アイドルの肖像権、AKB48 Team SHは中国式を受け入れず日本式の厳格な管理を徹底

*)この記事は当初「アイドルの肖像権、AKB48 Team SHは中国式を受け入れるか、日本式を強制するか」というタイトルだったが日本式を強制する方針が判明したので変更した。

SNH48を結成当時からフォローして6年にして、初めて知って驚いたことがあるのでご紹介。

中国5ちゃんねるのSNH48関連掲示板にこういう書き込みがあった。

「お隣り(AKB48 Team SHのこと)の応援会が、空港でのメンバー出迎えのときに代理で撮影してもらった写真を売買していいのか?なんていう議論が始まってるけど、最近は新しいファンが多いらしいね」

どういうことかというと、空港に到着したタレントの写真撮影をアルバイトにしている人たち(現地スラングで「代拍」)がいて、タレントのファンや応援会が彼らに代理で撮影を依頼する。

ファンや応援会の人たちは、学校や仕事の都合で空港に行けるとは限らないし、飛行機も定時に到着するとは限らず、下手をすると何時間も待たされるおそれがある。

また、きれいな写真が撮れる高額な機材を持っているとも限らないし、撮影した写真を美しく加工するPhoto Shopのような高額なソフトを持っているとも限らない。

そこで「代拍」はファンの代理で空港でじっとタレントの到着を待って写真を撮り、きれいに加工して、データでファンや応援会に納品し、ファンや応援会は料金を支払う。

こういう仕組みが48系に限らず中国のタレントのファンの間で定着しているらしいのだ。

高画質の美しい写真を買い取ったファンや応援会は、SNS上のいろんな場面でその画像を貼り付けて、自分の好きなタレントをPRするために活用する。

日本人からすると明らかに肖像権違反で、勝手に撮影したタレントの写真を売買するなんてとんでもないと思うが、中国人からすると応援会にとっては、それほどコストのかからない草の根的なプロモーション活動として合理性がある。

現地ではあまりに当然の慣習なので、AKB48 Team SHファンが突然「代拍」の写真売買を疑問視し始めたことに対して、「いやいや中国のAKB48ファンは昔からやってることでしょ、今さら何を言い出すの?」というツッコミが入るわけだ。

さて問題は、AKB48 Team SH運営会社が日本のAKSの指導にしたがって、AKB48 Team SHメンバーの応援会の肖像権侵害を厳格に取り締まるかどうかだろう。

厳格に取り締まれば、中国で当たり前に行われているアイドルの追っかけシステムの一部を否定することになる。AKB48 Team SHファンは自分たちの道徳性を誇れるかもしれないが、SNS上で自分の好きなメンバーをPRする重要な手段を失う。

そしてAKB48 Team SHは今日時点ですでに結論を出していた。現地Team SHファンと運営とのチャット履歴が中国5ちゃんねるの某掲示板にさらされていた。

申し訳ありませんが昨日貼られていたリンクをクリックして中身を見たところ、すでに削除されており内容がありませんでした。

空港での出迎えについては、メンバーにとってカメラの後ろにいるのが誰か全く分かりません。彼女たちはいちばん心のこもった笑顔でファンの皆さんにこたえたいと思っています。

ご意見に感謝いたします。そして今後も私たちは密に注目していきます。

全力でベストなことをやり遂げます。

みなさんの私たちに対する支援に特に感謝します。ありがとうございます。

つまり、空港出迎え時のメンバー撮影は禁止し、今後も無断撮影をチェックし続けるということだ。日本式の厳格な肖像権管理を宣言している。

ただ、特定のファンからの問い合わせに対する回答が、こうしてさっそく掲示板にさらされること自体、ファンは中国式で行動していることを証明してしまっている。

この画像が貼られていたスレッドの意見も割れている。

肖像権を侵害して金儲けする代理撮影という今までのやり方に反対するファン、代理撮影者と熱心なファンをいっしょくたにして、かつ、メンバーの写真は公式の生写真しか許可しない運営側の金儲け主義を批判するファン。

応援会の自主性を運営会社が否定すればするほど、それまで自由にやれていた中国のAKB48ファンのモチベーションは確実に下がる。

じつはこの問題はすでに起こっている。中国の各種動画サイトへの著作権違反アップロードだ。

現地AKB48ファンは今まで日本語字幕を付けてAKB48出演番組やドキュメンタリーなどを大量に違法アップロードしていたが、最近になって一部の動画がビリビリ動画運営会社によってごっそりブロックされ、ブロックの理由として、権利者AKSからの要求による、というメッセージが表示された。

これに対して現地AKB48は少なからず中国5ちゃんねるのAKB48関連掲示板に不満を書き込んでおり、その後、一部の動画はブロックが解除されたようだ。

SNH48グループはAKB48と決裂後、完全に中国ルールで運営されているため、空港の出迎え写真の売買や、メンバー出演の番組やイベント動画のアップロードは黙認されており、それによって応援会はSNS上でメンバーの露出を上げる手段を失わずにすんでいる。

それでもSNH48各メンバーの応援会は事あるごとに運営会社批判を展開する。

AKB48 Team SH運営は中国式を拒否して、日本式の厳格な著作権管理をするようだ。

ダフ屋(中国語で「黄牛」)の規制をする可能性もある。

中国ではあらゆるチケット販売にダフ屋が公然と存在し、定価で販売されるチケットを市場の需給バランスで決まる適正価格で転売する役割を果たしている。

需要の高いチケットを定価で購入し、より高く販売することで利益を得ると同時に、高くてもいいから手に入れたいという人が入手できるチャンスを与える。

逆に定価で購入したが需要が低かった場合、ダフ屋が安い価格で転売して損失をかぶるかわりに、安くなった分、そのイベントの入場者が増えることになる。

どちらにしても主催者側は定価で販売でき、ダフ屋が介入する分、確実に一定量を売り切ることができるので、じつは主催者側にもメリットがある。中国ではダフ屋は重要な役割を果たしている。

しかしTeam SH運営はダフ屋も締め出すはずだ。生写真の高額転売も規制するかもしれない。

さもないと肖像権は公式生写真で独占するが、チケットや生写真販売では仲介者を許すとして、Team SH運営はダブルスタンダードを批判されることになる。

また、日本式を押し通せば、一部のファンの不満が少しずつたまっていくのは確実で、Team SH運営はそうしたファンが離れていっても日本式を押し通す必要がある。

さもないと、ルールが厳しかった初期のファンと、ルールがゆるくなってから入ってきたファンを差別することになる。

すでにTeam SH運営は日本式を押し通すしかなくなっている。これで中国人のファンがどこまで付いてくるか、非常に興味深い。