上海SNH48だけ公演MVP投票ルールがますます金、金、金の世界に

上海SNH48公演MVPの投票ルールが変更になり、さらに露骨な金、金、金の世界になった。

公演MVPは公演終了後、観客がチケットの半券を投票することで月間、年間MVPが決まり、そのメンバーに与えられる仕事に反映される。そのためメンバーの応援会がお金を出して観客から半券を買い取ることもあるほどだ。

今回のルール変更は当面上海SNH48だけで、姉妹グループは除外。

下図が変更後のルール。まず票に重み付けがされた。

水曜日、木曜日の公演は、超VIP席3席の観客は1人5票換算、順にVIP席は一人2票、普通席は一人1.5票、立見席は一人1票換算。

金曜日、土曜日、日曜日の公演は、超VIP席のみ1人5票換算、その他は1人1票。

曜日による差は、水曜日、木曜日のチケットの売れ行きが良くないため、換算率を良くすることでチケットの売上を上げようという狙いだろう。

その下に書いてある規則は、半券の投票をQRコードで電子化することで、半券の持ち主だけがその公演にしか投票できないようにするため。ただこの規則は簡単にすり抜けられる。じっさいに観客から半券を買い取る行為は続いているようだ。

興味深いのは、ルールの続き。

公演MVP月間ランキング規則
1、月間ランキングはメンバーの月平均票数による。平均票数は総票数÷当月出演回数。
2、営業の仕事で参加できないメンバーは、その公演は計算しない。
3、当月に映画・ドラマ撮影で参加できないメンバーは、その公演は計算しない。
4、営業の仕事で当月公演の50%以上不参加のメンバーが、ランキング末尾3位の場合、その月は計算しない。
5、デビュー4か月以内のメンバーは、ランキング下位の場合計算に入れない。
6、代役メンバーの月平均票数:当月参加の公演総票数÷本来の所属チームの総公演数。
7、メンバーがハイタッチ会不参加ならその公演の得票数から10票差し引く。
8、メンバーがその公演で途中退場ならその公演の得票数から8票差し引く。当日の公演の途中参加が営業の仕事のためなら計算に入れない。
9、当月のランキングは翌月月初に更新。
10、2018年1月分公演MVP投票数をシステムに入力する際、誕生日記念公演のメンバーの得票数は計算に入れない。
11、公演MVPのスキャン投票は当面上海SNH48だけとする。

各チーム月間ランキングTOP3賞
1、賞金5000元、3000元、2000元。
2、翌月公演のユニット曲のポジション1、2、3番を一曲自由に選べる(元のポジションと同じ場合はそのままとする)

なお公演MVPランキングは公式アプリ「Pocket48」で得票数の正確な数値とともに日次、月次とも公開される。

この公演MVPルール改訂について個人的な感想をいとことで言うと「金、金、金」。

SNH48グループ第四回リクエストアワーの「大組閣」(チーム間のメンバー入れ替え)で発表された、「予備生」制度の新設もそうだが、とにかく現金。

いままでSNH48運営会社は総選挙の投票について、CDを買わずに現金をファンクラブ・ポイントに交換してそのままオンライン投票できるようにするなど、ファンの利便性や運営業務の効率化を進めてきた。

しかし「予備生」制度は、予備性が正規メンバーに復帰するかどうかは総選挙の順位などの得票数、つまりファンからいくら集金できるかの金次第。

公演MVPランキングも、毎回の公演でファンからいくら集金できるかの金次第。月間ランキングTOP3のメンバーへの還元もメインは現金。

そもそもアイドルグループのようなエンタメは、演者の個性やコンテンツの素晴らしさと、観客の気持ちのつながりといった非合理的なもの、理屈で割り切れないものが先にあって、結果としてそれが利益につながる事業のはず。

しかし上海SNH48運営会社のように、メンバーの個性もコンテンツの良し悪しも、すべて金銭で数値化してしまうと、一見透明性が高まって公平な競争が担保されるように見えるが、もはや気持ちのつながりや感動がベースのエンタメではなくなる。

「応援」という行為がまるで金融商品への投資のような消費行動になる。(もちろん投資ではなく単なる消費だが)

最初からハイリスク・ローリターンと分かる消費はしなくなる。つまり低人気のメンバーに大金をつぎ込む非合理的なことはしない。ランク外になるリスクが高く、ランク入りしても上位の人気メンバーの応援会の組織力・資金力に勝てないことは明らかだからだ。

逆に、一定の人気のあるメンバーなら、ランク外になるリスクなく、大金をつぎ込むことでそのランクをさらに上げられる可能性が高い。ローリスクで一定のリターンが期待できる。

アイドルグループの運営会社の経営手腕の見せどころは、観客に感動を与えて「このグループのためなら会社に代わって周囲にPRするし、すすんでお金を使いたい!」と思わせることではないのか。

「予備生」制度の件も、この公演MVPランキングの金銭規準ルールの透明化も、喜びや感動といった非合理的なものに根ざしたエンタメ産業をぶち壊し、自分で自分の首をしめている。