SNH48についての興味深い中国2ちゃんねるのスレッド(2)

引き続き中国の検索エンジン「百度」の、2ちゃんねるに似た掲示板サービス「貼吧(てぃえば)」の「AKB48板」で見つけた、興味深いスレッドをご紹介する。

『連載:関于近期対SNH及48系中国化発展的研究報告(最近のSNHおよび48系の中国における発展の研究報告)』 (百度貼吧)

かなり分量が多いので全訳ではなく要約で、かつ複数回に分けてご紹介している。

最初に断っておいたように、このスレッドに書かれてあることが全て真実かどうかは、僕にも判断できない。真実と判断するか、このスレッド自体が壮大なネタと判断するかは、読者の皆さんにお任せする。

2回目の今回は、そもそも運営会社である久尚にAKB48系列のアイドルグループをマネジメントする能力があるのかという議論。

SNH48の運営会社は、上海久尚模特経紀有限公司(「模特」とは中国語で「モデル」、「経紀」は「マネジメント」)というモデル・エージェンシーだが、親会社は久遊網という中国で有数のオンラインゲームの開発・運営会社だ。

久遊網の社長は王子傑という人で、日本国籍の中国人。

王子傑(百度百科)

1990年同志社大学大学院に留学し、ロボット工学と自動制御システムを研究。1993年にコナミに入社。2000年に上海にコナミの海外子会社を設立。

その後中国でオンラインRPG事業を発展させた。2009年には日本でファイブスターという会社を作り、中国産のオンラインRPGを展開しようとしたが、これは失敗している。

久遊網傘下の上海久尚模特経紀も、もとは2008年10月設立の久尚網というファッション情報ポータルサイトで、事業の一環として日本の主婦の友社のファッション雑誌『Mina』『Scawaii!』の中国版の発行、ファッションモデルのマネジメント、NINESTYLEという独自ブランドの展開などをしている。

結成されたばかりのSNH48メンバーが、中国版『Scawaii!』の2012年12月号に早速登場したのは、単に運営会社グループ自身が『Scawaii!』を発行していたからというだけのことだ。

この上海久尚はファッションモデルやイベントコンパニオンのマネジメント経験しかなく、本格的なテレビ・映画タレントのマネジメントは、今回のSNH48が初めてらしい。

そのため、グダグダな運営ぶりが上述のAKB48板のスレッドで非難されている。

まず、なぜ久尚がSNH48の運営会社になったのか。

その経緯は、2007年~2009年、秋元康がAKB48のブレイク前で低迷していたころ、ちょうど王子傑がオンラインゲームで大成功しており、日本で秋元康と面識をもったとき、AKSに資金提供するのと交換に、中国でのAKBブランドの販売権を得たらしい。

2009年にAKB48が日本でブレイクした後、すでに王子傑は上海でAKB48の姉妹グループを結成する意思を示し、「SNH48」というドメイン名も取得済みだった。だが活動開始は2012年の日中友好40周年を待つことになった。

その後、秋元康は丸一年、欧米進出に腐心したが失敗し、2011年にようやく上海久尚によるSNH48の結成準備が始まる。

王子傑はSNH48のデビューを勢いづけるためにも、日中友好40周年のプレイベントの目玉として、AKB48の中国公演を成功させるべく、中国政府関係者に日本でのAKB48の活躍を紹介するなど努力した。

2011年のAKB48の上海公演の陰には、王子傑の尽力があったということだ。

その意味で、グループ総裁である王子傑が、AKB48とその姉妹グループSNH48を中国で成功させようと労力と資金を投じた功績があることは確かだが、このスレッドの筆者は、子会社んお上海久尚の水準がまったく追いついていない点を主に非難している。

例えば、AKB48上海公演の後の中国での握手会。

この握手会を運営していたのは実は上海久尚だったが、アイドルグループの握手会にどれほど多くのファンが殺到するか予測もできず、ダフ屋やネットでチケットが高値転売されることにも無防備だったため混乱をきたした。

AKSは中国ツイッターで謝罪したが、久尚側は謝罪さえしなかった点を、このスレッドの筆者は非難している。

また、2012/10/14のSNH48一期生の発表記者会見でも、久尚は失態を演じている。

久尚の親会社はネット企業で、中国国内の新聞、雑誌、テレビなど大手メディアとの関係が弱かったらしく、SNH48一期生の記者会見に参加したのもほとんどがネットメディアだったらしい。

発表会見の会場にはプロのスタイリストさえおらず、会見の準備に1時間もかかり、その間記者たちは待ちぼうけをくらった。もし大手メディアの記者が参加していたらすぐに退席したに違いないと、スレッドの筆者は嘆いている。

ご承知のようにSNH48公式サイトが開設されて以来、上海久尚は求人広告を出し続けている。求人にはアイドルグループの運営に必要と思われるあらゆる職種がずらりと並んでいる。それだけ久尚に人材が不足しているということだ。

中国ツイッターではSNH48支配人として白叔という人物がツイートしているが、彼についてもスレッドの筆者は日本のAKB劇場支配人とは全く異なり、アイドルグループのマネジメント経験も劇場の管理経験もない人物だと評価している。

久尚はSNH48をまともに運営する体制を整備しないまま見切り発車したことになる。

こうしたマネジメント体制の不備と、不合理な契約条件で、久尚はアイドルグループの運営として自ら火遊びをしているようなものだと、スレッドの筆者は書いている。

SNH48は中国で2つの点でセンシティブな性格をもつ。一つは日本のカラーを持っていること。もう一つは未成年の少女に芸能活動をさせていること。それでもなお不合理な契約でSNH48の運営をするのには、上海久尚の次のような計算があるという。

SNH48がブレイクすれば、トップのメンバーは手元に残し、ほどほどのメンバーは卒業するまま放置し、底辺のメンバーはモデルやコンパニオンとして使える。ブレイクしなければ、全員8年間モデルやコンパニオンとして使える。

しかも契約に給与の条項はなく、毎月2,000元の生活保障金を支払うだけで、タダ同然で使うことができる。このスレッドの筆者は、こうした「濡れ手に粟」式の計算が久尚側にあると見ている。

さらに来春完成予定のSNH劇場は、もともと上海市政府が企画した虹口(上海の地名)ミュージック・バレー計画の中の音楽サロンだった。「ミュージック・バレー」は中国語では「音楽谷」だが、米国シリコン・バレーの「バレー」にならい、音楽の聖地を作る計画である。

もとは映画館だった建物を音楽サロンとして改築し、ポップスのコンサート会場にする計画だったが、政府に箱モノは作れてもコンテンツのアイデアはなかった。

そこで久尚が上海万博のときに、上海万博でのSKE48のコンサートを引き合いに出しつつ、日本で最も人気のあるアイドルグループの姉妹グループと、その拠点である劇場を上海に作る計画を上海市に了承させたらしい。

結果、改築費の4000万元はすべて政府の負担で、久尚は一銭も負担せずにすんでいる。久尚はSNH48の立ち上げに必要な投資の大きな部分を節約できたわけだ。

その代わり、劇場自体は上海市の計画なので、AKB劇場のように観客と舞台の距離が近く、メンバーとファンの交流を重視した造りとは程遠く、会議場のように整然と並ぶ客席になるようだ。

またスレッドの筆者は、AKB48系列のグループにとって、明らかに優等生的なメンバーを含む中学生・高校生的な雰囲気・学園的な雰囲気と、さまざまな個性、この二つが必須だと考えている。

しかしSNH48に優等生的なメンバーは見当たらず、AKB48には存在したような、学業とアイドル活動を現実に両立しているメンバーもいない。

というのは、久尚の契約上、SNH48メンバーで教育を受ける必要がある者は、事実上、久尚がSNH48プロジェクトのために作った「上海電影芸術学院」という専門学校に通うしかないのだ。

(メンバー全員が上海に住んでいるわけではなく、SNH48の毎日の活動はすべて上海で行われるため、地元の中学・高校に通学することは事実上不可能という意味。なおこの「上海電影芸術学院」の学費は何と自己負担らしい。それも契約条件に含まれていたため、かなり裕福な家庭の少女しか最終選考に参加できなかったことが分かる)

結果としてSNH48メンバーは、まず最初の不合理な契約の段階で、似たような生活背景を持つ少女たちに絞りこまれ、さらに同じ学院で勉強し、毎日共同生活を送ることで、それぞれの個性がない集団になってしまうという点を、このスレッドの筆者は危惧している。

事実、JKT48には地元出身者、中国系、日系人、日本語担当、英語担当、お笑い担当など、比較的多彩なメンバーがいたが、SNH48には、日本発のアイドルグループであるにもかかわらず、日本語が流暢なメンバーが一人もいない。上述のように明らかな優等生タイプもいない。

AKB48はメンバーとしての成長の過程で、それぞれが差別化・個性化されていたが、SNH48のメンバーはグループに参加する前の属性を主張することしかできない。例えば俞慧文がアメリカの帰国子女であることなど。

そうしたメンバーの集団であるSNH48は、AKB48系列のグループに必須の本質を欠いているというのが、このスレッドの筆者の論旨で、その原因のほぼすべては、単なるモデル・エージェンシーの上海久尚が、AKB48というグループの本質を理解しないまま運営会社になった点にあるとしている。

スレッドの続きは、また後日。