海外の「おいしい」提携先企業を「契約違反」と言ってしまうAKB48運営会社が「ガラパゴス」すぎて残念な件

昨日2016/06/09(木)、AKB48運営会社がSNH48運営会社に契約違反があると正式に発表したことに対して、SNH48運営会社が公式サイトで声明を出していた。

念のため日本語試訳しておく。


6月9日、日本のAKB48運営会社が公式サイトで一方的にSNH48およびその姉妹グループに関する内容を発表しましたが、SNH48運営会社は正式に以下のように回答いたします:

SNH48は完全に独立し、中国現地化した大型女性アイドルグループを自主的に経営し、インターネットのコンセプトにもとづいてスターを育成するプラットフォームです。運営は日本のAKB48と国を跨いだ姉妹グループとしての技術的な協力関係のなかで、いわゆる違約行為は存在せず、私たちの日常のすべての運営行為は今までどおりです。

2016年4月20日、SNH48運営会社は正式な姉妹グループBEJ48、GNZ48の成立を発表し、同時に音楽コンテンツのオリジナル化戦略を発表しました。これはSNH48がすでに全面的にオリジナル路線を歩んでいることを示しており、SNH48が発表する一連のオリジナルEPおよびオリジナル劇場公演はすべてきわめて良好な評価と反響を得ています。SNH48は基礎となる音楽面の長期的な発展を確立し基礎を固めるために、将来も音楽のオリジナル路線を引き続き歩んでいきます。


ここからはふたたび筆者の個人的な意見だけれど、やはりSNH48運営会社は、アイドルグループの運営というビジネスモデルについて契約違反は行っていないと見るのが妥当だろう。

AKB48運営会社は、SNH48が独自に姉妹グループを結成することを想定すらしない内容で契約を結んでいたに違いない。

したがってSNH48運営会社は、契約上はっきり禁止されていない営業行為、つまり、ふつうの企業でいえば地方の営業所を設立した。それだけのことだ。

それを「契約違反だ」と言われるのは、AKB48運営会社には申し訳ないけれど、ふつうの会社員として言わせていただければ、AKB48運営会社の言い分のほうがムリがある。

なぜなら、当初の契約でAKB48運営会社は中国国内のAKB48楽曲について、SNH48運営会社に排他的な権利を与えていたはずなので、当然、中国国内でのAKB48楽曲の売上の一部は、AKB48運営会社の収入になっているはずだ。

ふつうの経営者の感覚で言えば、SNH48運営会社が中国国内に、契約ではっきり禁止されていない地方営業所を開設し、さらにAKB48楽曲を販売拡大すれば、AKB48運営会社にとっても収益の拡大になる。

AKB48運営会社がふつうの営利企業であれば、中国の協力会社が自分たちの商品(コンテンツ)を中国国内でどんどん販売拡大してくれるのは、逆にうれしいことだ。

そのことが分かるのは、SNH48運営会社の声明の後半部分だ。

後半部分には、SNH48運営会社が独自に制作したコンテンツについては、SNH48運営会社が全面的に権利を有するという、ある意味当たり前のことが書いてある。

そしてそこから得られる売上を基礎にして、今後も企業として成長していきますという、これまた民間企業としては当たり前のことを表明している。

つまり、AKB48楽曲の権利はAKB48運営会社にあり、SNH48オリジナル楽曲の権利はSNH48運営会社にある。

AKB48楽曲を利用すれば、ちゃんとAKB48運営会社に使用料は支払いますし、オリジナル楽曲の収益は、契約に書かれていない以上は、すべて自らの収益とします。

仮に、契約に書かれていないのに、SNH48運営会社が自らのオリジナル楽曲の収益の一部まで、AKB48運営会社にキックバックしたとすればどうなるか。

中国国内の税務当局から見ると、意図的に売上の一部を海外協力会社に付け替えることで、中国国内における利益を少なく見せ、脱税行為をしていることになり、それこそ中国国内の商法上は、違法行為になってしまう。

以上のことから、やはり今回の件、AKB48運営会社は日本の芸能界の「ガラパゴス」性を露呈してしまっていると言わざるをえないだろう。

AKB48運営会社は芸能事務所とはいえ、一つの営利企業である。

したがって、株式会社として国を跨いだ提携を行う以上、資本による支配関係と、それぞれの国でのステークホルダー(株主、税務当局、顧客、従業員など)との関係を考慮する必要があるのは当然である。

もしあなたが日本で会社を経営していて、上海にある中国企業と提携したとする。そしたら自分の商品を中国国内でバンバン売ってくれて、あまりに売れるので、北京と広州に支店を拡大して、さらにバンバン売ってくれるという。

ただしその中国企業側で独自に開発した商品については、「独自商品です」と明記したうえで販売するという。

あなたがそういう立場の、ふつうの経営者だとしたらどうだろう。

こちらから資金を提供しなくても、経営拡大の資金は独自開発商品の売上で、自力で稼いでくれるというのだ。これほど「おいしい」ビジネスパートナーはないのではないか?

うん。日本の芸能事務所の「ガラパゴス」な「義理と人情」体質が、日本人である僕にとってもますます理解できなくなってきた。

*) 当ブログの参考記事
「SNH48運営会社の株式保有構成図」 (2016/02/20 SNH48分室)
「アリババグループ、テンセント出資の華人文化ホールディングスがSNH48運営会社に相当規模の出資か」 (2016/04/14 SNH48分室)