広州GNZ48チームGの全曲オリジナル新公演『双面偶像』PR映像が公開された。
最後に「大BOSS間もなく登場、 to be continued…」とあるので、続きがあるのかもしれないが、やっぱり広州GNZ48の映像制作チームはクオリティが落ちていないということで、気になったカットにいちいちツッコミを入れてみる。
*)2017/08/09追記:やはり続きがあったので、フルバージョンの動画に貼り替えてこの記事も書き足した。
字幕の全日本語試訳はいちばん最後に付けた。以下、各カットの解説はいつもと違って写真の下に書く。
アベル(張凱祺)とsoso(張瓊予)の冒頭のこのカットのフレーミングは、人物の顔をアップにするとき、ふつうはやらない特殊な撮り方。この切り返しカットだけで、これからただならぬ物語が始まることを理解させる秀逸なカット。
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二人の対話の後のこの引きのカットはライティングの勝利。当たり前だが2人の対話の切り返しカットでは、2人の顔にちゃんと照明が当たっているが、この引きのカットはアベルの後ろから光源が一つだけ。つまり切り返しカットとライティングをわざと変えている。
また、劇場の座席に青めの光が当たっているが、これもわざと。舞台上の2人の露出に合わせると、手前の客席が真黒になるため、客席だとかろうじて分かるギリギリのライトを当てている。こういう細かいところがさすが。
このカット、sosoの後ろに完全に隠れていたアベルがいきなり現れるという演出。この後にもう一度登場するが、ここではアベルの演じるキャラクターの「スパイ」としての正体不明な感じがよく現れている。
この、サマー(陽青穎)のカット、奥行きのボケが美しいロケ地を選んでいるので、ただ追いかけっこするだけのカットなのに絵になっている。ただし、このカットでいきなり音源がモノラルになる理由が不明だった。単なるミス?
このカットは、黒いフードをかぶって背中を見せているサマーの後ろを、sosoが彼女に気づかずに左へ走っていく。重要なのは、関連する人物が重なるカットを、いくら短くてもちゃんと挿入しておくこと。
しかもこのカットでsosoが走る速度は、その直前のカットでsosoが画面左へ消えて走るときの速度とぴったり一致している点にも注意。少しでも走る速度が違うと、カットのつなぎに非常に違和感が出てしまう。
これが、カメラから隠れている人物が姿をあらわす二度目のカット。同じく左側から現れるのが、ややクドい気もするが、物語上、サングラスをかけているライオン(曾艾佳)がアベルと同じ諜報員という位置づけなら、わざと二度くり返したのかもしれない。
いったん走り去ったsosoが、サマーとライオンを見つけてこちらへ走ってくるカット。これも何気ないカットだが、フレーミングと人物の構図が完璧。左右の人物がほぼシルエットになっていて、先ほどの真っ直ぐで奥行きをピンぼけで撮影できる道だからこそ取れる構図。
上のカットのまま、カメラの焦点が前景の2人から走ってくるsosoに方へこのように移動している。何でもないように見えて律儀な作り方。この直後、ライオンが突然走り出すと、カットが切り換わるのも、非常に手堅い王道のカット割り。
このカットでsosoがピンクの腕時計を付けているが、引きの絵だけでこの腕時計に気づかせるのはややムリがあったかなぁという、少し残念なカット。後でsosoがアベルからこの腕時計をもらうシーケンスが登場するので、実は時間軸が戻る。
それがこのシーケンス。ここでアベルからsosoがこのピンクの腕時計をもらうのは、先ほどより時間的に先行していることになる。何でもないように見えて、時間軸の前後は意外に複雑。
この意味不明の宇宙人とsosoの対話だが、sosoが宇宙人を蹴る前、宇宙人とsosoの切り返しカットがある。重要なのはこういう対話のシーンはちゃんとカット割りして、切り返しにすること。これを最初から宇宙人とsosoを一つのフレームに入れて横から撮影するようでは全然ダメ。
上の2つのカットは、非常に短いカットのつなぎだが、sosoの持っている受信専用連絡装置が床に落ちた瞬間、その床に落ちる音と銃声が重なり、撃たれた人物の手のひらが地面に落ちるアップにつながっている。
この1秒足らずのカットつなぎが鳥肌モノ。連絡装置が床に落ちて少し跳ね上がり、再び床に落ちる動きと、人物の指先が床に落ちる速度が一致している。かつ、カメラを地べたに置いた画角も一致している。
これも何気ないように見えて、なかなかきっちり作れない絵コンテ。こういう細部が本当に素晴らしい。
このカットも良い。sosoのピンぼけの背中で、背後から撃たれて倒れた人物が最初は隠されている。このあとsosoが左へ体を動かしつつ振り返ると、人物が口から血を流して死んでいることが分かる
これでsosoが背後で死んでいる人物に気づく流れと、観客が人物が死んでいることに気づく流れがぴったり一致する。こういうシーケンスも映画の基本を勉強していないと作れない。
この後、BGMから明るい公演曲が消えて、シリアスな雰囲気に一変する。
そして次の銃声と同時に、こんどは先ほどsosoが持っていたピンク色の腕時計が床に落ちる。腕時計が床に落ちるのと、銃声のタイミングが寸分の違いなくぴったり合っていることに注意。
腕時計の画面に写っている3人の集合写真が誰なのか分からないのが残念。これはわざとなのか単に画素数が足りないのか。しかしこの腕時計なめで、画面奥、2人の足元が走って逃げている画角は秀逸。腕時計に意味をもたせながらも、2人が全速で逃げざるを得ない状況を、同じカットで見せているからだ。
このカットはちょっと残念。銃声と、撃たれて倒れる人間(これ誰だろう?)がズレている。銃声が遅すぎるか、撃たれて倒れるのが早すぎる。
ただしこのシーケンスでいきなり手持ちカメラになるのは素晴らしい。カメラの高さも、ほぼ人間の視線の高さになっている。その直後、2人を追う人物の後ろ姿の影がフレームを横切るので、この手持ちカメラは追っ手の主観ショットではない。それでも手持ちカメラにすることで、追跡劇だということがはっきり分かる。
このあたりカメラがわざとブレて、わざと粗いズームをして、一瞬戻ろうとした奥のsosoと重なるように追っ手の後ろ姿の影がフレームを横切る。すべてのコマ単位のタイミングが完璧。
屋外でsosoが逃げるシーン。いきなり全身を横からとらえるフレーミングになっていない点が重要。足元だけ。
そしてsosoと並走する自動車も足元だけ。注意したいのは、sosoの足元のカットと、自動車のカットをつなげただけで、sosoが自動車に追われているのが分かるということだ。
これを素人が撮ると、追跡劇が分かるように、最初からsosoと自動車を同じフレームに入れて横から撮ってしまう。しかし映画の撮り方を分かっている人は、カメラの高さやフレーミングを合わせたカットをつなげるだけで、全体像を撮らなくても、追いかけっこをしていることを観客に理解させることができる。
さらに注意すべきは、この後もsosoと自動車が同じフレームに入ったカットが出てこないこと。あくまでカットのつなぎだけで、追いかけっこをしていることを理解させている。
この後、ドライバーの、つき(羅寒月)の口元だけのカットも素晴らしい。
ここまでの5カットは、カーチェイスものの定番。それぞれ数コマしかない非常に短いカットを次々つなぐことで、自動車がドリフトするまでを見せている。SNH48の以前の『Beginner』のMVにも、ギアチェンジ、ペダル、ハンドリングを、わずか数コマずつでつなぐシーケンスは登場する。
ここはドリフトするので、最後はサイドブレーキを引く短いカットになっている。
ここも定番。ドリフトのシーンが二度、最初は実時間、二度目はスローモーション。
この、ミラー越しに「乗りな」と首をふる、つき(羅寒月)のカットはカッコよすぎるでしょ。正確には、ドアを開けたとしても、このミラーの中がsosoの立ち位置から見えるはずはないのだが、これは演出として全然あり。
このカットで注意すべきは、フロントガラスに映る道路灯が、ちゃんと後ろに流れ去っていっている点。つまり、道路を本当に走っている。
ただ、牽引車にカメラを載せて2人の乗っている自動車を引っ張っているのか、GoProをボンネットにつけているのかは不明。
個人的にはGoProの広角レンズでこの画角は撮れなので、おそらく牽引しているはず。もしそうだとすると、たったこの長さのカットのためだけに、わざわざ牽引するのという手間のかけ方がすごい。
最後はものすごい落とし方。速度制限があるから、ということで、「坏人(悪者)」の乗っている白のミニバンも、とろとろ追いかけている。悪者の乗ってる車に悪者って書かない、しかもヘタクソな字で(笑)。
で、比較するのはかわいそうだけれど、これと瀋陽SHY48のメンバーサイン入り『人狼』カードPR映像を見比べてみると、映像制作技術の格がまったく違うことが残酷なほどはっきり分かる。
広州GNZ48の映像制作チームがサラッと仕上げているように見える映像を撮っている背景に、どれだけ分厚い映画撮影のテクニックの知識や経験があるか、一般人には分からないけれど、こういうところにクオリティの差がでる。
*)2017/08/09ここからが追記。
残りの部分は意外に地味なつくりだった。
まず残り部分が始まる前のこの字幕の画面。これこそ広州GNZ48映像制作チームの「原点」だ。中国語字幕と英語字幕で言っていることが全然違うというやつ。
中国語字幕「緻密な調査を経て、ついに犯人を発見した……」
英語字幕「再び予算の都合で、どうやって大ボスを見つけたかの部分をスキップします、みなさんの予想どおりに…」
↓こちらの広州GNZ48チームNIII男装公演の予告編映像で、中国語字幕と英語字幕で言っていることが全然違うのを全編じっくり味わえる(笑)。日本語試訳は過去のこのブログを「男装公演PR映像」で検索して下さい。
で、sosoの後ろからCKが現れるという、前景の人物に後ろの完全に隠れている人物が現れるカット。これで3回目だ。この後にさらに4回目が出て来る。
この画像は、単にCK(陳珂)がカッコよかったので貼ってみた。それだけ(笑)。
これが4回目。sosoを正面から仰角気味にとらえるカットで、この状態でふつうはもう一度CKが現れるなど予想できない。
それをワザとやっていると分かったとき、この4回も出てくるカットが何の隠喩かも分かった。これがたぶん『双面偶像』の「双面」の隠喩だ。前景にある人格の後ろに隠れている、別の人格が同じカットの中で顔をあらわす。
これを直接、背中合わせの人物を横からとらえるカットで撮らないところが素晴らしい。
やっぱり広州GNZ48映像制作チームはすごい。だから、予算をあげて下さい(笑)。
*)2017/08/11字幕の日本語試訳
アベル:今年何歳?
soso:18歳
アベル:体育の成績はどう?
soso:悪くないわ
アベル:GNZ48に入って何をするか知ってる?
soso:えっ?ア…アイドルになる
アベル:世界を救うこと。その他に歌やダンス。
アベル:GNZ48は表面上女性アイドルグループだけど、実は秘密特別工作組織。米国の同僚はCIA、英国の事務所はMI6、私は張凱祺。GNZ48に入る前、香港警察特殊任務部隊にいた。もう私たちの仕事の性質が分かったわね。
アベル:その中に特殊工作マニュアルがあるわ。必ずすみずみまで読んで。危急のときにあなたの命を守ってくれるかもしれないから。同時に私たち組織の安全のために。今後、私とあなたの連絡は一方向だけ。分かった?
soso:逃げるな!逃げるな!
ライオン(曾艾佳):あなた。占いしに来たの?
サマー(陽青穎):これってあなた?
ライオン:似てない?こちらのお嬢さんは、おでこがぴかぴかに輝いて大吉の相よ。これは飛び立つように発展する――ような感じ!
soso:リーロン、リーロン。私のユニットと替わってくれない?
リーロン:どうして?
soso:だって私行かなきゃいけないの… 世界を救いに
アベル:じゃあね
soso:わぁ、これって自撮りもできるんだ。
soso:あ゛~公演の途中までしか踊ってないのに、あなたなんでまた世界を破滅させたいの?あ゛~!!!
???:速く!裏切り者よ!
soso:もっと速く。追いつかれるよ。
つき(羅寒月):バカね。市内の速度制限よ。
soso:……は?
中国語字幕「緻密な調査を経て、ついに犯人を発見した……」
英語字幕「再び予算の都合で、どうやって大ボスを見つけたかの部分をスキップします、みなさんの予想どおりに…」
soso:なぜ仲間を殺ったの
CK(陳珂):悪をすべて滅ぼせば、正義もまた存在しない。この世界にはバランスが必要なの。分かった?
soso:簡単には同意できないわ。
CK:じゃあやるしかないわね。
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