SNH48元一期生「小青」判決文が興味深かったので全文試訳

SNH48元一期生「小青」の退団に関する判決文が、SNH48運営の裏側のなまなましい情報が盛りだくさんでかなり面白かったので、思わず全文を日本語試訳してしまった。筆者は法律の専門家でも何でもないので、用語の誤りなどについては無視してほしい。

また、判決文には当然「小青」の本名が書いてあるが、これは刑事訴訟ではなく民事訴訟なので、本人の名誉のために「小青」に書き換えた。

以下、SNH48の成立と、初期のレッスン期間のメンバーのお給料や、遅刻したり規則に違反したときの給与の天引き金額など、なまなましい数字をじっくりお楽しみあれ(汗)。


原告上海久尚芸能経紀有限公司(以下久尚公司と略)と被告「小青」その他の契約に関する紛争の一件を、本院は受理後、法によって合議制法廷を組織し、公開裁判による審理を進めた。原告久尚公司の委託代理人・俞国新弁護士が訴訟に参加。「小青」被告は本院の召喚状により召喚されたが、正当な理由なく出廷を拒否、本院は法によって欠席審理を行った。本件はすでに審理を終えている。

原告久尚公司の訴えによれば、2010年10月、原告は日本のAKB48女性グループの一部メンバーを上海へ来て活動に参加するよう招待し、その後原告は日本のAKS公司と提携協議に達し、中国の大型女性グループSNH48を設立。

同女性アイドルグループを設立するため、2012年7月、原告の関連会社・上海星四芭音楽文化伝播有限公司(以下星四芭公司と略)がプロジェクト会社として成立、同女性グループのために運営企画、コンサルティング、資金と技術サポートを提供。

2012年7月、原告と星四芭公司はグループメンバー募集を開始、2012年10月上海で最終選抜を実施。当時、被告は自ら応募、参加し、最終選抜に入選した。最終選抜入選に参加する前、原告、被告は2012年10月10日『SNH48専属タレント契約』に署名。

契約の定め:被告は全世界の範囲内の芸能活動のマネジメント業務を独占的に原告に委託し、被告は本契約の有効期間内、本契約の同等の内容あるいは矛盾する内容を含む契約を第三者と締結してはならない。
被告はSNHのメンバーの一人として同芸能グループに加入し、原告は被告のために芸能に関する各種レッスン課程を提供する。

被告が違約した場合、育成三年以内は、被告は原告に違約金として500万人民元を支払わなければならない(以下の金額は特に注記しない限り人民元とする)。

原告は被告のために全日のレッスン期間を手配し、原告は毎月2,000人民元を標準とする生活補助を被告に支払い、レッスン期間、被告に結成等の状況が現れた場合、原告は相当する部分を生活補助から差し引く。

且つ以下の定め:契約成立後、被告は原告が2010年10月14日開催の最終入選決勝戦に参加しなければならず、決勝戦の後、被告が原告に署名済み『確認書』を提出するkとおで、双方が2012年10月12日に署名した『SNH48専属タレント契約』は正式に発効する。

その後被告は予定通り決勝戦に参加、確認書に署名し、SNH48の第一期生24名メンバーの一人となった。その後、原告は被告を含む24名のメンバーに集中レッスンを手配し、レッスン期間中、食費・住居費は全て原告負担とし、かつ毎月被告に生活補助2,000人民元を支払った。

被告はレッスン中の苦労に耐えられず、原告のポジションの割り振りに満足せず、原告の管理に従わなかった等の原因で、2013年3月末突然原告のレッスン基地を離れた。

被告が出て行って以後、原告は何度も被告に連絡を取り、また法律事務所の弁護士への委託も含めて行ったが、全て効果がなかった。被告の行為が『SNH48専属タレント契約』の約定に違反したことに鑑み、かつ被告が自ら連絡を途絶えさせたことにより、双方の契約は継続履行不能となり、それゆえ現在法院に起訴し、被告に以下の要求をした。

1、双方が署名した『SNH48専属タレント契約』を解除するよう命令すること。
2、契約の約定する違約金500万元が高額過ぎることを考慮し、調整を行った上で被告に違約金85万元を支払うことを要求する。

被告・「小青」は答弁せず(訳註:審理を欠席したので当然といえば当然)。

審理によって明らかになったのは、2012年10月12日、原告を甲、被告を乙とし、双方は共同で『SNH48専属タレント契約』に署名している。

契約第二条「双方の契約関係」の主要な定め:本契約の発効以後、乙はSNH48のメンバーの一人として同芸能グループに加入、甲は本契約の有効期間、乙のために芸能事務に独占的に従事する唯一のマネージャーとなり、契約の有効期間、甲の書面による同意なく、乙は甲以外の何人にも無償あるいは有償のいかなる芸能活動にも参加するよう署名あるいは権利を与える権利はない。

第七条「乙の権利義務」第三条から第十条の主な定め:乙が引き受けるべき主要な義務:甲の提供する各種の専門的なレッスン、販促宣伝と交流活動の実施、本契約発効後、乙は甲の手配した、全天候のレッスンを受けなければならない。甲の提供、組織、紹介あるいは推薦する各種広告、販促、宣伝、イメージキャラクター、出演、番組収録および専門的レッスン、販促宣伝と業界交流活動に参加すること。

第八条「契約の有効期間」の主な定め:本契約発効後、乙は甲が2012年10月14日に組織するSNH48芸能グループの最終選抜に参加し、SNH48芸能グループ入選メンバーにならなければならず、かつ双方の本契約への署名後30日以内に、甲が押印し発行したSNH48専属タレント入選証書を受け取り、乙が甲の発行した上述の入選証書を受領した日から、本契約は正式に発効する。契約の有効期間は8年。

第十条「違約、解約および賠償」の主な定め:本契約の有効期間内、乙に第七条3-10項の定めの重大な違反があった場合、および第七条第11項の定めに違反した場合、直ちに根本的な契約違反とみなし、甲は「凍結条款」を行使、あるいは書面で乙に本契約を直ちに解除する旨通知する権利を有し、かつ法律の規定および契約の定めに基づいて適切な措置をとり、乙は違約の全責任を負うことを承諾するものとする。

甲が本契約の定めに基づき乙のための専門的なレッスン等巨大な財力、物量そのた資源を投入したことを考慮し、乙が本契約の定めに根本的に違反し、本契約が期限前に停止あるいは解除された場合、あるいは乙の一方的な原因により本契約が解除あるいは期限前に停止された場合、乙は甲に違約金を支払わなければならない。

乙が甲のレッスンを受け、育成期間三年以内の場合、乙が支払う違約金は500万元、育成期間三年から五年の場合、乙が支払う違約金は800万元、育成期間が五年を超える場合、乙が甲に支払うべき違約金は1,000万元とする。甲は本契約を解除するのにいかなる理由も必要なく、この時双方とも相手方に違約金、あるいは相手方の損失に対する賠償を支払う必要はない。

第十一条「特別レッスン期間」の主な定め:甲は乙に全日制の専門的なレッスンを提供し(すなわち「特別レッスン期間」)、当該特別レッスン期間は最長で6か月を超えず、特別レッスン期間内に甲は毎月乙に生活補助2,000元を支払う。

第十五条「適用される法律と争議解決」の主な定め:争議が発生したとき、双方は甲の所在地により定める人民法院に起訴する。

2012年10月14日、被告は個人の身分において『確認書』を受領し署名、内容:本人「小青」は、2012年10月14日久尚公司の交付した『SNH48専属タレント入選証書』を受領し、本人は同意して上述の証書を受け取り、SNH48芸能グループの入選メンバーとなり、本人が上述の証書を受け取った日から、本人と久尚公司の『SNH48専属タレント契約』が正式に発効した。

被告は『確認書』に署名後、原告は直ちに被告およびその他入選メンバーに集中レッスンを手配した。被告の提供した生活補助明細表によると、

被告の2013年2月の補助は2,000元、うち遅刻による控除60元、私用休暇による控除520元、無断欠勤による控除500元、被告の実所得920元。

被告の2013年3月の補助は2,000元、うち処罰による控除1,000元、私用休暇による控除32.50元、休暇による控除65元、被告の実所得902.50元。

2013年4月以降、原告は被告に生活補助を支給していない。

2013年7月3日、星四芭公司と北京市中銀法律事務所上海分所は『通年法律顧問契約』を締結、毎年の法律顧問費用3万元と定めた。

2013年7月11日、当該被告へ書面を送付し、被告に2013年7月20日までに原告に連絡をとり、違約金500万元を支払うよう要求、かつ当該弁護士に『SNH48専属タレント契約』に記入の被告の連絡先住所、江蘇省揚州市維揚区鳳凰東巷XXXXXXXX室に書面を送付させた。

2013年9月9日、星四芭公司と北京市中銀法律事務所上海分所は『弁護士招聘契約』を締結、指名により俞国新弁護士を原告、被告間の訴訟委託代理人に指名、契約に一審の弁護代理費2万元、二審の弁護代理費1万元、後続の弁護費用は法院の判決あるいは調停による違約金額の10%を取得すると定めた。

別の審理で明らかになったのは、原告は有限責任公司(自己資本100%法人)、登記上の資本は100万元、法定代表人は生吉斌。星四芭公司は2012年7月10日成立、法定代表人は王靖、登記上の資本は180万米ドル、台湾香港マカオの自己資本100%の有限責任公司。

審理中、原告は法廷審理の中で以下のように述べた。SNH48は大型女性芸能グループとして、全ての資金を星四芭公司が提供、ただし演芸公司は外資を導入できないため、契約は全て原告と各メンバーが締結。当該グループ結成のため、支出した巨額の資金の主要なものは以下の通り。

1、星夢劇院賃借料(賃借期間2012年9月1日から2026年11月7日、うち2013年1月1日以前の賃借料は免除、2013年1月1日から2014年11月7日まで毎年の賃借料は85万元)、並びに当該劇院に対するデザイン、内装外装施工、当該劇院はSNH48専用に各種芸能活動を行うために手配された;

2、特別レッスン期間内に、被告のために住居と1日3食を提供、各種教師を手配してメンバーのレッスンを行い、多額のレッスン費を支払い、ならびに月給として全てのメンバーに毎月2,000元の生活補助を支出;

3、SNXXXXの販促、およびメディアとの提携のために、巨額の投資;

4、毎週SNH48のために一回公演を手配し、主な観客は中学高校生;

5、期間内に24名のメンバーが台湾へ宣伝交流活動に行くよう手配、全てのメンバーの往復飛行機チケット代を支出;

(訳註:実際に台湾に行ったのは「小青」、元一期生の湯敏(タンミン)、ワンワン(邱欣怡)、キキ(許佳琪)の4名だけなんですが…)

6、パフォーマンスやメディア記者会見等の手配のため、全てのメンバーの衣装費、メイク費、車代等の関連費用を支出;

7、SNH48のPV収録のための、商業保険の購入等。

審理中、違約金を85万元とした具体的な計算根拠に関し、原告は以下のように説明、被告は2012年10月に契約、2013年3月末に理由なく離脱、6か月内に原告が被告に支出した人件費、物資、資金および資源相当。同時に、違約金は補償と懲罰の機能を兼ねており、原告が今回の訴訟を起こすために、一定の弁護費用、訴訟費を支払っている。故に85万元の違約金の訴訟請求をあくまで主張。

審理中、原告は以下のように述べた。被告は理由なくレッスン基地を離脱した後、被告に電話および書面で連絡したが、回答がなかった。更に、現在知り得る状況では、被告はその他の契約違反、あるいは、その他無断の芸能活動の行為はいまだ行っていない。

以上の事実は、原告の提供した証拠および原告の法廷審理での陳述を証拠とし、本院が確認したものである。

本院は、原告、被告間で締結した『SNH48専属タレント契約』および原告の署名した『確認書』とも当事者双方の真実の意思表示であると認め、当事者双方とも契約と確認書の定める内容を定めにもとづいて履行すべきと認めた。

原告は『SNH48専属タレント契約』の定めにもとづいて、すでに被告のためにレッスンを提供し、かつ原告は契約履行の過程において、契約に違反する状況は発生しなかった。

故に被告が2013年3月に無断でレッスン基地を離れ、完了すべき育成レッスンを契約の定めによって履行することなく、被告の一方的な原因によって契約の履行が不可能になったため、明らかに違約に属する。

本件において、原告は被告が無断で脱し、『SNH48専属タレント契約』がすでに履行継続不能になっていると称し、そのため原告、被告間の契約関係を解除することを要求しているが、被告がSNH48女性グループを離れてすでに相当な時間が経っており、かつ契約を履行する意思を全く表示していないことを考慮し、そのため本院も法に従って原告、被告間の『SNH48専属タレント契約』を解除する。

法律の規定にもとづいて、当事者は一方的な違約の場合違約の状況にもとづいて相手方に一定の違約金を支払うべきと定めることができ、違約により生じた損失の賠償額の計算方法を定めることができる。

定めによる違約金が生じた損失より低い場合、当事者は人民法院あるいは仲裁機構に増額を求めることができる;定めによる違約金が生じた損失より高い場合、当事者は人民法院あるいは仲裁機構に減額を求めることができる。

原告、被告の締結した契約において、被告は甲のレッスンを受けた後、契約の規定に違反した場合、レッスン期間三年以内なら、被告は原告に違約金500万元の支払いを要求できるとしている。本件において、原告は被告のためのレッスン、支出等の各種費用を考慮し、違約金を85万元に調整した。

ただし本件の審理で明らかになった事実によれば、被告はSNH48女性グループの一期生の24名のメンバーの一人に過ぎず、被告に違約があるというものの、まだその他のマネジメント会社と別の契約を締結しておらず、その違約の程度は高くなく、知名度も高くなく、かつ、被告の違約行為は契約履行期間の前期に発生しており、同時に本院は原告がSNH48女性グループが支出した資金、資源、マネジメント会社の芸能人員育成の特殊性、投入資金の高さ等の特殊性を考慮し、事情を斟酌して違約金を20万元に調整した。被告は本院の召喚状による召喚によっても、正当な理由なく出廷を拒否し、本院は法によって欠席裁判を行った。

以上を総合し、『中華人民共和国契約法』第一百零八条、第一百一十四条第一項、第二項、最高人民法院による『中華人民共和国契約法』の適用に関する若干の問題解釈(二)第二十九条、『最高人民法院による民事訴訟の証拠に関する若干の規定』第二条、『中華人民共和国民事訴訟法』第一百四十四条の規定により、以下のように判決を下した:

一、本判決の発効日より、原告上海久尚演芸経紀有限公司と被告「小青」が締結した『SNH48専属タレント契約』を解除する;
二、本判決の発効日より10日以内に、被告「小青」は原告上海久尚演芸経紀有限公司に違約金人民元20万元を支払う。
 仮に本判決に指定期間に金銭を給付する義務を履行しなかった場合は、『中華人民共和国民事訴訟法』第二百五十三条の規定により、遅延履行期間の債務利息を倍とする。
 本件の受理費人民元12,300元は、原告上海久尚演芸経紀有限公司が人民元9,400元を、被告「小青」が人民元2,900元を負担する。
 本判決に不服がある場合は、判決書送付から15日以内に、本院に訴状を提出し、ならびに相手方当事者の人数に応じて写しを提出、上海市第二中級人民法院に上訴すること。

2014年6月25日


以上。