中国ネット三大企業BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)の一角であるテンセント(騰訊)の子会社、テンセント・ミュージックが、AKB48の全楽曲の中国国内版権を購入、傘下の音楽配信サービスで2019/05/01から配信するとのこと。
記事の画面キャプチャは縦長なのでこの記事の最後につける。
テンセント傘下にはQQ音楽、酷狗、酷我など音楽配信サービスが複数あり、すべてで配信開始するらしい。
ただ先日任天堂がテンセントと提携して中国でスイッチを販売するというニュースも、まだテンセントの地元、広東省の許可しか下りておらず、中央への申請が終わっていないフライングの報道だった。
今回のAKB48版権購入のニュースも中国側のフライングの可能性はあるが、いちおう本当だとして以下に書いてみる。
テンセントの音楽部門「テンセントミュージック・エンタテインメント(TME)」は2018/12/12にニューヨーク証券取引所に上場したが、こちらのForbesの日本語訳記事のように中国で音楽配信で収益を上げるのは難しい。
こちらの2018年第4四半期の同社決算についての記事では、同社事業のうちサブスクリプションサービス(音楽配信サービス)の有料会員1人当たり利用月額は、前年同期比1.1%減の約140円とのこと。
そもそも中国では楽曲にお金を払う考え方はあまりなく、事業としてはライブ配信(生放送)の方が圧倒的に有利。
上の記事でもライブ配信事業は月間アクティブユーザ、ユーザ1人あたり利用月額とも音楽配信より伸びているとある。
TMEが購入したAKB48楽曲で利益を上げられるかにかかわらず、日本側は収入を得る。
そもそも中国の48系のファンベースは、K-POPアーティストや現地アイドルグループに比べると微々たるもので、48系が良くも悪くも国民的知名度のある日本とは全く状況が違う。
今回購入した版権でTMEの音楽配信事業が目に見えて売上増になることはありえない。
ではAKB48の日中双方の運営は何がしたかったのか。
筆者の何の根拠もない想像だが、SNH48のように合意内容があいまいなまま楽曲を使われる状態を正したかった可能性がある。
仮にそうだとすると、筆者は中国側は誰も得しないと思う。
まず、SNH48はすでにオリジナル曲が約400曲あり、韓国、台湾、日本の音楽制作会社とも提携関係にあるため、AKB48楽曲なしでも楽曲を作り続けられる。
たしかに本家の楽曲がなくなると既存の48系ファンの受けは悪くなるが、ファンはメンバーについているので事業として致命的ではない。
次に、AKB48 CHINAやAKB48 Team SH運営会社(上海尚越)はAKB48楽曲の正規中国語カバーを、テンセントに正規版権で配信してもらえるので、安心して無断転載や無許可利用を一掃できる。
ただそれで儲かるわけではない。
そして、現地48系ファンは版権管理が厳しくなるため、どこかの時点で二次創作ができなくなる可能性が高い。
今まで日本側は現地ウェブサイトを直接規制できなかったが、今後はテンセントが楽曲の無許可利用動画を削除させることができる。
このように、SNH48に大きなダメージはなく、AKB48中国側運営も機会損失がなくなる程度で、現地ファンは版権の管理強化で全然うれしくない。
日本側運営の一人勝ちな気がする。
現地48系ファンがそれに気づくのはいつだろうか…。
P.S.
このニュースがウソならAKSはすぐ中国ツイッター(新浪微博)で声明文を出すべきだ。