SNH48ユーミー、ダイモン出演映画『バララ・フェアリーズ プリンセス・カメリア』レビュー

SNH48二期生ユーミー(趙粵)主演、一期生ダイモン(戴萌)共演の、小さな女の子向けアニメ『バララ・フェアリーズ』実写劇場版『バララ・フェアリーズ プリンセス・カメリア(巴啦啦小魔仙之魔箭公主)』が、ようやく中国の各種動画サイトで公開された。

これで日本のSNH48ファンもようやく劇場版全編を観られるようになったので、さっそくご紹介。

↓『巴啦啦小魔仙之魔箭公主』

以下、どんどんネタバレするので、ネタバレがイヤな方は先に最後までご覧になってから、以下を読んでほしい。


ちなみにこのブログでは原題の『巴啦啦小魔仙之魔箭公主』という中国語に忠実に『バララ・フェアリーズ マジックアロー・プリンセス』という訳語を当てて来たが、製作者のつけた正式な英語タイトルが『Balala the Fairies – Princess Camellia』らしいので、ここでも『プリンセス・カメリア』にしておく。

ユーミー(趙粵)の劇中での役名は「凱美莉(カイメイリー)」だが、これは英語の「Camellia」の発音に漢字を当てたもので、日本語にすると「椿姫」という意味。

SNH48ファンならきっと損しないので、最後までご覧になることをおすすめする。

最後まで観ると、超低予算のお子様向け映画としては、かなり良心的な作りになっていると個人的には感じた。確かにCGの合成は安物っぽいけれど、少なくとも3D合成の空間的な位置や、ピントのボケ具合による遠近感など、細かい演出はそれほど外していない。

脚本も、ユーミー(趙粵)本人の性格というかスタイルに合うように書かれているし、ダイモン(戴萌)の普段のイメージともかけ離れていない。意外に良心的に書かれている。

前半はSNH48のプロモーションがうるさすぎるけれど、後半になるにしたがって脚本がまともになってくる。なので前半の露骨なSNH48宣伝は適当に流して、後半に重点を置いて観よう。

まず、中国語字幕が読めない方のためにストーリーをざっとご説明する。

魔法の王国ポカポカの次の女王候補であるプリンセス・カメリアは、ポカポカ王国で魔法獣と意思疎通できる能力を身につけ、魔法獣を捕まえて城内でペットとして育てていた。

ところがある日、そのペットの魔法獣たちが突然逃げ出し、人間界へ降りていったため、プリンセス・カメリアはその責任を取るために、人間界に降りて魔法獣たちを探しだして連れ戻そうとする。

ところが、プリンセス・カメリアは、偶然、人間界で大人気の女性アイドルグループSNH48のAkiraというメンバーとそっくりだったため、ちょうどSNH48に夢中だった姉妹、美琪・美雪、そして友だちのベイベイ(貝貝)に、Akiraと間違えられる。

彼女たちも人間界に降りてきた、魔法界の住人・フェアリーで、人間界で彼女たちの保護者役がシャオラン(小藍)。

シャオランは、生のAkira(本当はプリンセス・カメリア)に偶然であったことで、ますますSNH48にハマっていく美琪、美雪、ベイベイたちにうんざり気味で、一人取り残された寂しい気持ちを抱く。

しかしプリンセス・カメリアが人間界に降りてきた事情を知り、美琪、美雪、ベイベイも彼女がSNH48メンバーのAkiraとは別人だと知った後は、同じ魔法界出身のフェアリーとして、彼女が魔法獣を魔法界へ連れもどす手助けをするようになる。

人間界で暴れて、ついにはSNH48星夢劇院の公演の舞台を邪魔しに来た魔法獣を、プリンセス・カメリアとシャオランは協力して捕まえることに成功。

これでプリンセス・カメリアは無事に魔法界にもどれることになり、せっかく仲良しになったシャオラン、美琪、美雪、ベイベイとの別れを惜しんでいた。

ところがそこへポカポカ王国からプリンセス・カメリアの愛鳥がやってきて、王国に大変な危機が迫っていることを伝えた。シャオラン、美琪、美雪、ベイベイの4人も、その危機からポカポカ王国を救おうと、プリンセス・カメリアとともに魔法界へ飛んで行く。

魔法界のポカポカ王国に戻ってみると、なんとプリンセス・カメリアに魔法獣との意思疎通の能力を教えてくれた叔父が、カメリアの父親を地下牢に閉じ込めて、いつの間にか自分が国王の座についているではないか。

カメリアの叔父は、実は長年にわたってカメリアの父親の食事に毒を少しずつ盛って体力を弱らせるだけでなく、カメリアの魔法獣を自らの魔法の力でコントロールして、カメリアを永遠に人間界から戻れないようにするために、魔法獣を城からわざと脱走させたのだ。

それらはすべて、叔父自身が国王になるための陰謀だった。

カメリアは叔父の裏切りに義憤を覚え、父親を地下牢から救出して、シャオランら4人とともに叔父に立ち向かうが、叔父の暗黒魔法の力は遥かに強大で全く歯がたたない。

ついに叔父の暗黒魔法の一撃で、プリンセス・カメリアは死んでしまう。そのとき、カメリアが両親から託されていた魔法の宝石がカメリアの魔法の弓と反応したかと思うと、光の矢が天をつらぬき、死んだはずのカメリアは不死鳥のようによみがえる。

そして女王にふさわしい華麗な姿に変身して空高く舞い上がり、叔父の暗黒魔法についに打ち勝つのだった。

暗黒魔法を解かれた叔父は、今まで自分が何をして、どこにいるのかさえ分からず、呆然とするばかり。

そして父親はプリンセス・カメリアに、自分の王位を継承しようと話すのだが、カメリアの口からは意外な言葉が。人間界に戻ってSNH48メンバーになりたい!?

そして映画のラストは、プリンセス・カメリアとSNH48チームXによる『バララ・フェアリーズ』主題歌『マジック・メロディー』のパフォーマンスとなる。

以上が映画のあらすじ。

脚本で一つ意味がわからなかったのは、運営の面接に合格しないとSNH48のファンクラブに入れないという設定。もちろん実際のSNH48ファンクラブは誰でも入れるのだが、この設定の意図と、物語の上での必然性がよく分からなかった。

他のSNH48についての描写は、オタクっぽいファンも含めて現実をややデフォルメしているだけなので、この部分は本当にSNH48運営会社が面接でファンクラブ会員を選んでいるかのように、映画を見た人を誤解させるのでは?と心配になった。

ところで、ミステリー映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックがかつて言ったように、映画は何を語るかではなく、どう撮るかだ。

この映画、手持ちカメラが多用されているし、カット割りも細かいので、映像としては意外に退屈せずに観られる(脚本は部分的にひどく退屈だけれど)。

SNH48星夢劇院内のシーンは、じっさいのSNH48ファンをエキストラに撮影されただけあって、セミドキュメンタリー風に撮られている。

一方、戦闘シーンは明らかに日本のテレビゲームやアニメに着想を得た撮り方になっている。

そもそもフェアリーズは素手で戦わない。それぞれの武器からエネルギーをビームのような光で射出して、そのエネルギーがどれだけ強いかで敵を倒せるかどうかが決まるという描写。

最後の叔父の暗黒魔法との対決で面白いと思ったカットは、暗黒化した叔父を超広角レンズで見上げるカット。他のすべてのカットの画角が比較的自然なので、このカットの画角の歪みが、叔父の悪意を強調することに成功している。

そして途中、食事の準備のシーンにさりげなくジャンピング・カットが使われていたり、撮影技法は全体として悪くなかった。

頂けないのは音楽と音響効果。効果音自体は悪くないのだが、ヘッドホンで聴いても、音響がひどすぎる。ネット配信のためにエンコードするときに音質が悪化したのか知らないが、例えば星夢劇院のライブの場面の音響が、まったくライブの音響になっていない。

それに同じ背景音楽の使い回しもあるし、どこかで聴いたことのあるインストゥルメンタルのパクリもあるし。

中国のラジオ局の番組を聴いていてもいつも思うのだが、音響の質が悪いのは、中国で制作されるあらゆるコンテンツに共通の弱点なんだろうか。

一昨年、SNH48が出演した『半熟少女』の音響は悪くなかったのだが、この『バララ・フェアリーズ』はひどすぎる。

ただ、映画の本編が終わった後、楽屋落ち的なダイモン(戴萌)、ユーミー(趙粵)の2人へのインタビューがあったのは、お子様向けの映画としては意外だったし、とても面白いと思った。他の『バララ・フェアリーズ』のレギュラー・キャストの3人のインタビューもある。

完全に素のSNH48メンバーとして2人が映画撮影の裏話や、もしほんとうに魔法が使えるとしたらやっぱりお金を出せる魔法でしょう、みたいな本音をしゃべっている。

中国の小さな女の子はこういう楽屋落ちを見せられても、ガッカリしないだけのメディア・リテラシーがあるということなのだろうか。それとも製作者側がSNH48ファンが映画を観に来ると知っていて、子どもたちには不評を覚悟して、あえて大人向けの楽屋落ちを付け加えたのだろうか。

そのあたりの理由は分からないが、もちろん大人の筆者としては、ただのお子様向け映画じゃない楽しみ方ができた。

この最後のインタビュー部分で、ベイベイ役の香奈儿が、映画の撮影を通じてシャオラン姉さん、つまりダイモン(戴萌)にすっかり夢中になってしまったと、ダイモンのプリクラシールまで自慢気に見せているのも面白い。

以上、低予算のお子様向け魔法少女アニメの実写劇場版として、想像していたよりは悪くない映画で、意外に面白かった。