AKB48 Team SHが2018/12/27にツイートした2つの公式文書

AKB48運営会社はまだ中国事情をよく分かっていないかもしれない。

AKB48中国再上陸のAKB48 Team SHの中国ツイッター(新浪微博)公式アカウントが、2018/12/27に連続で興味深いツイートをした。

こちらの2018/12/27 13:30のツイートと、こちらの2018/12/27 19:05のツイートだ。

1つ目のツイートはSNH48運営が一度もやったことがないメンバーの正式な退団発表、2つ目はネット上のデマに対する弁護士と連名の抗議文だ。

1つ目の正式な退団発表は、Team SH一期生としてお披露目された23名のうち、まったく活動開始していなかった2名についてだ。

SNH48はAKB48の公式姉妹グループだった頃、二期生・丁紫妍の卒業公演以降、退団したメンバーが多数いるのに一度も「正式な退団発表」というものをしたことがない。

今回のTeam SH運営のツイートによればTeam SHの2人の退団は健康上の理由であり、本人と何度も話し合いの上決めたとある。

ただ、この発表は遅すぎた。

実は一期生23人のうち1名が選抜に入れず研究生にとどまることはすでに発表されている。にもかかわらず、2人のメンバーが全く活動していないという、もっと重要な事実について何の説明もなかったのだ。

ずっと説明してこなかったのには何か理由があるに違いない、と疑われてしまう。

ところでSNH48と今回のAKB48 Team SHの運営の大きな違いに、中国ツイッターの個人アカウントを名前だけ変えてそのまま公式アカウントに使っている点がある。

SNH48がまだAKB48の公式姉妹グループだった頃は、メンバーの入団後、個人アカウントを凍結させ、公式アカウントを新たに開設、公式アカウントの方は運営スタッフもログインできる状態にしている。

SNH48は現在もこの方式をつづけており、ひとことで言うと「性悪説」だ。

一方Team SHのこの2人はもとも個人アカウントで、公式アカウントに変えたものを、今回の退団でふたたび個人アカウントに戻すことになった。

しかし、である。

ふつうに考えて、個人アカウントに戻したアカウントで何をツイートしても良いということにはならないだろう。

極端な話、「彼氏ができました」とツイートすればTeam SHのイメージを壊す。運営はおそらくこの2人の個人アカウントに注意し続ける必要がある。

なお2人は「正式な退団発表」以降まだツイートしておらず、他のツイートに「いいね」をしただけだ。本当に2人が「個人的な」ツイートを始めるかに注目したい。

もう一つのツイートのネット上のデマに対する抗議文は、法律事務所の弁護士と連名になっている。

内容をざっと要約すると、デマを流しているアカウントについて必要な証拠を集め、そのアカウントの身分を調査し、証拠を保全した後にネット情報やニュースを監督する当局に通報し、さらに公安の刑事事件として立件する手続きを開始し、民事、行政、刑事責任を追求することを、弁護士にすでに依頼した、というものだ。

重要なのは「依頼した」と言っているだけで、じっさいに弁護士が調査を進めているとも、証拠をつかんだとも書かれていない点だ。

それどころか、いったい何を指してデマと言っているのかさえ書かれていない。

要するに、純然たる警告である。

そもそも無名のアイドルの名誉毀損くらいで中国の公安は動かない。公安はそんなにヒマではない。つまり行政罰も刑事罰もありえない。

ということは運営会社がデマを流した当事者を相手に民事訴訟で賠償請求するしかない。

SNH48運営会社は勝手に退団したメンバーを相手どって、過去に何度か民事訴訟を起こしており、元メンバーに賠償金を支払う判決を得て勝訴したことがある。(その後じっさいに支払われたかどうかは不明だが)

SNH48運営が元メンバーを相手に賠償請求する民事訴訟を起こせるのは、タレントマネジメント契約という法的効力のある文書があるからだ。

だからこそ上海市の人民法廷は契約書にもとづいて元メンバーの責任範囲を特定し、賠償額を決めることができる。

一方、デマに対する賠償請求の民事訴訟では、Team SH運営がデマであるという法的効力のある証拠を集める必要がある。

しかしデマというのは多くの人に広まるから害になるのであって、仮に提訴しても「デマの始まりはこの人物だ」という特定そのものの恣意性を疑われる。

つまりもともと訴訟など起こせないと分かっていて、Team SH運営はこの抗議文を出しているわけで、純粋な警告である。

ただ、中国の芸能界では醜聞を流されたタレントの所属事務所がこの種の警告を出すのはお決まりのことで、出しても効果がないことは誰もが分かっている。

おそらくこの抗議文を作ったTeam SH運営の中国人スタッフも、こんなものを出しても効果がないことは分かっている。

なのでSNH48運営会社だけでなく、中国の大物タレントの所属事務所も含め、こういう抗議文を出すときにいちいち弁護士と連名にする手間をかけず、事務所の印鑑(公章)だけで出すのが普通だ。

中国でまだ無名のTeam SHがデマを打ち消すために、わざわざ弁護士と連名にした抗議文を出すと、現地では逆に「よっぽどの事情があるんだな」と痛くもない腹を探られてしまう。

だがTeam SH運営の中国人スタッフは弁護士と連名の抗議文を出さざるを得なかった。

この2つのツイートから分かることがある。

現地事情をよく分かっていない日本側が中国側に無理やり言うことを聞かせているということだ。

日本ではもちろんAKB48はビッグネームだが、中国では残念ながらSNH48でさえまだマイナーな存在で、一般人にはSNH48とAKB48 Team SHの区別がつかない。

そんな無名のタレントが大げさな抗議文を出すと「やぶ蛇」だということが日本側運営には分かっていない。

また、正式な退団発表というやり方も、日本基準のていねいすぎる対応だ。

もちろん現地AKB48ファンはこの対応を「さすが本部AKB48!」と絶賛するが、ふつうの中国人にとってはキレイ事すぎる。スキャンダルが当たり前の芸能界で、キレイ事すぎるタレントは残念ながら売れない。

SNH48の失敗から、AKB48運営が今回は中国側を完全にコントロールしようとしているのはよく理解できる。

しかし中国特有の事情をよく理解しないまま日本基準を押し付けると、逆効果になりかねない。かといってコントロールをゆるめればSNH48のように独立されてしまう。

今後の日本側運営の手綱さばきに注目したい。