上海SNH48 Team NIIの全曲オリジナル新公演『時之巻』が昨日2019/05/10初日を迎えたということで、個人的な感想を好き勝手書いてみる。人によって見方が違うのは当たり前なので、その辺りはご了承ください。
後半の16人全員曲。
唐突だが、この公演の最大の欠点は衣装と小道具だと思う(汗)。
M11.春日
この公演のPVで使われていた曲。イントロはEマイナーの五音階で、基本的に2つのコードのループ。やはり民族音楽風。BメロとサビでGメジャーに転調する。
と言っても、ボーカルのメロディーは最後までずっと五音階だが、伴奏にはF#が出てくるので古臭い感じはしない。
M12.花之祭
Gマイナー。本当にマイナーの曲が多い公演。
この曲の素晴らしい点は、サビを含めて最後までスネアドラムが鳴らないこと、Bメロがないこと、シンプルなコード進行のループであること。
ワンコーラス目のAメロの前半にいたっては、ピアノがベースの代わりになってベースさえ鳴らない。
ドラムスがちゃんと鳴らないこういう落ち着いたアレンジは、観客の皆さんはCALLしづらいと思うが、楽曲としては静かに聴きたい気分になる曲。
スケールがメロディックマイナーではなく、普通のマイナースケール(エオリアン)である点も良い。コード進行もGm⇒F⇒Dm⇒Ebで、D7ではなくDmを使っている。
これでメロディーにF#が出てこようものなら、またフリジアンドミナントに聞こえてしまう(汗)。
コード進行がシンプルで、メロディーもシンプルな曲は、無国籍すぎる一連のユニット曲や五音階の後の「一服の清涼剤」。しかもスネアドラムが鳴らないのが本当に素晴らしい。
M13.時之巻
公演タイトル曲で、アニソンが戻ってくる。
しかもまたまたドリアンスケール。もういいですという感じだが、それでもCドリアン。幸いAメロが始まるとコード進行にAbM7が出てきて、無事マイナースケールになる(汗)。
Bメロのコード進行にFが登場して、一瞬ドリアンが召喚されるのはよくあるパターンなのでOK。
サビはGmに転調。J-POPを聴いていると三度転調ばっかりなので、五度転調が逆に新鮮に聞こえる。Bメロの最後でCmに終止して、D7からGm。
そう思って油断していると、サビ終わりの伴奏でディストーションギターがGフリジアンドミナントを弾く(泣)。1曲の中にドリアンとフリジアンドミナントが両方使われているという、相当こってりした曲。
ツーコーラス目のサビから切れ目なく、スピード感を保ったままDメロ。この辺りは気持ちいい。DメロのGsus4⇒G進行でちょっとだけGフリジアンドミナントが一瞬召喚されるが、これもよくある進行で問題なし。
サビのリフレインが半音上がる。 最後の最後でG#sus4⇒G#でまたフリジアン(略)。
この曲、全体としてはアニソンということでいいと思う(汗)。
M14.歴史的独白
そしてアニソン(汗)。アニソンが悪いと言っているわけではなく、このコンセプトの公演にはハマっているので全然良い。
ピアノやハープだけの伴奏でサビ始まりの曲はアニソン(笑)。
この曲のメロディーが耳なじみなのは偶然ではなく、去年2018年SNH48グループ第五回総選挙TOP16曲『Endless Story 魔女的詩篇』のサビにそっくりだから。Gマイナー。
『魔女的詩篇』もドリアンスケールが使われていて、これだけドリアンの多い公演の中に似たメロディーが出てくると、同じ曲のように聞こえるのも無理はない。
ワンコーラス終わりの間奏が突然ヘビーになって、ディストーションギターのリフがGフリジアンドミナントを(汗)。ただヘビーメタルでは多用されるスケールなので仕方ないが、確信犯だと思う。
確信犯だと思う理由は、ツーコーラス終わりの間奏のギターソロは普通のブルーススケールでCが登場しないから。
最後まで転調なしである点は潔い曲。
以下、アンコール明けの16人全員曲。アンコール明けが2曲しかないのは異例。
M15.未来天空
1曲目の冒頭といい、こういう壮大なオープニングが好きな公演らしい。
もうドリアンもフリジアンドミナントもないよね、と思って油断していると、イントロ始まりで突然シタールが鳴って勘弁して下さい。インドのMarwaスケールという音階らしい。
イントロは普通のBマイナーなので大丈夫だよね、と思っていると、Aメロで突然G#マイナーに三度転調した上に・・・ドリアン・・・Fの音が聞こえている・・・。
Bメロはマイナースケールの6度を避けたメロディーになっている。これも確信犯だろう。
サビはEbマイナーに五度転調して再びドリアンスケール・・・・・・。このCの音は聞かなかったことにしたいくらい(汗)。
ツーコーラス目のAメロでG#マイナーに戻ると、必然的にまたドリアンスケール。
この間、伴奏には例の笛の音とシタールが鳴り続けているわけで、もう異国情緒でお腹いっぱい。
しかもツーコーラス目終わりの間奏に三弦(日本でいう三味線)がやって来る。実際にはここまでに伴奏で鳴っているのだが、ここで前面に出てくる。これでもかこれでもかという東方オリエンタル異国情緒無国籍な曲。
そして間奏で何気に重要なのは、上海SNH48 Team SII全曲オリジナル公演『PLAN SALVATION』のデュエット曲「Hold Me Tight」のバイオリンソロの間奏が引用されていること。
この引用は中国ツイッター(新浪微博)でツイートしたところ、SNH48の音楽総監から「見つかっちゃった」とレスが付いたので、制作陣が意図的にそうしている。
調は違うが『PLAN SALVATION』の音源を切り貼りしただけの可能性がある。
この2つの公演『PLAN SALVATION』と『時之巻』はストーリーとしてつながっているので、引用があるのは自然なこと。
ただ異国情緒満載のこの曲に、典型的な西洋音楽風のバイオリンが、メロディックでない方のマイナースケールで入って来るのがすごいと言えばすごい。
Dメロは普通にEbマイナーのメロディーだが、その後転調なしのサビは当然ドリアン。
M16.遠方的海
もうここまで来ると、ドリアンが来ようがフリジアンドミナントが来ようが怖くない。Eマイナー。
結局この公演、はっきりしたメジャーコード曲はユニット曲M09.観自在だけという、あらゆる意味で個性的な公演になっている。
日本の48系には作れない公演であることは確か。秋元康が絶対にNGを出す。
Aメロ、Bメロは安定のEマイナーで美しいメロディーが続き、F⇒Eを経てサビでGmへ三度転調。
このGmマイナー、D7が登場してメロディックマイナーになっているのが、逆に新鮮に聞こえてしまうこの公演はすごい。
と、思って油断していると、ワンコーラス終わりの間奏がAmに転調してF#が鳴ってドリアン・・・。これはGmがGに転調してメジャースケールになり、さらにAメロのEmに戻すためのBsus7⇒B7のためのF#ということで・・・。
ツーコーラス目終わりの間奏は、タイトルが「遠方の海」ということで、この公演で初めてブラスの音色が出てくる。
それにしてもこの曲はマイナーコードがメジャーコードのsus4に転調するのが好きな曲。確かにドラマチックな展開になる。
初日にCALLがなかったのはたぶんリズムパターンのせい。
広州GNZ48 Team Gのオリジナル曲『Gravity』と同じくバスドラムは表をドン、ドン、ドン、ドンと踏み、バックビートの乗りがないので、CALLやMIXは入れづらいのだと思う。
初演の2日目、2019/05/11(土)の録画を調べてみると、M15.未来天空はCALLが入るが、この曲はやはり2日目もCALLやMIXはなかった。
以上、上海SNH48 Team NII全曲オリジナル新公演『時之巻』について好き勝手書いてみた。
一つの公演としてこれだけ個性がハッキリするのは、コンセプトがハッキリしているから。
同じ郭德紫毅がコンセプトを作って作詞もしている『HEADING NEWS』も、この公演とは全く違ってほぼブラックミュージック一色になっている。
同じく郭德紫毅の『PLAN SALVATION』公演は、その意味でコンセプトが明確な割に、あまり公演の統一感がなく個性が明確でない。
あの公演もアニソンが多いが、K-POPスタイルのEDMや、JAZZYな曲もあり、クラシック風もありで、スタイルが発散しすぎな点は否めない。
そしてこの『時之巻』はコンセプト公演という意味では個性が有り余っている。アイドルグループの公演としてどうかは別にして、やり過ぎなくらいやるべきことをやっている感じ。
上海SNH48 Team NIIの一つ前の全曲オリジナル公演『以愛之名』が、48系J-POP回帰を狙うあまり、初演直後に手直しが入る不幸なことになったのに比べれば、今回の公演の方が「良い」と個人的には思う。
どうしても48系J-POP公演が観たいという観客は、広州GNZ48劇場に行けば良い。
姉妹グループどうしで個性が明確になるのも良いことだと思う。