中国版『Produce101』第一回ネット放送翌日の視聴回数すでに2.2億

中国三大ネット企業テンセントが2018/04/21からネット放送開始した、中国版『Produce101(創造101)』。YouTubeにさっそく転載されていた。

本家テンセント動画では視聴回数がすでに2.2億回とものすごいことになっている。

↓YouTubeではこちら

最初に結論を書いておくと、予想どおりK-POPスタイルの番組で、日本式の「育成系」や「カワイイ系」は不要というコンセプト。

従来の中国女性アイドルグループにK-POPの要素を追加しているが、日本の48系のような異質なコンセプトは受け入れていない。元EXOタオがメイン審査委員なので当然といえば当然。

SNH48グループが不参加を決めたのは、事前に番組コンセプトを理解した上での賢明な判断だ。

この番組にネット上の話題は持っていかれるだろうけれど、この番組から誕生するのは48系と完全に異質なグループなので、SNH48とは競合せず棲み分けができる。これも今までどおり。

AKB48 CHINAから参加した2人がこの番組でどういう扱いになるのかは、最後に書くことにする。

まず、この番組に応募した事務所は457社、オーディション参加者は13,778人で、そこから選ばれたのが101名の「練習生」。

これから三か月間、まず勝ち抜き戦で101人の練習生がA~Fクラスに組分けされ、クラスごとにレッスンを受けて、最後の11人が決まるという流れ。

第一回放送分は以下のような感じ。

最初に「練習生」が所属事務所ごとに登場して、ピラミッド型の座席に自由に選んで座っていく。

その後、審査委員(中国語で「導師」)が登場。元EXOメンバー、S.H.EのElla、ショウ・ルオなど。メインの審査委員兼司会はタオ。

同じグループからの練習生でも、審査委員はAからFのランクに振り分けていく。

練習生はほぼ無名のタレントから、すでに数年のキャリアがあるタレントまでいろいろだ。

最初の登場のとき、中華圏の有名歌手、タレントが所属する大手事務所からの参加者や、中国国内のバラエティー番組で一定の知名度のある参加者には歓声が上がる。参加者どうしでファンとアイドルのような盛り上がりになる場面も。

AKB48-CHINAの毛唯嘉(マオ・ウェイチャー)、劉念(リョウ・ニェン)が登場すると、すでに入場している練習生から「御系」という声が上がる。

「御系」のニュアンスは不明。中国の二次元では『ルパン三世』の峰不二子のような「姉御肌キャラ」の意味だが、ここではたぶん違う意味。

そしてAKB48-CHINAの2人の自己紹介が会場を凍りつかせ、ポヨヨ~んという効果音が鳴る。

「時刻保持 努力 謙遜 感恩 為夢想不断奮闘 元気満満 永不放棄 AKB48 CHINA」

「いつも気持ちをゆるめず、努力し、謙虚で、夢のためにたえず奮闘し、元気満々で、決してあきらめません」くらいの意味。

メンバーが大きな声をそろえて精神論を宣言するのはAKB48 CHINAだけ。番組的にはこの2人の宣言に、他の練習生が「はぁ?」となる演出。

↓「はぁ?」

AKB48 CHINAの2人は明らかに浮いている。ただ、番組中ではかなりカメラにぬかれている。

最初に登場する練習生の審査を見ただけで、この番組が日本の「育成系」とは違って最初から一定の技術を求めていることがわかる。

ショウ・ルオが一組目の練習生を「ただの冗談レベル」と言い、ニ組目の香蕉娯楽TRAINEE18のパフォーマンスを「一般般(まあ普通)」と表現し、これが規準になると言っている。

この番組の「カワイイ(可愛)」という形容詞は、歌やダンスが一定のレベルに達している前提で、わざとちょっとゆるい感じを表現する意味で使われている。日本のカワイイとは全く違うニュアンスだ。

その後、パフォーマンス部分に「ストップ!」「もういい!」というキャプションが出てカットされているグループもいる。

2017年末解散した広州「1931」は48系グループで、デビュー当初はAKB48のカバーをしていたが、この番組ではK-POPスタイルのパフォーマンスになっている。番組の趣旨をよく分かっている。

↓元「1931」の5人

この元「1931」の部分は番組の中で扱いが大きく、女性アイドルという職業の残酷さをショウ・ルオが語る部分になっている。

結局、元「1931」メンバーは、2名がCクラス、3名が元SNH48三期生ドゥードゥー(陳怡馨)の妹、陳怡凡もふくめてDクラスと厳しい評価。

↓元「1931」陳怡凡

後半で審査委員のEllaは、「私たちS.H.Eはデビューしたときから女性ファンが7割でした。この番組が女性も好きになるグループを作ってくれると期待しています」と語っている。

明らかにこの番組には日本の48系はいらない。

「1931」と同じく48系のコンセプトで結成された「蜜蜂少女隊」の3人も、K-POPスタイルのダンスを見せているが、結果は1名がCクラス、2名がDクラスと残念なことに。

↓「蜜蜂少女隊」の3人

とにかくこの中国版『Produce1010』は、日本の48系は要らないということだ。

第一回放送でもっとも評価が高かったのは2チーム。

一つはこの3人。

歌唱力もダンスもすごいと、元EXOタオが絶賛し、全員Aクラス。とくに中央の陳芳語は「A+級だ」との評価。

彼女はすでにKimberley Chenとしてプロデビューしており、『愛你』という曲はこの番組に参加している練習生もほとんど知っているようだ。

もう1チームは『THE RAP OF CHINA 中国有嘻哈』出演者「Yamy」のいる「極創引力」のメンバー。YamyはAクラスに選ばれている。

最後は、Aクラスは11人なのに、タオさん、間違って12人選んでしまいました。どうしましょう、的などうでもいい演出がある。

タオがYamyにカードを渡し、このカードに書いてある番号の練習生に向かって「お下がりください」と言いなさいという、競争の残酷さをきわだたせる演出。

そしてYamyが「すみません、その席は私のです」と言った練習生・強東玥(チャン・ドンユエ)が、PK戦をやらせて!とやり返す。その2人に「カッコいい!」と会場全体が沸く。

Yamyはクール系、強東玥はカワイイ系(日本のカワイイ系ではない)の対決。ダンス、歌、RAPの3種目で対決。

ダンスと歌で1対1になり、最後のRAPでは絶対Yamyが勝つだろうと、視聴者は誰でも思う。

ところがYamyのパワフルなRAPの後、強東玥が負けを認めてふつうに話しだしたかと思うと、それがじつはRAPになっていて、「まだ私の名前を聞いたことがなくても構わない。それはただの時間の問題!」とRAPを終えて大歓声。

このRAPの歌詞もふくめて、よくできた台本だと思う。

さあメイン審査委員のタオさん、Yamy(左)、強東玥(右)のどちらを選ぶ!?

↓このときAKB48 CHINAの毛唯嘉は白目をむいて「わたし二人ともきっとAだと思う」。

結果、AクラスにはYamyのようなRAPができるメンバーがおらず、彼女はダンスもできるということで、Yamyが選ばれる。

以上が第一回放送の内容。

さて、AKB48運営会社はAKB48 CHINA予備生の毛唯嘉、劉念を出演させて何がしたかったのか。

番組演出上、考えられるのは3パターン。

(1)実はものすごい隠し球をもっていました。
(2)下位クラスに組分けされて頑張ったけれどダメでした。
(3)AKB48運営会社に気をつかって番組コンセプトと無関係な役割でスポットを当てる。

(1)については、仮にものすごい隠し球を持っていたら、必ず何かの番組に出演経験があるはず。

毛唯嘉はCherry Girlsの元マネージャーで隠し球がないことはハッキリしているが、劉念の名前は中国の検索エンジン「百度」で検索しても何も出てこない。たぶん(1)はない。

(2)がいちばんあり得るパターン。

ただし「頑張ったけれどダメでした」演出に入るには、過去の経歴を暴露して視聴者の同情を買う台本しかない。毛唯嘉にはそんな苦労話がない。イベントコンパニオンという経歴は苦労話にならない。劉念は何しろ情報がないので不明。

番組の人気が上がれば(2)のパターンでも露出が稼げ、名前は知ってもらえる。ただ「ダメでした」の部分は今後の中国でのタレント活動で、ずっとツッコミを入れられることになる。それをネタにできるか、単なる黒歴史になってしまうかで、AKB48 CHINAのこれからが決まる。

(3)は日中友好のヤラセのパターンだが、下手をするとテンセントが中国国内から攻撃されることになるので、可能性はきわめて低い。

筆者個人の考えをまとめると、48系グループはこの番組にいっさい関わらないのが正解。

AKB48 CHINAが中国で最初に露出する番組としてこれを選んだのは、もしかするといきなり大きな失敗をした可能性がある。

この番組自体のコンセプトは明確なので中国的にはそこそこ成功するだろうが、AKB48 CHINAの2人がとても心配だ。