AKB48 Team SHは上海東方衛星テレビ年越し特番に出演、『ヘビロテ』『Love Trip』『初日』をパフォーマンス

このあたりで、AKB48中国再上陸の上海AKB48 Team SHの年越し特番出演をまとめておく。

AKB48 Team SHはデビュー1か月足らずで上海東方衛星テレビの全国放送の年越し特番に出演した。

前半の出演部分では『ヘビーローテーション』『LOVE TRIP』のメドレー。YouTubeの上海東方衛星テレビ公式チャンネルから。

こちらの上海東方衛星テレビ年越し特番のプログラムを見ると、もともとAKB48 Team SHは6組目の出演だった。

ところが本番では番組開始後2時間半たった中盤にようやく登場した。現地AKB48ファンからはブーイングがあがっている。

なおAKB48 Team SH登場のとき、司会者はAKB48の公式姉妹グループなどにはまったく言及せず、青春いっぱいの新しい女性アイドルグループと紹介しているだけ。

パフォーマンス終了後も司会者は「少女の皆さんありがとうございます。元気と愛がいっぱいのパフォーマンスでした」とグループ名を言っていない。

AKB48 Team SHにはもう一つ出番があり、この特番の最後に『初日』を歌っている。

筆者は、デビューでいきなり年越し特番の大トリを務めるとはすごいと思ったのだが、このパフォーマンスは番組プログラムに書かれていない。司会者たちが番組を締めくくった後、エンドロールの扱いになっている。

なお、この特番の視聴率は同時間帯で第3位、AKB48 Team SHが視聴者に一定の印象を残せたことは間違いない。ただ、当たり前だが一般人にはSNH48と区別がつかない。逆にSNH48の知名度アップに貢献してもらえたかもしれない。

↓視聴率ランキング

ところでデビュー1か月足らずで上海東方衛星テレビの年越し特番に出演できたのは、以前も書いたようにAKB48 CHINA総裁の沈志君が、同テレビ局の親会社、NTTドコモ、電通の合資会社の役員だからだ。この人脈なしに今回の出演はない。

そしてやや悲しいことだが、今のところAKB48 Team SHは誰かの人気に頼らなければ、ネット上の知名度を上げることができない。

AKB48 Team SHメンバーのうちキャプテンの毛唯嘉、センターの劉念はご承知のように、中国三大ネット企業テンセント(騰訊)が韓国から版権を買ってネット放送した中国版『Produce101』に参加、敗退している。

その中国版『Produce101』からデビューしたロケットガールズ(火箭少女)は、湖南衛星テレビの年越し特番に出演し、メンバーの一人の賴美雲が新年のあいさつをツイートしている。

そのツイートにAKB48 Team SHセンターの劉念が「シャオチー、新年おめでとう」とコメントを付けており、このコメントに現地AKB48ファンが2,000以上の「いいね」を付けている。

今のところAKB48 Team SHはこうしてロケットガールズ人気にすがるやり方で、名前を認知してもらうしかない。

ただ、これをやればやるほど、現地の一般人にとってはますますSNH48と同じグループと誤解され続ける。

どこかの時点でハッキリと「SNH48はニセモノだ」と現地メディア向けに宣戦布告する必要が出てくる。

そしてその前哨戦として、相変わらず現地SNH48ファンとAKB48 Team SHの対立は続いている。

その一例をあげる。

中国ツイッター(新浪微博)のフォロワー563万の芸能情報アカウント「会火」が以下のようなをツイートしている。

あるネットユーザからのタレコミで、AKB48 Team SH男性ファンが開いているレストランの店内に垂れ幕があり、いろいろオタクっぽくてツッコミどころ満載の応援になっているとのこと。

店主はAKBが今年東方衛星テレビ年越し特番に出演するので、当日店で食事をした”開閉飯”は全員タダ、しかも自分はファンじゃないのに半額にしてもらえたらしい。ヲタはすごい!

ところでみなさん、スターの追っかけにはこういう”年越しのちゃんとした儀式の感じ”が必要だと思う?いっしょに投票してみよう。【追っかけに儀式感は必要か?】

↓こちらが添付されているタレコミのチャット画面ショット

一般人がSNS(WeChat)のダイレクトメッセージでタレコミ情報として写真を添えて送信している。

添付されている画像はこちら。

AKB48 Team SHメンバーのポスターが貼ってある中央に垂れ幕があり、次のように書いてある。

年越し当日、開閉飯は無料です!(塞納河は除外)
AKB48 Team SHの上海東方衛星テレビ年越し特番出演を祝って、本店は今晩特別にアルコールや飲み物をたっぷり用意したごちそうを提供し、いっしょに盛り上げてくれる開閉飯を歓迎します!

このネタツイートはおそらくAKB48 Team SH運営ではなく、Team SHファンがお金でこの「会火」という芸能情報アカウントにツイートしてもらったと思われる。

なぜ運営ではないと分かるかというと「開閉飯」「塞納河」という、一般人には意味不明のスラングが使われているからだ。

現地AKB48ファンはAKB48を「開閉」という愛称で呼ぶ。中国語の発音「カイビー」は「エイケイビー」と似ているからだ。

そして「塞納河 Sai Na He」はセーヌ川の意味だが、イニシャルをとってSNH48の愛称として使われている。

つまり上のレストランの店主が出した垂れ幕は、「AKB48ファンはタダにしてやるが、SNH48ファンは除外」という意味なのだ。

この垂れ幕が現地AKB48ファンとSNH48ファンの対立を意味しているということは、当たり前だが現地の一般人には全く理解できないので、AKB48 Team SH運営がこういう宣伝のやり方をするのは考えづらい。

やるとすれば上記のロケットガールズメンバーのコメント欄への書き込みなど、一般人、少なくともロケットガールズや中国版『Produce101』の視聴者に分かる方法でPRする。

そしてこのツイートのコメント欄では、例によって現地AKB48ファンとSNH48ファンが罵り合いを展開している。通りすがりの人が読むと「この人たちは何を喧嘩しているんだろう」としか思わない。

さて、フォロワー563万の芸能情報アカウントを活用するのは良いが、効果のあるPRとは言えない。

そして今回の年越し特番で初めて披露されたAKB48 Team SHバージョンの『初日』の歌詞は、非常に評判が悪い。

理由は常に同じ。韻をふんでいないからだ。

SNH48もAKB48と決裂する前にすでに版権を購入しているので『初日』を歌っており、独自の中国語の訳詞を持っている。

AKB48 Team SH版と、SNH48版のサビの部分の中国語詞を比べてみよう。

SNH48版
梦想就如同花朵一样 (yang)
在汗水中 奋斗之后终将绽放 (fang)
努力地前往 (wang)
也永远不曾改变方向 (xiang)
AKB48 Team SH版
梦想就藏在汗水之中 (zhong)
它是一朵慢慢盛开美丽花朵 (duo)
每一份努力 (li)
都不会轻易背叛你 (ni)

SNH48版はすべて「~ang(アン)」で脚韻をふんでいるが、AKB48 Team SHは「~ong(オン)」「~uo(ウオ)」「~i(イー)」とバラバラだ。

以前にも書いたが、脚韻のない歌詞では、中国で全国区になれない。

AKB48 Team SHにとって大きな問題は、今回はAKB48 CHINA総裁・沈志君のつながりで上海東方衛星テレビの大舞台に立てたが、中国は中央集権ではなく小さな国の集まりだということ。

地方の独立性は米国ほどではないが、日本や韓国のように東京、ソウル一極集中型の国とはまったく違う。

SNH48運営会社が北京BEJ48、広州GNZ48の姉妹グループ結成を急いだ理由を、AKB48運営はまだ理解していない。

北京、上海、広州は土地柄が大きく違うため、それぞれの地元に姉妹グループを根付かせるには、一からやり直すくらいの時間がかかる。のんびりやっていたのではSNH48は「上海ローカル」のグループに終わってしまう。

そしてAKB48 Team SHはこれから同じ問題に直面することになる。

上海は沈志君の人脈が有効なので、上海東方衛星テレビの親会社であるSMG傘下のメディアで露出を増やせるが、北京のある北方や、広州のある南方での存在感を高められない。

「上海ローカル」に終わらないようにするには、できるだけ早く少なくとも「北上広」と呼ばれる3大都市には姉妹グループをそろえる必要がある。

上海の劇場公演を定着させ、オーディションでメンバーを増やし、事業規模も拡大しなければいけない。メンバーが増えるとどうしても醜聞のあるメンバーが出てきてしまう。

また規模拡大とともにSNH48ファンとの対立も激化する。

筆者が個人的に思うのは、投資家は投資を回収できる限りAKB48 CHINAにお金を出してくれるかもしれない。

しかし結局はSNH48と同じ道を歩まざるを得ず、しかも前回はブルーオーシャンだったが、今回は日本系アイドルグループ市場はSNH48グループの寡占状態にあり、レッドオーシャンだ。

そしてAKB48から独立しない限り、中国中央政府や共産党との関係を深めることもできない。台湾のAKB48 Team TPや、日本本国の活動と両立できなくなるためだ。

それでも勝算があるからAKSは中国再上陸したということは、きっと誰も思いつかないような驚くべき戦略を隠しているに違いない。

それを目のあたりにするのが楽しみなので、引き続きAKB48 Team SHとAKB48 Team TPの動向は追いかける価値がある。