北京BEJ48チームJ全曲オリジナル新公演『HAKUNA MATATA』に好き勝手コメントしてみる

北京BEJ48チームJとして初の全曲オリジナル公演『HAKUNA MATATA』が2018/07/14(土)初日を迎えた。センターはソプラノでクラシックが歌えるher(黃恩茹)。

なんでライオン・キングとハリー・ポッターがいっしょになってるんだよ、というツッコミは当然すぎるので置いておく。

(2018/07/20 作詞、作曲を追記)

北京BEJ48チームBとして初の全曲オリジナル公演『B A FIGHTER』がタイトルのとおりアグレッシブかつ重厚なスタイルなのに対して、このチームJ公演は元気いっぱいで明るいアイドルっぽいスタイル。チームカラーを出してきている。

事前にセットリストが公開されていたが、まさかユニット曲が10曲もあるとは思わなかった。本来16人全員曲の最初の4曲のうち、M02.期待之翼、M03.Tennisが6人のユニット曲になっている。

M05.から本来の意味でのユニット曲が始まるが、8曲も続くため観ていてやや疲れる。中間に全員曲を入れるとか、曲順を入れ替えてスタイルの違う曲をぶつけるとか、構成上の工夫が必要なように感じた。

そして普通の公演ではユニット曲の後に2番目のトークコーナー(MC2)が入るが、それが無くなってMC3、MC4のいわゆる「大MC」に直接入る。

MC2がなくなるのはつい先週初日を迎えた広州GNZ48チームNIII全曲オリジナル新公演『Fiona.N』も同じで、もしかするとSNH48グループ全体としてオリジナル公演からMC2をなくす方針なのかもしれない。

たしかにMC2はお題もなく、ただのおしゃべりにしても長さが中途半端で、お題のあるMC3、MC4があればメンバーのトークを十分楽しめる。

以下、一曲ずつ好き勝手コメントしてみる。

SNH48グループの全曲オリジナル公演は一定レベルに確実に達していて、どれも安心して観られるようになった。まだ文句を言っている現地ファンは過去のAKB48系楽曲や今の坂道系など典型的なJ-POPスタイルにこだわりすぎと思われる。

作詞・作編曲は分かりしだい追記するが、おそらくkoshin(胡臻)さんの会社のアーティストが提供していると思われる。

M01. HAKUNA MATATA

作曲:張艾、作曲:7Key Once

この曲は管弦楽編曲の勝利。オープニング曲にふさわしい素晴らしい編曲。編曲を変えればごく普通の48系アイドルポップスになるが、とにかく編曲が良すぎる。

Aメロ、BメロはDメジャーでサビのCメロでEメジャーに転調。Bメロにリフレインがないメロディー的にぜいたくな作り。ツーコーラス目終わり以降、サビのリフレインはすべてEメジャー。

冒頭、人形のように停止しているが、公演の最後にこの体勢に戻るという全体の構成。

初日はメガネをかけているメンバー(黃恩茹、楊曄、王雨煊、房蕾、任心怡、孫語姍、許婉玉、何阳青青の8人)とそうでないメンバーがいたが、二日目はメガネはルールーだけになっていた。

この曲の後半でマントが青い「Hakuna学院」と赤い「Matata学院」に組分けされる振付がある。

またこの公演は衣装もアイドルグループの公演衣装としては全般的にクオリティが高い。北京BEJ48の衣装のクオリティは昔と比べると飛躍的に上がって、広州GNZ48と全く遜色なくなっているように感じる。

M02. 期待之翼

作詞:林喬、作曲:Chacha Kiss

ソプラノ歌手her(黃恩茹)の高音のサビ始まりだが、サビのリフレインの前半だけというちょっと凝った構成。この曲は典型的な48系アイドルポップスだが、やはりストリングスと鐘の音が全面的にフィーチャーされた編曲が豪華で気持ちいい。

上述のように本来の48系の公演構成では2曲めは16人全員曲だが、6人のユニット曲。

AメロはCメジャー、Bメロで三度転調してEbメジャー、サビでCメジャーに戻る。ツーコーラス目の後の間奏でDメジャーに転調して、Bbメジャー、Csus4、Cを経由して、サビのCメジャーに戻る。転調の構成も凝ってる。

Cの音がくり返し出てくるサビのメロディーもキャッチー。あまりポップス向きとは言えない黃恩茹の声質でも、こういう高音がくり返されるサビなら良いんじゃないでしょうか。

M03. Tennis

作詞:Tennis、作曲:7Key Once

ここで突然テニスの曲になるのは完全に意味不明。Aメロがペンタトニックでスタイルの落差が大きすぎてついていけない(汗)。Bメロがないシンプルな構成の曲。

48系公演の構成でいけば本来は16人曲だが、上述のように6人のユニット曲になっている。

こういうリズムの曲なのに編曲にストリングスが多用されているので、日本人的には1970年代のアイドルポップスを思い出してものすごく懐かしい感じがする。転調なし。なしの方が良い。何度も聴くほど癖になる洗脳曲。

M04. Wake up

作詞:帥帥、作曲:帥帥

一転して典型的なこてこての48系アイドルポップスに戻る。Fメジャー。イントロ部分に「Hey! Hey!」というフックがあり、Aメロ、Bメロ、Cメロ、その後フックがくり返される。

ツーコーラス目終わりの間奏で衣装の早替えがある。上着の両肩を外すと中から別パターンの衣装が現れるという、広州GNZ48チームG『双面偶像』公演の『Fly』、広州GNZ48チームNIII『Fiona.N』公演のタイトル曲と同じ方式。

結果、ウェストがかなり高いワンピースになるが、設定がハリー・ポッターなので中世ヨーロッパっぽくて個人的に全然違和感はなかったが、生放送でファンのコメントを観ているとヘンだという意見もあった。

この『HAKUNA MATATA』公演にはソロ曲でも衣装の早替えがあり、こちらの方が目がさめるような転換で素晴らしいが、後述。

この間奏の最後で半音ずつ上がる転調があり、最後のサビのリフレインはGメジャーになる。

ここから自己紹介MCをはさんで、本来のユニット曲。

M05. My boy

作詞:林喬、作曲:7Key Once

デュエット。王雨煊と楊曄の定番カップリングで客席が盛り上がる(笑)。ただしメンバー固定かと思ったら二日目は劉閒、許婉玉のカップリングに変わっていたが、やっぱりあま~い感じで盛り上がる。

Aメロ、Bメロなしでいきなりサビ。シンプルな構成でEDMっぽく聴こえるが、Aメロのバスドラム含めて編曲はJ-POP。ツーコーラス目終わりでAメロの変奏のような形式でブリッジが入る。

この曲は曲がどうこうより、とにかく王雨煊と楊曄がイチャイチャするのを楽しむ曲(笑)。客席から女性ファンの歓声が上がっていたのが印象的だった。

M06. 塞壬(セイレーン)

作詞:林喬、作曲:Piggy

北京BEJ48チームEの全曲オリジナル公演『奇幻加冕礼』に『一千零一夜(千夜一夜物語)』という中東風衣装だが曲自体はJ-POPという曲があるが、編曲や振付がよく似ている。この曲で左右の二人(孫語姍、金锣赛)がへそ出し衣装なのも少しオリエンタルな感じ。

Ebマイナーで転調なし。Aメロは1980年代のコテコテの日本のアイドルポップス、Bメロは最近のEDMっぽく譜割りが細かくなり、サビのCメロは再びアイドルポップス風。ツーコーラス目の後の間奏でEbとEの音を往復するのでかなり中東風になる。しかし『一千零一夜』よりは編曲がやや薄っぺらい。

ティンパニが入る点、ガラスが割れるパーカッションが入る点が『一千零一夜』の編曲と一致している。『一千零一夜』ではガラスが割れる音色は曲の最後だが、この曲では最後のサビのリフレイン直前に入る。

最後のサビのリフレインは半音上がってEマイナー。アウトロはほぼ『一千零一夜』だがやはり音がかなり薄め。

M07. 彩虹日記

作詞:三月久、作曲:Andrew Shin

Ebメジャー。典型的な48系ポップス。サビのラララ始まりで、Aメロ、Bメロ、サビのCメロ、Dメロもある。こういう曲は編曲が薄めでも全然良い。個人的にはBメロの伴奏にB-Eb-F-Bというメロディーが入ってくるところが好き。コンパクトで良い曲。

M08. Pay attention

作詞:梧桐、作曲:Park Seul Gi

DマイナーでEDM編曲のロック・ポップスでペンタトニック主体のメロディー。Aメロは完全にペンタトニック、Bメロはペンタトニックから外れて、サビのCメロでDメジャーが入る。BメロからCメロへのコード進行がちょっとだけ凝っていて良い。こういう細かい編曲が曲の魅力になる。サビの後にフックの「Pay Attention」のリフレイン。

ブリッジ部分がRAPになっているのが最近のK-POP寄りのSNH48グループオリジナル曲っぽくていい。この曲の派手さはないけれどコンパクトにまとまった良い曲。

M09. 四季的愛恋

作詞:三月久+李夏允、作曲:7Key Once

標準的なバラードのソロ曲。Fメジャー。この曲も衣装の早替えがある。最初は王子様っぽい衣装で生放送コメントではスカートがヘンだとツッコミが入っていたが、この中にロングドレスが入っていたということ。

Aメロから直接サビだが、サビが前半と後半でたっぷりBメロ分も含めた長さがある。ブラス音色が心地よく、ツーコーラス目のAメロの編曲の変化も良い。

ブリッジもしっかりあって、最後のサビは半音上がって衣装の早替え。her(黃恩茹)の顔立ちによく似合うロングドレスで、ちょっと鳥肌が立つくらい美しい。

M10. 飛行熱気球

作詞:圈圈、作曲:帥帥

Fメジャー。ブラス音色メインの編曲でリズムがはねているが、イントロが長い。半分の8小節でいいのでは。Bメロなしでサビになるが、Aメロも16小節の2回くり返しで32小節もある。

これはさすがにBメロが必要だったのではないかと思う。この曲をユニット曲後半に持ってこられると、そりゃ観ている方はちょっと疲れる。編曲もやや退屈。ツーコーラス目のAメロのリズムパターンはガラッと変えてもいいのでは。転調もなし。

M11. 賦離歌

作詞:夏寧、作曲:7Key Once

中国風の楽曲。中国ボカロ洛天依で現地のボカロPさんが作りそうな曲。生放送のコメントを見ていると、こういう中国風の楽曲は異様に評価が高い。Abマイナー。

この曲の衣装は氷の魔法の「Hakuna学院」と炎の魔法の「Matata学院」という設定に沿って青と赤になっているんだろうと思う。

Aメロ、Bメロ、サビ。Bメロの冒頭でせっかく譜割りが細かくなるので、サビのリズムはてっきり倍速になると思ったらそのまま。この曲も編曲がやや退屈。Aメロ、Bメロ、サビともトニックでメロディーが終わり、伴奏のメロディーもトニックで終わる部分が多いのも退屈さを増している。

最後のサビのリフレインは半音上がってAマイナー。曲の終わりで葉苗苗が任心怡を剣で刺して終わるのが公演全体のストーリーとどうからんでいるのかはまだ不明。

M12. Deal

作詞:梧桐、作曲:7Key Once

Aマイナー。Aメロのメロディーとコード進行は面白いのに、Bメロがワンコードで同じメロディーの3回くり返しはどうかと思う。サビの後に「Oh Oh Oh」のフックがあるが、そこまでのメロディーがずっと高音に張り付いているので、やはり退屈な感じ。

上海SNH48チームHII『Beautiful World』公演のダメな曲パターンの作編曲という感じ。

ツーコーラス目のサビ終わりの「Tonight」から始まるブリッジがサビの後半につながり、さらにフックの部分が間奏で、さらにDメロがある。サビへのつなぎで「永远不会变」というコーラスが入るのも面白い。

構成は面白いけれど、やっぱりメロディーがあまりに退屈すぎる気がする。

M13. 翅膀(翼)

作詞:李夏允、作曲:Yang Laf

予告編PVに使われていたバラードでメロディーも美しいが、編曲に手抜きがないのがすごく良い。Gメジャーのサビで始まって、イントロがAメジャーに転調、AメロでまたGメジャーに戻り、サビのCメロはイントロと違ってAメジャーに転調する。

ワンコーラスしかなく、ワンコーラス目のサビが終わるとAメジャーのまま長めの間奏が入り、この部分の編曲も素晴らしいが、その後ブリッジが来る。

ブリッジはAメジャーとAマイナー(Cメジャー)を行き来するありがちだけれど感動的な進行。この部分はher(黃恩茹)がソロボーカルなのもまた素晴らしい。

そこから最後のサビのリフレインへの編曲も完璧。特にルールーのコーラスが入っている点が良い。

残念なのはこんなに良い曲なのに短すぎること。ツーコーラスあっても全然良いと思うのだが、ユニット曲後半のやや退屈な数曲を短くする代わりにツーコーラス目を入れて欲しい気がする。

M13. 黑喵Party(黒ニャオパーティー)

作詞:三月久、作曲:Andrew Shin

M13.は2曲あるが、どうやら公演一回ずつ交代でパフォーマンスするらしい。Gメジャーで珍しく三拍子。転調なし。

黒なのでマイナーでロックな曲かと思ったら、猫の振り付けの美しいメロディーで優雅なワルツ。しかも曲が終わってからマスクを付けた「悪役」の何阳青青、喬鈺珂の二人が、突然登場したチームBメンバーの沈小愛、孫曉艷とミニコントを演じるというこれも全く予想外の展開。

『翅膀』との対比でどういう位置づけの曲なのか意味がよく分からなくなった(汗)。『翅膀』ではなくこちらの曲のときは毎回ミニコント?

M14. J’Story

作詞:張艾、作曲:Andrew Shin

タイトルからも分かるようにチームJのチーム曲として書かれているが、振付が独特。もしかすると北京BEJ48チームB『B A FIGHTER』公演のM01. Be A Fighterと同じく日本の坂道系のコレオグラファーかもしれない。単なる想像だけれど。F#マイナー、転調なし。

Aメロですでにただの反復ではなくて音数の違う前半、後半に分かれているというメロディーの贅沢さ。Bメロからサビへの編曲があまりにスムーズすぎてちょっと物足りないと一瞬思う。

しかしこの曲ではストリングス編曲の伴奏パターンがイントロから最後まで一つのテーマとして繰り返し出て来て、サビがその出現ポイントになるのでBメロとあえて区別を付けなくてもいい構成になっている。

間奏の後はAメロの後半部分から、Bメロ、サビ。その後すぐDメロ、続くサビのリフレインも編曲がものすごく良い。チーム曲として申し分ないけれど、楽曲としての典型的なバラードの形式をしていないので、『翅膀』の方が分かりやすいかも。

M15. 追夢少年

作詞:三月久、作曲:Kohei Nakamura

典型的なアニメオープニング曲風のアイドルポップスで、突然非常に分かりやすい構成とメロディーの楽曲になる。Dメジャー。転調なし。リズムパターンの転換やDメロもしっかりある、本当に典型的なアニメオープニング曲風のアイドルポップス。

サビのリフレインの最後のコーラスはたぶん黃恩茹の録音だと思うが、メンバーにここまで歌える人がいると編曲にもバリエーションが生まれるというのは得している。上海SNH48で言えば二期生チュンチュン(袁雨楨)のような位置づけ。

M16. 未来主題曲

作詞:黃恩茹+張懷瑾+葛司琪+許婉玉+三月久、作曲:Highcolor

最後の曲も典型的な48系アイドルポップス。サビ始まりだが、このサビを聴いてBEJ48チームE全曲オリジナル公演『奇幻加冕礼』の同じくサビ始まりの『征程之楽』のメロディーを思い出した。Fメジャー、転調なし、Dメロなし。

この曲も編曲は手抜きなし、伴奏のハモンドオルガンが印象的。Aメロ、Bメロ、サビのCメロ、ツーコーラス目のAメロでリズムパターンが変わるのは48系で定番の編曲。

ツーコーラス目終わりの間奏がディストーションギターなのも定番の編曲。サビの最後のリフレインの後もしっかりアウトロがある良心的な編曲。

最後は『翅膀』のメロディーで最初のポーズに戻って公演が終わり。

以上のような楽曲と演出で書ききれていない部分もたくさんあるけれど、正統派の編曲という面では最近のSNH48と姉妹グループのオリジナル公演でいちばん良心的でいちばんクオリティが高い気がする。

広州GNZ48ファンとしてこういう意見は良くないかもしれなけれど、純粋に楽曲の好みで言えば『HEADING NEWS』>『HAKUNA MATATA』>『Fiona.N』という順序。

もともとAKB48ファンではなく、AKB48と無関係にSNH48を結成当時からフォローしている筆者としては、また良質な全曲オリジナル公演が生まれて、オリジナル曲のレパートリーが増えることほど嬉しいことはない。