にあの日の記憶を留めておこう」「狭い路地の軽食の匂いは少なくなり 大声の物売りも静まってしまった」

上海SNH48アキちゃん(劉增艶)Yoko(張怡)ニモ(費沁源)「中环的书局纸箱里多了新油漆 修鞋老师傅正在烦恼早茶去哪饮」

「セントラルプラザの書店のダンボール箱は新しいペンキに変わり 靴の修理屋は朝のヤムチャをどこで飲もうかと悩んでいる」

昔は書店が多くあったセントラルプラザはこぎれいな店舗に変わってしまい、ヤムチャの店舗もファーストフード店に変わってしまった。

靴の修理屋のおじさんは、お気に入りのヤムチャ屋さんがなくなり、どこで朝食をとろうかと悩む。

以上、今は失われつつある香港の往時を回想する歌詞になっている。

タイトルの「終無艷」が簡体字ではなく、繁体字で書かれているのも香港を歌った曲だからだろう。