SNH48についての興味深い中国2ちゃんねるのスレッド(3)

引き続き中国の検索エンジン「百度」の、2ちゃんねるに似た掲示板サービス「貼吧(てぃえば)」の「AKB48板」で見つけた、興味深いスレッドをご紹介する。

『連載:関于近期対SNH及48系中国化発展的研究報告(最近のSNHおよび48系の中国における発展の研究報告)』 (百度貼吧)

かなり分量が多いので全訳ではなく要約で、かつ複数回に分けてご紹介している。

最初に断っておいたように、このスレッドに書かれてあることが全て真実かどうかは、僕にも判断できない。真実と判断するか、このスレッド自体が壮大なネタと判断するかは、読者の皆さんにお任せする。

3回目の今回は、スレッドの第三章。引き続き運営会社の上海久尚についてだが、運営のファン対応と、地下アイドルのあるべきマーケティング手法について書かれている。

このスレッドの筆者は、地下アイドルがブレイクするために運営会社がとるべきマーケティング手法は、ファンがプロデューサーや運営会社を非難したり、ファン同士がお互いの応援するメンバーを非難し合ったりすること、そして、メンバーについての醜聞を、意図的に許容することだと考えているようだ。

結成当初のAKB48のような地下アイドルは、大手メディアと組んで大々的に売り出すという手法ではなく、クチコミによるファン層の拡大が鍵となる。

そして、日本では2ちゃんねる、中国では検索エンジン「百度」の「貼吧」ようなネット掲示板が、地下アイドルのファン層拡大に必須のクチコミの場だとしている。

そのとき、運営会社はアイドルグループのイメージを守ろうとして、下手にクチコミの内容を規制し、お行儀の良いファンしか残らないようなことをしては逆効果で、意図的に運営への厳しいツッコミや、ファン同士のディスり合いなどを放置する方が賢明だと論じている。

この考え方に立って、このスレッドの筆者は、久尚が正反対のことをしていると非難する。

SNH48一期生メンバーが発表された後、百度の「貼吧」にファンが作ったSNH48板や、各メンバーの掲示板に、運営会社のスタッフがファンのふりをして、SNH48に肯定的な書き込みを組織的に行った形跡があるとしている。

また「貼吧」や中国ツイッター(微博)で、運営会社のスタッフと思われるアカウントが、運営会社やSNH48メンバーを非難するコメントに組織的に反論した形跡もあるらしい。

その結果、いま中国ツイッターのSNH48各メンバーのツイートにコメントをするファンや、百度の掲示板サービス「貼吧」に書き込みをするファンは、肯定的な書き込みをするお行儀の良いファンが多くなったと嘆いている。

なぜ運営会社のスタッフがSNH48の否定的書き込みをネットから組織的に排除するのか。このスレッドの筆者は、その原因が久尚の現時点の運営スタッフの多くが、以前からのAKB48ファンであることだと指摘している。

その証拠に運営スタッフと思われる中国ツイッターのアカウントが、以前からAKB48の運営に対する非難を書き込んでいることをあげている。

運営スタッフに求められる資質と、ファンとしての資質は全く異なるというのが、このスレッドの筆者の議論の背景にある。

現在の上海久尚のスタッフは、元AKB48ファンの観点のまま運営側になっているため、いわば職権を濫用して自分たち自身がSNH48の最高のファンのように行動している、としている。

運営スタッフがSNH48について最も多く情報をもち、それを統制できるのは当然だが、運営の見解を一般のファンに押しつけるような、一方的な情報提供に終始しているため、かえってファンを逃している。

運営スタッフは、一般のファンから見たときの自分たちの特権的地位を利用せず、一般のファンの非難やツッコミを許容し、一般のファンどうしで、ディスり合いも含めたコミュニケーションが広がっていくようにすべきだ、と論じている。

さもないとSNH48は品行方正なファンだけが応援する「高貴で冷艶な」グループになってしまい、AKB48的なものとはかけ離れたグループになる、と書いている。

個人的には、なるほど鋭い指摘だと感じた。

日本でも今の時代のアイドルは、いくらキレイごとで表面をとりつくろっても、ネット上の否定的なクチコミを無視できない。マネジメント会社がアイドルのイメージを統制し過ぎて失敗している例は日本でも多い気がする。

例えば、名前を出して悪いが、エイベックスがプロデュースするアイドルは、エイベックスの大手メディアに対する影響力が大き過ぎるだけに、かえってネット上のクチコミを利用したファン層の拡大に失敗している事例が多いのではないか。

AKB48ファンがお互いの推しメンについてディスり合ったり、運営を非難したりするのを、AKBの運営があえて厳しく規制しないことで、一般のファンは自分たちの意見がAKB48をとりまく状況を動かせる、という実感をもつ。

このようなファン参加型のクチコミ・マーケティングを、AKB48の運営は運営の「プロ」としてうまく利用している。

しかしこのスレッドの筆者によれば、SNH48の運営はあまりにAKB48ファンであるために素人の姿勢から脱することができず、逆に情報統制型の完全に失敗のマーケティングをしている、ということだ。

このスレッド自体が「貼吧」のSNH48板ではなくAKB48板にまず書き込まれたことが、中国の以前からのAKB48ファンと、SNH48に新たについたファンの分断を示している。

例えば今なら、SNH48一期生の胡美婷(フー・メイティン)がすでに上海を離れ、地元の四川省成都に帰ってしまっており、事実上脱退同然の事実はかっこうのネタになるはずだ。

しかし、こうした事実をネタとして取り上げているのは、このスレッドを見れば分かるように「貼吧」のSNH48関連の掲示板ではない。

誤解があるといけないのは、中国の芸能界全体が、中国政府による報道規制と同じように、芸能事務所がタレントの醜聞を情報統制するような息苦しいものでは決してないということだ。中国の芸能ニュースはむしろ日本よりもエグい醜聞に満ちている。

その中でSNH48の運営会社が、もともとネットメディア企業傘下であるために、大手メディアの支援も得られないのに、ネットメディアの特性を活かさず、美辞麗句ばかりの一方的な情報発信をしているのは、たしかに失敗といえる。

そして、この失敗についてSNH48のメンバーには何の非もない。

このスレッドの筆者があえて暴いているように、SNH48にはタレント経験のあるメンバーが比較的多く、上述の胡美婷(フー・メイティン)も含めて、現在進行中のネタでディスったり、いわゆる黒歴史を暴いたりする余地は十分にある。

SNH48のメンバーの一人、陳觀慧(チェン・グァンフェイ)が中国ツイッター上で、自ら「サファイアガールズ」という別のアイドルグループを、デビュー前に脱退したことを釈明したように、また、胡美婷が開き直ってプライベートのアカウントでツイートし続けているように、メンバーたち自身は、言ってみれば、「プロ」のタレントとして醜聞を受けて立つ準備はできている。

一つの指標として、今後、上海久尚が胡美婷をどう扱うかに注目しておけば、このスレッドの筆者のSNH48の将来に対する危惧が、正しいかどうか分かるだろう。