習近平「中台統一」演説でAKB48 Team SH、Team TPの政治的リスクが明らかに

やや気が重いが、2019/01/02習近平主席が「台湾同胞に告げる書」40周年記念演説で、台湾を「一国二制度」で統一する具体案を検討すると宣言した。

この宣言をうけて、AKB運営会社(AKS)がいかに深刻な政治的リスク(地政学的リスク)を負っているか、あらためて確認しておく。

『中国主席、台湾統一へ武力放棄せず=「一国二制度」の具体案検討』(2019/01/02 16:20 時事ドットコム)

習近平の演説について、中国ツイッターに分かりやすいツイートが出まわっている。

・祖国統一は必須でもあり、必然でもある。
・広大な台湾同胞はすべて中華民族の一部で、正々堂々と中国人になる。
・台湾問題は民族が弱く混乱していたために起こったので、民族の復興にしたがって必ず終結する!
・制度の違いは、統一の障害にならない。さらに分裂の言い訳にもならない。
・両岸の同胞は一つの家族で、両岸のことは両岸同胞の家族のなかのことで、当然家族で相談することだ。
・統一は歴史の大勢で、正しい道だ。「台湾独立」は歴史の逆行で、袋小路だ。
・中国人は中国人を攻撃しない。
・中国人は中国人を助ける。
・中国人のことは中国人で決める。

これに対して台湾の蔡英文総統は当たり前だが断固拒否の談話を発表している。

中国側は予想以上にハイペースで「祖国統一」を具体化するかもしれない。

これは、AKB48 Team SH、Team TP両方の致命傷になる。

AKB48 Team SHは中国のネット生放送で「中国の女性アイドルグループといえばAKB48 Team SHと言われるようになりたいです」と話していた。

中国人民である彼女が「中国」と言えば、彼女個人の考えにかかわらず台湾が含まれる。

「台湾は含まれません」と言えば、AKB48 Team SHはそこでおしまいだ。

TWICEが「ツウィ謝罪事件」のために中国で活動できなくなったのと同じである。

Team SHにとってTeam TPは、あくまで同じ国の姉妹グループである。

ご承知のようにAKSは以前、SNH48、TPE48という名前で中華圏に姉妹グループを展開しようとしていた。

JKT48、BNK48など「海外姉妹グループはその国の主要都市名からつける」というルールに従えば、TPE48という名前をつけることで、AKSは台湾独立を支持していたことになる。

AKSがそう考えていなくても中国から見ればそうなる。反論してもムダだ。

そして今回、AKSはTeam SH、Team TPと名前を変えた。

名前を変えたのは、SNH48が勝手に独立し、そしてTPE48運営会社が破産したので、仕方なく変えたのではないと考えるべきだろう。

もし仕方なく変えたのなら、SNH48の名前は変えるしかないとしても、TPE48をAKB48 Team TPに変える理由はない。

AKSはTPE48運営が破綻したタイミングで、海外姉妹グループのネーミング・ルールをあえて破って、Team SH、Team TPと名前を変えたと考えるのが自然だ。

この改名にはAKSの2つの意図があると考えられる。

(1) SNH48が勝手に独立した「失敗」をくり返さないように、この2グループ(2チーム)は日本がAKB48のチームとして直接コントロールするという宣言。

(2) 台湾が独立国かどうかをあいまいにするねらい。

仮に(2)のねらいが本当にあったとすれば、すでに失敗している。

Team SH、Team TPというネーミングは、中国から見れば「日本側は台湾を中国の一部と認めている」としか読めない。

台湾から見れば「なぜTPE48の名前を残してくれなかったのか。これでは上海と同列ではないか」としか読めない。

AKSが海外姉妹グループのネーミング・ルールをあえて破った時点で、中華圏でTeam SH、Team TPというネーミングは台湾独立の否定と思われても反論できない。

AKS自身がどう考えているかにかかわらず、習近平の中台統一政策を支持したことになる。

まとめると、SNH48、TPE48と名付けていたころは、AKSは台湾独立派と思われても仕方なかった。

今回、Team SH、Team TPと名前を変えたことで、AKSは中台統一派と思われても仕方ない。

AKB48 Team SH、Team TPがこれから活動を広げていけば、政治色のあるイベントに参加することは避けられない。とくにTeam SHはそうなる。

そのときTeam SHは台湾独立をほのめかすだけでおしまいになり、Team TPは台湾が中国の一部だとほのめかすだけで支持を失う。

AKSがいかに高い政治的リスクを負っているかが分かる。

では(1)の意図、つまり「今回は日本から直接コントロールしますよ」という意図だけがあると考えれば、AKSは政治的リスクから逃れられるだろうか。

残念ながら、逃れられない。

日本から直接コントロールすると思われた瞬間、AKS自身が政治的リスクを負うことになる。

AKSはこちらの線で行こうとしているように見える。

Team SHが正式にデビューする前、ご承知のように上海で中国側運営、日本側運営の代表と、江田五月氏を入れて懇談している。

親中派の政治家を同席させることで、AKSがTeam SHを日中友好の架け橋にしようとしていることは明らかだ。

Team SHのデビューシングル『LOVE TRIP』MVが日本で撮影されたのも同じ意図だと思われても仕方ない。

つまり、Team SHはすでに日中の外交関係の一部、つまり政治的背景に位置づけられてしまっている。(もしAKSにその意図がなかったのなら大失敗だ)

この場合、AKSはTeam TPの今後のあつかいに苦しむことになる。

たとえば日本、中国、台湾が民間レベルで協力する必要があるような出来事があったとする。例えば2020年の東京オリンピックだ。

東京オリンピックを盛り上げるために、AKSが姉妹グループの中から「中華圏代表」の応援団を作るとしたら、Team SHか、Team TPか、それとも両方か。

すでにお分かりのように、この3つの選択肢のどれも取れない。

以前のSNH48・TPE48の組み合わせだろうと、今のTeam SH・Team TPの組み合わせだろうと、AKSは中国、台湾、日本の外交関係という政治的リスクから逃げられる安全な場所がない。

では、SNH48はどうなのか。

SNH48はAKB48から独立したおかげで、政治的リスクから完全に自由になった。

政治的リスクを避けてビジネスに集中できるように、AKB48とわざと縁を切ったのだとしたら、SNH48運営会社はAKSよりも頭が良かったことになる。

以上のように、年明け早々、習近平の台湾統一演説で、AKSが深刻な政治的リスクをかかえたままであることがハッキリした。

AKSがこのリスクから逃れる方法は一つしかない。ふたたびTeam SHが独立して日本側と手を切ることだ。

そうすればAKSはTeam TPの運営に専念できる。