SNH48初の全曲オリジナルEP『源動力』全6曲について好き勝手書いてみた(汗)

SNH48初の全曲フルオリジナルEP『源動力』が中国のポータルサイト最大手「網易」クラウドミュージックで公開された。

01. 源動力(源動力)『源動力』選抜17名

02. 心の旅程(心的旅程) Team SII

03. 正義の手(正義之手) Team NII

04. 少女進化論(少女進化論) Team HII

05. あなたに言いたい(我想対你説) Team X

06. マミマミホン(媽咪媽咪哄) Team XII

ここからは筆者の勝手な感想なので、ご興味のない方はスキップすることを強くおすすめします(汗)。

試聴版も含めて3曲が公開済みだったが、今回網易クラウドミュージックで公開されたのはロスレス版なので隅々までよく聴こえる。コメントするならロスレス版を聴いてからにすれば良かったと、後悔した曲もある。


01. 源動力

まず『源動力』はすでにフルバージョンが公開されていたが、ロスレスで聴いてもやはり低音部分が弱く、メイン曲にしては薄っぺらくて力強さに欠ける。この感想は変わらない。

メロディーは良いのに、伴奏の薄っぺらさとアレンジの粗雑さでそれが台無しになっている。驚くべきことにこの曲にはベースのメロディーが全く存在しない。

しかも曲全体の構成が手を抜きすぎと思われる。

イントロ:4小節×2
Aメロ:8小節×2
Bメロ:8小節×1
Cメロ:8小節×2
間奏:4小節×2(イントロと同じ伴奏+コーラス)
Aメロ:8小節×2
Bメロ:8小節×1
Cメロ:8小節×2
間奏:8小節×2(Cメロと同じ伴奏+ギターソロ)
Cメロ:8小節×1(ブレイク)8小節×1(ここまでのCメロと同じ伴奏)
アウトロ:4小節×2(イントロと同じ伴奏+コーラス)

ニコニコ動画のボカロPのみなさんでも、ここまで手抜きのアレンジは絶対にやらない。すべて使い回し。最後のCメロのブレイク部分、ハイハットとリードだけになってハイハットがクレッシェンドするなんて、今どきのプロなら恥ずかしくて出来ない使い古されたアレンジだろう。

最悪なのは曲の終わり、ギターがビーンとフェイドアウトするだけという信じられないクオリティの低さ。ベンドの一つくらいかけろよとツッコミを入れたくなる。

小節数の構成もこぴぺで作れる単調さ。2コーラスめのAメロは8小節パターンを1回だけにするとか、2コーラスめのBメロからCメロ(サビ)の間に、例えばボーカルのコーラスを重ねて2小節くらい遊んでみるとか、2コーラスめのCメロはドラムスのパターンを変えるとか(クラッシュシンバルを多めに入れるとか)。

僕みたいな素人でも思いつく味付けはいくらでもあるのに、ほぼほぼコピペの伴奏。

また、EPのメイン曲なら最後のCメロを半音上げて転調するくらいのことはしたらどうか。

それからAKB48の楽曲でも何でもいいんだけれど、J-POPを聞けば必ず「不要な音」が飾りとしてあちこちに入っているのが普通のアレンジというもの。

あえて言えばこの『源動力』にはCメロ部分にピコピコ音が入っているけれど、それも全てのCメロで同じパターンのコピペ。しかもこのピコピコパターンは2コーラスめのAメロで、そのままではないけれど流用されている。

2コーラスめのCメロに入る前に「ヘ~イ!」という叫び声が聴こえるが、こういう「不要な音」がもっとあちこちに入っているのがプロとして普通のアレンジだろう。一瞬パーカッションが鳴ったり、一瞬ギターのワンフレーズが聴こえたり、ランダムにコーラスが入ったり。

AKB48楽曲をよくよく聴けば、そういう細かいプロの芸が入っているのが当然で、ボカロPさんたちの曲を聴いてたって、ちゃんとそういう「不要な音」はスパイスとして散りばめられている。それが結果として楽曲の豊かさ、厚みになる。アレンジというのは、そういうものでは?


02. 心の旅程

この曲をメインにすべきだった。誰が『源動力』をメインにしてMVまで撮影することに決めたのかは知らないが、この曲のアレンジこそ普通にプロの仕事だ。

決してJ-POP風の曲風だからではなく、アレンジが手抜きでない。「不要な音」もあちこちにちゃんとある。

イントロの最初になる音が一瞬にして歪み、ギターのバッキングとともに、ピアノの後ろにキラキラした音が分散和音を奏で始め、歪んだギターリフが割り込んで来て、イントロからすでにギターソロが疾走する。バッキングのギターも低音までしっかり響いている。

かと思うといきなりまた静かなピアノとキラキラ音だけになり、今度は電子音が音階を一気に駆け下り、あらためてギターがオープニングらしいファンファーレのように鳴り響く。

たった23秒間のイントロに、これだけカラフルな音が弾けている。これがポップスのアレンジというものだ。

Aメロにまたまた短三度(Bメジャー曲にDナチュラル)が出てくるが、これにはちゃんと理由がある。Aめろ後半へのつなぎの部分で、バッキングのギターがBマイナーのコード進行をわざと弾いているからだ。

そしてこの曲のBメロからCメロ(サビ)の間には、「余分な」2小節がちゃんと入っている。E→F#→G→A→F#というコード進行のG→Aが完全に遊びだからだ。

この遊びがあるからその後に自然に「three! two! one! go!」というコーラスが入って、テンションMAXでサビに入れる。ポップスのアレンジってそういうものですよね。さすがチームSII曲。チームSIIはこれでなきゃダメなんです。

Cメロ(サビ)でも後半へ移る部分の後ろで意味不明のピコピコ音が突然鳴り出す。こういう「不要な音」があってこそのアレンジ。

その後の間奏部分も、かなり贅沢なアレンジ。

冒頭、わざとコンプレッサーで圧縮したパーカッションがシャカシャカ鳴り出し、それと鮮やかな対比でピアノと例のキラキラ音が響いたかと思うと、重いスネアとバスドラがバスン!と来て、ギターソロが始まるとすぐに、来ました!転調!

ここまでの間奏のBメジャーのコード進行は以下のとおり。

E → F# → D#m7 → G#m7

だけれどギターソロは

E → F# → F#m7 → B

F#からするとF#m7というマイナーへの転調は「また短三度かよ!」となるけれど、F#m7の7th、つまりEの音は、次のBというコードから見るとsus4になっているという細かい芸。つまり

E → F# → Bsus4 on F# → B

こういう流れで、ギターソロが転調しつつBへの終止感を作り出しちゃっているという。

主和音に解決してしまっているので、流れとして余計なギターソロを付けざるを得なくなるけれど、このギターソロに最初にAメロに入ったときのギターリフをそのまま使って、ちゃんとまとまっているところが良い。

そして2コーラスめは『源動力』のところで書いたように、Aメロの繰り返しはしないのが普通。『源動力』はコピペで繰り返してしまっているけれども、この『心の旅程』ではちゃんと繰り返しなしでBメロに入る。

2コーラスめのサビが終わった後の間奏も、凝っている。リズムがいきなりそれまでの8ビートから一瞬だけ遊んで、またもやギターソロという。この曲のギターソロはとにかく贅沢。

そして息もつかさずギターソロ付きのまま最後のCメロ。しかも途中から男声コーラスまで入ってくるので、イヤでも盛り上がる。駆け上がっていく爽快感。

そしてアウトロもしっかりギターがバッキングではリフを、同時にソロも弾き、メンバーが「Hey!」と元気に叫んで、手抜きなし。

これこそポップス。やっぱりチームSIIこそがSNH48の正統派。


03. 正義の手

ダンスミュージックの一種(トラップ・ミュージック)としてありだということは分かるけれど、それでもこの曲も『源動力』同様、アレンジが不十分ではないか。

たとえば、2コーラスめが終わった後のリードのリズムの単調さというか、コピペ感。もちろん後半に低音が入ってくるのは分かるけれど、

こういうトラップを聴き慣れている人は、もっと中毒性の高い、不安定で歪んだビートが欲しいと思わないだろうか。また、ボーカルがずっと中央に定位したままで、退屈だと思わないのだろうか。

それにこの曲のアウトロもいきなりプツッと終わっているが、トラップってそんなもんなんだろうか。

個人的に最近のEDMには詳しくないのでこれくらいで。


04. 少女進化論

これもEDMか(3曲目から続けて聴くとやや食傷気味)と思ったら、Cメロ(サビ)でがっつり転調しているし、キラキラ感が素晴らしい。ボカロっぽいコーラスまで入るし、甘ったるいボーカルと、バッキングの妙なスケール感のアンバランスがかなりクセになる。

ちなみにこの『少女進化論』のCメロでの転調は、DメジャーからFメジャーという、またまた短三度が登場する転調。どうやら短三度転調は最近のJ-POPやボカロ曲、アニソンでは定番の転調らしい。

イントロの「ツッツカ ツッカ」というビートも意外性があるし、ボーカルのエフェクト処理も面白い。

アレンジも2コーラスめは、Aメロから手を抜かずに変化を付けて来る。たとえば「牵手(チェンショウ)」というエコーが左側に定位するとか、EDMのアレンジってこういう遊びがあるものでしょう。そこがボーカルがずっと中央に定位している、手抜き感満載の『正義の手』との大きな違い。

2コーラスめが終わった後は、イントロのあの「ツッツカ ツッカ」ビートが復活して、不思議な雰囲気のままフェイドアウト。曲の本体でこれだけ遊ばれると、アウトロは「シュー」で納得させられる。

この曲は相当おもしろい。

「進化論」というタイトルに恥じない、SNH48の新しい世界を開いている。チームHIIのSNH48の中での位置づけにもピッタリ。


05. あなたに言いたい

これは『心の旅程』同様、正統派アイドル・ポップスで、やはりアレンジにも手抜きなし。曲構成も単純に4小節ずつの反復になっていないし、サビはきっちり転調するし。

この『あなたに言いたい(我想対你説)』のCメロの転調も短三度だが、『少女進化論』のような短三度上ではなく、短三度下で、CメジャーからAメジャー。やっぱり短三度転調ははやってるわけね。

2コーラス終わりの間奏のギターソロのディストーション具合も気持ちいい。アウトロもしっかりとイントロから登場するギターが引き継がれていて、これならDメロなしでも全体として十分満足できる構成かつアレンジ。

イントロのギターのキャッチーさも含めて、アイドル・ポップスとしては文句なし!


06. マミマミホン

これはボカロ系の「洗脳曲」といえるかも。だからといってアレンジが手抜きかというと、全くそうではない。思いがけず生き生きと動きまわるベースラインがしっかり聴こえてくるし、ブラス・アレンジまで入ってくる。何気にバックトラックがものすごく凝っている。

Aメロの途中から入ってくるクラップ(手拍子)は個人的に要らないと思うけれど(Bメロからで十分)、Cメロのボーカルが途中でヴォコーダーでモノラルになったり、細かい芸があちこちで使われていてアレンジがかなり面白い。

ボーカルもずっと中央に定位しているとかいう手抜きなしで、むしろずっと左右に気持よく振られている。コーラスアレンジも要所要所に入り込んでくる理想的なさじ加減。

そして肝心の「マミマミホン」は最初から最後まできれいなコーラスで「ホン!ホン!」と、洗脳してくる。

こういうタイプの曲としては文句なし。


以上から勝手ながら100点満点で採点させていただくと以下のとおり。

01.源動力 10点
02.心の旅程 100点
03.正義の手 10点
04.少女進化論 100点
05.あなたに言いたい 100点
06.マミマミホン 90点

『源動力』と『正義の手』以外の曲を聴いて、AKB48楽曲なしでもSNH48はやっていけると思った。というより、AKB48楽曲より面白いかもしれないとさえ思った。