上海SNH48運営会社開発のアプリ「Pocket48」は中国語で「口袋48」だが、その制作スタッフは「袋王」というあだ名で呼ばれている。一人ではなく数人のチームだ。
握手会などに同行して、オンライン生放送をする仕事もしていて、ちらっとカメラに映る姿から、女性スタッフもいることが分かっている。
現地ファンへの対応もていねいなので、顧客の権利主張が激しい中国で、「顧客対応窓口」としてはかなり成功していると思う。
(一期生、二期生メンバーの応援会の運営会社批判を見ていると、自分たちを経営者と勘違いしているんじゃないかと思うくらいヒドい。日本のAKB48姉妹グループの応援会がどうなのか、筆者は関心がない)
その「袋王」がSNH48のバラエティー番組企画について、ファンからの質問に非常にきめ細かく答えていたらしく、内容が興味深かったのでご紹介。
前提として、去年2016年初めに上海東方メディアグループとの共同制作、中国スマホメーカーMEIZU(魅族)提供で『国民美少女』というファン投票による対戦形式のバラエティー番組があり、賛否両論が激しかった。
その他、過去SNH48運営会社が制作したバラエティーは、メンバーが集団で出演する、『AKBINGO!』そのままの『SNHello』で、ネット放送のみ。
そして、SNH48二期生チームNIIキャプテン・ななし(馮薪朵)が企画し、中国のニコニコ動画的な弾幕コメント動画サイト「AcFun」でレギュラー放送された『週刊少女』で、ネット放送のみ。
この2つは比較的評判が良かったと思われる。
以下「袋王」とファンのQ&A。
ばらばらの画面キャプチャしかなく、時間軸が分からないので、Q&Aの順序は適当に並べた。
内容はひとことで要約できる。「素人が思いつくことくらい運営会社はとっくに考えているし、自分が応援するメンバーしか眼中にないファンの意見は参考にならない」ということ。
「袋王」はそのひとことで済む内容を、ファンを怒らせないように、非常にていねいに回答している。
A.始まりません。今のところ通知はないです。
Q.『窮途末路』の第二シーズンは?
A.同じような番組はあるかもしれません。
姉妹グループはまず自主制作番組から始めて、上海の企画が熟したら、参加するでしょう。
みなさん回答に満足いただけましたでしょうか?なるほどああいうバラエティー番組なら受けるんですね。それなら大きな問題はありません。
Q.南北大戦(広州GNZ48と北京BEJ48の対戦形式バラエティー番組のこと)は可能性ある?
A.(2017年)4月7日にファン感謝祭が、南北大戦と言えるでしょ。
(上海SNH48)チームHIIと(瀋陽SHY48)チームHIIIの大戦!
少なくとも第四回総選挙が終わらないと、姉妹グループ対戦の番組は作れないですよね。
姉妹グループ対戦はとっくに考えてますが、ただ(姉妹グループの)メンバーがまだ成長していないので、しばらく時間が必要です。
去年の『国民美少女』のときの企画と今回の(同番組の)企画はぜんぜん違います。なので私たちの参加は確定していません。
『国民美少女』も、劇場の外での仕事の一つにすぎませんし。私たちとは何の関係もないですよ。ただ出演したというだけで。バラエティー番組すべてがそうじゃありません。
(訳注:その後、SNH48と同じ日本系アイドルグループ「ATF」が参加することに決まった)
Q.メンバーたちが自分で自分たちを盛り上げられるかも。
A.私がずっと言ったかったのは、まず『国民美少女』という番組があって私たちSNH48グループが出演するのか、SNH48が存在するから『国民美少女』という番組が成り立つのか、どちらなのかということです。
みなさんが『国民美少女』第二シーズンに期待している主な理由は、いまのところSNH48noグループ・バラエティー番組がないからですよね。
Q.美容バラエティー番組は国内ではまだ人気がないでしょ
A.でも商業的な価値は大きいです(訳注:化粧品メーカーなどのスポンサーが付くので会社として収益にはなるという意味)
Q.グループ全体のイメージを美容情報番組だけにたよるのはぜったいダメです。それより『夏日甜心』みたいなああいうオンライン生放送スタイルのバラエティー番組の方がいいでしょう。(訳注:『夏日甜心』は日本で言うShowroomのような、女性タレントや素人の女性が出演するオンライン生放送サイトを番組内でシミュレーションするバラエティー番組)
A.それで試してみましたが、成功しませんでした。
Q.でも運営が制作するバラエティー番組って、結局はファンに見せるものじゃないですか。商業化しすぎたらおもしろくないですよ。
A.そう言っておきながら、みなさん自分が応援するメンバーが人気ものになることを想像してるんです。
Q.でも美容情報番組はグループバラエティー番組には合わないでしょ。
A.どうパッケージングするかによりますよ。
Q.『我是大美人』(訳注:ネットの美容情報バラエティー番組)は何炅とか吳昕のような有名司会者でも、視聴者は少ないでしょ。
A.視聴者の定義が違うからです。『詩詞大会』(訳注:中国中央電視台の漢詩をテーマにしたバラエティー番組)も視聴者はとても少ないですが、すごく人気があります。
Q.旅行番組とかはぜんぜんおもしろくない。
A.必要なのは多様性です。SNH48ファンの人に観てもらう他に、一般の観客にも観てもらわないといけません。
スポンサーがつかないバラエティー番組が、成功していないバラエティー番組ということです。
Q.ところでSNH48グループのバラエティーは、どうしていつも1クールしかないの?
A.今後は長期のも制作します。昨日会議があったので、今日みなさんの意見を聞きに(スマホのチャットに)来たんです。
Q.番組ができたらどこで放送するの?「Pocket48」アプリ?それとも某ゲーム実況生放送サイトみたいな場所?
A.プラットフォームはたくさんあるみたいですね。あれば言って下さい。
Q.『国民美少女』はプラットフォームと舞台演出の勝利だね。
A.でも制作費が高すぎます。後半でもしMEIZU(魅族)がスポンサーに入ってこなかったら、難しかったでしょう。
Q.去年の『国民美少女』は成功したバラエティーだったと言えますか?
A.メンバーは最初、みんな嫌がってましたけどね。
小さいけれど成功したと言えるでしょう。私たちが認めた番組形式でしたし。
Q.自分で楽しむよりも、もっとたくさんの人にメンバーたちを好きになってもらいたい。
A.最初に考える必要があるのは、そこでしょうね。
Q.経費のことを考えなきゃいけない
A.経費は大きな問題ではありません。根本的な目的はスターをゲストに呼んで人気があるように見せることじゃなくて、メンバーたち自身が認められることですから。
Q.ファンのみんなから公開でグループバラエティー番組の企画を募集して、うまい企画には奨励金を出すとかは?衆知を集めて有益な意見をひろく集める、的な。
A.企画段階で、もっとたくさんのみなさんの意見を聞いてみて、企画が練られてきたら、ファンのみなさんにいっしょに制作に参加してもらいましょう。
Q.姉妹グループといっしょにやれば、グループのコラボができるのでは?
A.姉妹グループはまだ機が熟してないです。まず上海からです。結局私たちも状況を見ていちばんいい状態へ持って行きたいと思ってますから。
Q.ファンから意見を集めるだけじゃなくて、メンバーにもアイデアを聞いてみたら?メンバーもいいアイデアを持っているかもしれないし。
A.そういうことはみなさんが気にすることはないですよ。
Q.どうせ意見をまとめることができないので、1クールごとに一つのテーマでやってみるのが良いのでは?
A.ええ、長期的にはそうですが、まず第一歩を踏み出さないといけません。
Q.グーグー(郝婉晴)とチャーチャー(張雨鑫)の二人とバラエティー番組の企画について話せば、180回やっても問題なく笑える内容になるよ。
A.彼女たち二人とは話したことがあります。
Q.メンバーの意見をもっと聞いてみては?
A.内容はすべてメンバーの確認をとる必要がありますね。
司会者は、個人的にはメンバーがやるのがいいと思ってます。優秀な司会者というのも、アイドルの成長の方向ですし。
アイドルの歩む道はいろいろありますが、グループでのバラエティー番組は、みんなが楽しめること以外にも、はっきりした発展の方向性が必要です。
Q.グループには数百人いるわけだから、一つのグループバラエティー番組に全員は出られませんよ!だからトップの人気メンバーからベストメンバーを選んで、ときどき後輩を参加させればいいと思う。
A.そうとも限らないですね。メンバーはみんなふだん公演があり、レッスンがあり、学業もあり、劇場の外の仕事もありますから。
Q.トーナメントの対戦形式じゃなくて、『週刊少女』みたいに、リリース周期は固定で、そのつど違うメンバーが出演するのがいいでしょ?
A.えっと、事情はすごく複雑なんです。ほんとうにみなさんが想像するようなかんたんなものだったら、私たちも気が楽なんですけど。
Q.メンバー一人ひとりに平等にチャンスを与えてはダメですか……毎回メンバーを入れ替えれば、メンバーたちも楽しくやれるし、僕らも楽しく見られますよね
A.いろんな都合で出演できないメンバー、という問題が出てきますね。やっぱり長期間出演しないと存在感がなくなりますし。これはみなさんの方がよくわかってると思いますが。
Q.投票形式のバラエティーは少なめにしたほうが。
A.投票は必要でしょうけれど、厳格なルール設計が必要ですね。でないとまた「黒幕がいる」とか「票が操作されている」ということになりますし。
仕組みは合理化、ルール化して、技術的な手段も追いつく必要があります。投票の目的は結果を出して認められる必要があります。対戦があれば勝ち負けがありますから。
Q.本当に、あんたのグループは一年365日ずっと投票投票で、もう投票はやめたらどう。
A.投票形式にしなければ、あれは運営会社が推してるメンバーだとか、黒幕がいるとか言われますし、投票形式にすれば、言い争いばかりになります。根本的な原因はやっぱり仕組みだと思ってます。
みなさんの好みもそれぞれ違いますし、どんなタイプの番組に出演したいかもメンバーによって違います。
もちろんすべてを投票形式にするつもりはありませんが、レベルアップする形式か、勝ち負けが決まる形式か、どちらかは必要でしょう。
Q.思い切ってミリタリーゲーム系の番組とかは?
A.本当にあってもいいです。考えているところです。
Q.バラエティーの規模はどれくらいになります?『週刊少女』(訳注:小規模)の規模か『国民美少女』(訳注:大規模)みたいなのか。
A.どちらより大きいです。毎週放送するという意味です。
Q.商業的価値というのはスポンサーをつけるということ?
A.そうじゃなくて、全体のイメージと訴求力ですね。
SNH48ファン以外の人たちにとっては、どのメンバーが人気があるとか、ファンの人数がどれくらいだとかには無関心で、ただ商業的な価値しか見てませんから。
Q.メンバーはいつになったら他のサイトでオンライン生放送をやるんですか?
A.コントロールできないサイトは許可しません。
コントロールできるサイトならどこでもやります。
Q.オンライン生放送で共同制作をしたらどう?
A.共同制作するだけでなく、私たちの監督条件を満たす必要があります。
そうでないと混乱して、本当に単なるオンライン生放送タレントになってしまいます。
Q.姉妹グループのバラエティー番組はあります?
A.前段階としてまず上海ですね。番組の内容と制作過程を模索する必要があります。その後は必ず全グループでやります。
Q.朗読は?メンバーたちは演技のレッスンもしてますよね。
A.実戦が必要です。いろんなレッスンをしすぎても効果はよくありませんから。
Q.『超級偶像』(訳注:SNH48メンバーが司会も担当したネットバラエティー番組)を考えてみてもいいのでは?
A.『超級偶像』で気まずいのは他の人たちの存在です。わたしたちのメンバーの存在感がなくなってしまうので。
Q.運動会はありでは?
A.ただじっさいやってみると問題が出てきます。社内で評価検討済みです。
たとえば歌で対戦するみたいな番組ですと、かならず専門家を呼ばなきゃいけませんし。
Q.番組の内容についてはふだん自分からパフォーマンスしないメンバーが出るのが良いのでは?どちらかというと大人しいメンバーもアイデアはあるでしょう。
A.大勢の意見はなかなか一致しないので、少しずつ改良、改善していくしかないです。
Q.メンバーに自分で企画させるのはやるべきでしょ。良いのがあるか選んでみればいい。
A.その仕組みは前からずっとやっています。
Q.湖南衛星テレビの『美少女』もあるよね。(訳注:どの番組のことか不明)
A.いまバラエティー番組市場の環境はよくありません。
制作会社はどこも、まず少しだけ制作費を出して制作チームを立ち上げて、数回分だけ収録して、金をだまし取れないと見ればもう制作しない、という感じです。
バラエティー番組を制作するのは、ほんとうに難しいです。だから私たちは自分で制作するんですよ。外部の会社であてになるところは少ないですから。
テレビ局もトップ5以外の局は給料さえ払えない状態ですし。なのでさっき言ったように、みなさんが『週刊少女』や『SNHello』とかで満足してもらえるなら、安心です。
Q.自主制作の方が宛になるし、技術を把握すれば後続番組はさらに良くできるよね。
A.そうです。まだ未熟ですし、やり始めの結果は良くないですが、外部に頼るよりは強みになります。
なのでいろんなことを私たちは自分で模索しています。自分たちで道を切り開かないといけません。
中国国内でこういうアイドルグループとしては私たちが最大ですし、開拓者でもあるので、お手本にしたりマネしたりできませんから。
(訳注:日本の芸能界と中国の芸能界ではまったく環境が違うので、当然、AKB48のバラエティー番組制作ノウハウは中国国内ではまったく使えない)
Q.やっぱり思うのは、あんなたくさんメンバーを募集して入ってくると、会社の発展とファンの増加が追いつかなくて、チャンスが少ないメンバーがたくさん出てくるのでは?
A.育成系なので、たった1年で成長するのは、現実的じゃないですよね。
Q.メンバー募集は社長方針だから、変えられないですよね。
A.どうしてメンバー募集するのか、みなさんが今わからないのは、SNH48ファンになってから時間が短いからでしょう。3年前のファンも今のみなさんと同じような疑問をもっていました。
もし三年前にメンバー募集していなければ、上海SNH48チームNIIはできましたか?
Q.メンバー募集はいいんですが、いまのスピードは速すぎません?
A.じつは今のスピードは以前と同じです。ただ人が多いので、みなさん速く感じるだけです。
Q.それって瀋陽SHY48の状況が見えてないんじゃないですか?公演の集客はかなり悪いようだし。
A.嘉興路(上海SNH48劇場の住所)も以前は街頭でビラ配りしてましたよね。劇場の観客もたった20人でしたよ。
Q.姉妹グループの状況は楽観できないですよ。それも拡大のスピードが速すぎるからでしょう。
A.決してそうじゃないです。みなさんがそう思うのは、みなさんがファンになってからの時間がまだ浅いからです。きっとまだ二年になっていないんじゃないですか?
Q.瀋陽SHY48の苦労を上海SNH48と比べますか。
A.何も苦労せずに成功するなんてことはないです。先輩の威光を借りれば楽勝で大スターになれるでしょうか?そんな理屈は通らないです。姉妹グループはどこも、もう一度小さなことから始めないといけません。
ところで、最後に寝る前にひとこと言いたいんですが、メンバーのファンどうして攻撃したり罵り合うのは本当に必要ないことです。そんなことしても人に利用されるだけですし、メンバーどうしが気まずくなりますし、外の人の笑い話になるだけ。いっしょに努力して、いっしょに成長しましょうよ。