上海SNH48四期生 天草(王曉佳)が香港の引き渡し条例反対運動について、中国ツイッター(新浪微博)でめずらしく踏み込んだツイートをしていた。
このブログがどうしてもアイドルオタク向けだと誤解されてしまうので、方向性をはっきりさせるためにもこういうネタは積極的に取り上げていきたい。
最初におさえておくべきことは、彼女は強烈な二次元ヲタ属性で、コスプレイヤーであり、SNH48の中でも指折りのヘビーゲーマーであり、アニメ、漫画、ゲームのファンでもある。普段こういう政治的発言はまったくしない。
このように「林海听涛」というアカウントのツイートに、彼女は反論コメントをつけている。
「林海听涛」氏の趣旨は、香港の過激な抗議活動に反対するとき、つまり中国国内で共産党中央宣伝機関のツイートをリツイートするキャンペーンをやっても意味がない、というものだ。
先日からここで触れているように、SNH48メンバーも、AKB48 Team SHメンバーも「香港警察を支持する」「香港は永遠に中国の一部だ」という宣伝機関のツイートをリツイートして支持表明している。
共産党を支持するということは、いざとなれば深センに待機中の人民解放軍が香港に乗り込んで、過激な反対運動の鎮圧に向かうことに、少なくとも反対しない、という意思表示になる。(もちろん中国の一般市民は武力鎮圧を望んでいないはずだが)
そして「林海听涛」は国外のYouTubeなどに予算を投じて、国外の視聴者がGD(香港独立派の意味)、TD(台湾独立派の意味)の動画より先に、共産党宣伝機関の動画を目にするようにすべきだと言っている。
国内で「俺ら中国はすごいんだ」と言っていても意味がない。中国人民は宣伝機関に言われるまでもなく、香港が中国の一部だと分かっているし、五星紅旗の旗手という自覚がある。
それより、国外に対して中国政府の正当性を宣伝するのが、共産党が本来やるべき仕事ではないのか、というのがこの「林海听涛」氏の主張だ。
それに対する天草(王曉佳)の反論は、「私はやっぱり意味があると思う!」というものだ。
そうやって初めて、より多くの人がこの事の状況について理解しようと思うし、自分がどういう立場に立つべきかも理解できる。
各メディアはリツイートを求めるツイートをする他にも、毎日絶えず関連情報を更新している。リツイートすることで検索ホットワードランキングに上がって初めて、より多くの人の目にとまる。個人的にはそう思う。
こう反論した彼女の意図をくむと、おそらくこうだろう。
彼女と同じくらいの年齢の若者は、あまり社会問題に関心をもたず、普段の生活の楽しみや、自分の趣味の世界に生きるようになっている。
そういう政治的な問題に関心がない若者が、毎日使っている中国ツイッターアプリのホットワードで、芸能界のスキャンダルや、面白小ネタばかり並んでいる中で、「私たちは五星紅旗の旗手だ」などのキーワードをきっかけに関心を持つのは良いことだ。
たぶん天草(王曉佳)はこういうことを言いたいんだろうと思う。
仮に日本の48系メンバーが、例えば今の韓国との関係について、「政権が対外的な情報発信だけでなく、日本国内の若者にも響くようなキャンペーンをするのは意味がある」と発言すれば、それだけで「政治アイドル」のレッテルと貼られるはずだ。
中国では同じような発言をしても「政治アイドル」扱いされない点が、そもそも日本と中国のアイドル業界の基本的な政治的温度差だということを、日本の48系ファンは理解すべきだろう。
たしかに定例行事としての「愛国ポーズ」は中国芸能界で活動をつづけるための「ポーズ」に過ぎない。
しかし、香港独立派や台湾独立派のように、中国のアイデンティティそのものが脅かされるような問題になれば、「愛国」は真剣に議論するに値する問題に変わる。
この政治的な空気感は、たぶん多くの中国の若者にとってそれほど違和感はないが、日本の完全に政治的アパシーの若者にとっては、かなり違和感があるのではないか。